🍎テキサス★潤ライフ🍒




6月19日、Juneteenth。これは単なる黒人奴隷解放を祝うお祭りではなかった。そこは様々な神々が集う出雲大社のようであった。






前回に記した Juneteenth Freedom Walk 参加報告です。今回は是非ともこのお祭りに参加しようと決めていました。




集会と 2.6 マイル のフリーダムウォークと銘打ったマーチが開催されるのはダウンタウン近くの Fair Park 。歴史的にも古いスタジアム『 Cotton Bowl 』のある公園で毎年秋口に『 Texas State Fair 』が行われるので有名である。




車の渋滞を避けるため事前からテレビコマーシャルやニュース報道で電車の利用を促していたので、自宅から車で最寄りの駅に行き広々とした無料駐車場に止めて先ずは TRE ( Trinity River Express ) に乗りダウンタウン近くの Victor Station まで行く。




Victor Station からは DART ( Dallas Area Rapid Transit) の グリーンラインに乗り換えダウンタウンを通り過ぎると目的の駅 Fair Park Station に到着する。ダウンタウン辺りではちょっと敬遠しそうなややこしい風景にも出くわすが、さほど汚いという程ではない。車窓から反対の駅のプラットホーム上でハンドガンをちらつかせる若い女性が黒人と喋っている姿が見えたが、まあこんなこともあるかとやり過ごした。ちなみに各車両では常に警察官とコンダクターが見回っているようだ。






広い公園に到着すると登録など当然現場でするものと思っていた私は、数人の同様な時代遅れな参加者と一所に集められオンラインによる登録を求められた。現代では事前登録と参加費用の支払い等はオンラインで済ませておくものなのだそうだ。




ウォークの開始時刻が 9:00 で、ギリギリに到着した我々はそうでなくてもオンラインと聞くとアレルギー症状が表れるのに、さらには迫ってくる開始時刻が大いに慌てさせてしまった。不器用な老人が一所に顔寄せあって指図を受けている姿は非常に哀れである。あまりのもたつき加減にも関わらず若いボランティアの青年淑女は丁寧に言葉優しく接してくれた。もうこれだけでも神である。






そして、最終的にどうやら 9:00 の締め切り時刻が過ぎるとオンラインの登録は打ち切られるようになっているらしく、しかしながら現場にやってくるであろうもたつき老人をちゃんと想定していたのか、スクリーンには何の支払いも登録もしていないのに何故か 『 Your registration is completed. 』(登録済み)の文字が。




登録を手助けしてくれていた優しい青年が突然変貌し、その哀れなもたつき老人の群れに顔を突っ込んできてウインクしながら素早く告げる。


『 Well, According to the screen, you're already registered. Please tell your size of your T shirt and pick up one.』(もう登録済みだそうだから、Tシャツのサイズを告げて貰ってください。)






このアメリカの杜撰さはいいものだろうかと訝しげに思うが、こちらに有利に働いてくれる杜撰さはそれが杜撰に見えず、なんと素晴らしい融通の聞く青年だと神々しく輝きだしてくるからこちらもいい加減なものである。爽快な笑顔を浮かべ軽く小走りしては転びそうになるもたつき老人の群れに背後から、先程の青年の姿をした神が大声で告げる。




『 Please wait for these people, They're  just coming to get on the cart right now. 』(今、数人が乗り込みますからちょっとそのカート、待ってあげてください。)




そしてステージ近くまでカートで送って貰うと既に楽しい演奏が始まっており、さらには至るところで個人個人で持ち込んだ楽器が演奏され(多くはドラムの鼓動がメイン)や携帯スピーカーを携えた人たちからソウルやファンクといったリズミカルな音楽が集まる人々の空間を満たしていた。






そろりと歩きだしていくフリーダムウォークはその言葉の持つ勇ましい響きとは裏腹に、楽しい音楽を奏でる音の神様たち、愉快なダンスで小刻みな笑いを振り撒くダンスの神様たちが舞い降りてきた。冗談や笑いと共に情熱的で向上心に溢れ慈愛に満ちた言葉は、そこに集う人々に生命力と積極的エネルギーを天空から惜しみ無く降り注ぎ続けていた。






あっという間に 2.6マイルなど感じる間も無く終了した。最後に再びスタート地点のステージエリアに戻って来ると、先頭を歩いていた Dr. Opal Lee がマイクを握りその元気な姿を現してくれた。97歳とは思えぬその矍鑠とした姿に感動を覚えたのは私だけではなかった。それが理由に、その神格化された姿が壇上に現れると群衆が一斉に拳を天に突き上げる。片手に握られたカメラを振りかざす人々の手は終結した神々のエネルギーを捉えようと必死に、そして無数のドローンが空間に飛び交いブーンとハーモニー音を上げるとその単調な低く唸り続ける響きは何とも宗教的な高揚感を高めていった。






そして、神々の魂を一手に集めステージへと集約されると、南北戦争の終結宣言と同時に奴隷解放宣言がなされたテキサスの歴史的お祭りの喜び、あらゆる不当な差別に対する公民権運動の大切さ、そしてそれを肩肘張らず暴力的にならずに続けていくことの必要性を、大神であられる97歳の彼女は大声で叫び続けていたのであった。






『 If you can talk to hate each other, you can talk to love each other. 』


(あなた方がお互いを罵倒出来るのであれば、あなた方はお互いに愛を語り続ける事も出来る筈だ。)