渇望(新一✕快斗)R18
※イメージはシンガポールでの事件後アレンジです。
描写少ないですが一応R18にて
──────────────────
「どうして私を庇ったのです、名探偵」
怪盗は不機嫌そうな声で呟いた。
深夜。ベイエリア一帯を大混乱に陥れた未曾有の騒動から数時間が経つ。
オレは地元警察が手配してくれたホテルに移り、ようやく落ち着いたところだった。
ベッドに入り、照明を落としてふと見ると──仄白い人影が部屋の中央に浮かび上がって──落ちかけていた意識は一気に覚めた。
「どうしてって、咄嗟にさ。論理的な思考なんかない」
「余計なことを…。お怪我は」
「打撲程度だ。大した事は無い。おまえの方が重症だろ」
長いマントが揺れる。
瞬きする間にキッドは目の前に立っていた。
何かが弾ける。
渇望はとうに限界に達していたのだ。
いつからだろう。惹かれ合っていることに気が付いたのは。
今回のような際どい死地を共にくぐり抜けるような経験を何度か重ねてきた。
だが、それは必要に迫られた “いっときの停戦状態” に過ぎないはずだった。
なのに、いま、どうしようもなくお互いを必要とし合っていた。
二つに分かれていた魂が、一つに戻りたがっているかのように。
一つになりたい。もっと。完全に結び付きたい。
耳を打つ怪盗の吐息に意識が飛びそうになる。
『ツッ…!』
細い腕を掴むと、怪盗が苦痛の声を上げた。
撃たれた傷に触れてしまったようだ。
ぐいと体ごと押さえながら反動をつけ、奥を穿つ。強く。深く。
衝つごとに跳ねる肌を抱え、噛み付くように口付けた。
軋むような互いの息遣いが満ち、脈打つ鼓動が重なり合う。
共鳴し、大きく膨らんで、目眩を起こす。
この想いを───なんていうのかわからない。
ただ…ただ、切ない。
切なくて、堪らない───……。
(…………)
「次に何かあっても助けは無用です」
怪盗の声に目を開けた。
さっきまでより薄明るい。夜明けが近いのか。
少しの間、眠っていたようだ。
「言ったろ…勝手に体が動いただけだって」
シーツを体に巻いて起き上がった。
すでに怪盗は元の佇まいに戻り、 現れたときと同じように仄白い姿で少し離れたところに立っていた。
乱れた気配は微塵も残っていない。
「私などを庇って名探偵にもしものことがあったら……」
「心配するな」
「あなたはご自分を過信し過ぎです」
「探偵なんて自分を過信してなきゃできないさ」
「工藤」
唐突に名を呼ばれ、はっと見つめ合った。
夜明けの朧な光の中で、モノクルの飾り紐が揺れる。
「───無事に帰れよ。ありがとう」
「待て、キッド!」
閃光。
闇に慣れた目は、とても開けてはいられない。
「キッド───!!」
静まりかえる部屋。
気配は消えた。微かな怪盗の声音の余韻だけを残して。
固く瞑っていた瞼をようやく開けると、閃光に射られた両目から涙がポロポロ零れた。
掌に残る秘事の記憶を握りしめる。
去り際のキッドの言葉は、素の声、素の言葉だった。
孤独と傷みをモノクルに隠して、なぜ危険を冒すのか。
おまえを孤独から救えるのは自分以外にない。
自信過剰だと、またおまえは言うだろう。
そうとも。おまえを独りにはもうしない。
おまえの正体を暴いて捕まえる。
おまえを二度と、逃さない。
20230209
──────────────────
※例によって設定が曖昧なうえに、毎度の展開になってしまいました(*_*; 好みなのでご勘弁を…。それにしてもキッド様不足が深刻です!
ちなみに先日TVアニメでキッド様が出た〜!と思ったらベルモットでした。原作読んで知ってたのに、あらためてガッカリするという…いやベルモットさんはわるくないです、スミマセン(*_*;
そういえば年明けからご挨拶もしていないままでした…。
あまり大声では言えないですが、こっそりと今年も宜しくお願い致します。
●拍手御礼
「月光という名の真実」「クリスマス・キャロル」他、ありがとうございました!
※イメージはシンガポールでの事件後アレンジです。
描写少ないですが一応R18にて
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「どうして私を庇ったのです、名探偵」
怪盗は不機嫌そうな声で呟いた。
深夜。ベイエリア一帯を大混乱に陥れた未曾有の騒動から数時間が経つ。
オレは地元警察が手配してくれたホテルに移り、ようやく落ち着いたところだった。
ベッドに入り、照明を落としてふと見ると──仄白い人影が部屋の中央に浮かび上がって──落ちかけていた意識は一気に覚めた。
「どうしてって、咄嗟にさ。論理的な思考なんかない」
「余計なことを…。お怪我は」
「打撲程度だ。大した事は無い。おまえの方が重症だろ」
長いマントが揺れる。
瞬きする間にキッドは目の前に立っていた。
何かが弾ける。
渇望はとうに限界に達していたのだ。
いつからだろう。惹かれ合っていることに気が付いたのは。
今回のような際どい死地を共にくぐり抜けるような経験を何度か重ねてきた。
だが、それは必要に迫られた “いっときの停戦状態” に過ぎないはずだった。
なのに、いま、どうしようもなくお互いを必要とし合っていた。
二つに分かれていた魂が、一つに戻りたがっているかのように。
一つになりたい。もっと。完全に結び付きたい。
耳を打つ怪盗の吐息に意識が飛びそうになる。
『ツッ…!』
細い腕を掴むと、怪盗が苦痛の声を上げた。
撃たれた傷に触れてしまったようだ。
ぐいと体ごと押さえながら反動をつけ、奥を穿つ。強く。深く。
衝つごとに跳ねる肌を抱え、噛み付くように口付けた。
軋むような互いの息遣いが満ち、脈打つ鼓動が重なり合う。
共鳴し、大きく膨らんで、目眩を起こす。
この想いを───なんていうのかわからない。
ただ…ただ、切ない。
切なくて、堪らない───……。
(…………)
「次に何かあっても助けは無用です」
怪盗の声に目を開けた。
さっきまでより薄明るい。夜明けが近いのか。
少しの間、眠っていたようだ。
「言ったろ…勝手に体が動いただけだって」
シーツを体に巻いて起き上がった。
すでに怪盗は元の佇まいに戻り、 現れたときと同じように仄白い姿で少し離れたところに立っていた。
乱れた気配は微塵も残っていない。
「私などを庇って名探偵にもしものことがあったら……」
「心配するな」
「あなたはご自分を過信し過ぎです」
「探偵なんて自分を過信してなきゃできないさ」
「工藤」
唐突に名を呼ばれ、はっと見つめ合った。
夜明けの朧な光の中で、モノクルの飾り紐が揺れる。
「───無事に帰れよ。ありがとう」
「待て、キッド!」
閃光。
闇に慣れた目は、とても開けてはいられない。
「キッド───!!」
静まりかえる部屋。
気配は消えた。微かな怪盗の声音の余韻だけを残して。
固く瞑っていた瞼をようやく開けると、閃光に射られた両目から涙がポロポロ零れた。
掌に残る秘事の記憶を握りしめる。
去り際のキッドの言葉は、素の声、素の言葉だった。
孤独と傷みをモノクルに隠して、なぜ危険を冒すのか。
おまえを孤独から救えるのは自分以外にない。
自信過剰だと、またおまえは言うだろう。
そうとも。おまえを独りにはもうしない。
おまえの正体を暴いて捕まえる。
おまえを二度と、逃さない。
20230209
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※例によって設定が曖昧なうえに、毎度の展開になってしまいました(*_*; 好みなのでご勘弁を…。それにしてもキッド様不足が深刻です!
ちなみに先日TVアニメでキッド様が出た〜!と思ったらベルモットでした。原作読んで知ってたのに、あらためてガッカリするという…いやベルモットさんはわるくないです、スミマセン(*_*;
そういえば年明けからご挨拶もしていないままでした…。
あまり大声では言えないですが、こっそりと今年も宜しくお願い致します。
●拍手御礼
「月光という名の真実」「クリスマス・キャロル」他、ありがとうございました!