放課後2《1/2》(白快)
カテゴリ★放課後(白快)
新快前提ではない〝白快カテゴリ〟2012.1月末up『放課後』&『風の音』の続編です。昨日どなたか拍手ありがとうございましたー(^^;)。
――――――――――――――――――
気が付くと、保健室だった。
僕は……どうしたのだろう。
おぼろに思い出す。
風邪をひいて高熱が出たのだ。しかし学校を休みたくなくて、家の者が止めるのをきかず無理に登校した。
――あげくに、この様か。
自分の額に手を当て、ため息を付いた。熱い。体全体が熱く、ぼうっとした。
カーテン越しに外の様子を伺うと西陽が射し込んでいるのが分かった。微かに天井がオレンジ色に照らされている。
シャ、とカーテンが引かれた。見ると、覗き込んでいるのは……驚いたことに黒羽だった。
目が合い、ビクリとしたのは僕の方で、黒羽は平然としていた。ポーカーフェイスのまま。
「大丈夫かよ…白馬。熱、高いみてーだな」
「…まさか、この場所へ君が様子を見に来てくれるとは思いませんでしたよ…黒羽くん」
カーテンから半身を覗かせたままで黒羽がつぶやく。
「しゃーねーだろ。このまえ俺が調子悪かった時、てめーに世話になったのみんな知ってるし…今度は俺の番みたいな感じでさ」
「それは……申し訳ない」
――申し訳ないも何もないのだが。
僕はその時、黒羽が動けないのにつけ込み、有無をいわさず抱いたのだ。保健室のこのベッドで。いま目の前にいる黒羽を、この腕で……。
互いに黙り込み、なんとも言えない沈黙が流れる。もういいから帰って下さい、と途中まで言いかけたのだが、僕は咳き込んでベッドに突っ伏した。
苦しい。咳が止まらない。喉が渇いた。
ふと見ると、黒羽が姿を消していた。
僕に付き添う義理は彼にない。ちらとでも様子を見に来てくれただけで――僕は十分嬉しかった。それが自発的なものであろうとなかろうと。
先生はまだいるのだろうか。食欲がなく昼を抜いて席でうとうとしていたまでは覚えている。しかしその後どうなって、なぜ自分が今ここにいるのかまるで記憶がない。
腕時計が外されていて時間がわからず、途方にくれた。上着は壁に吊されている。カバンもその辺にあるのだろうか……。カバンには携帯も入っているのだが、どうにも起き上がる気力がない。時間が許す限りここから動きたくない。というより、情けないが動けそうになかった。
目を閉じて息を整える……。頭は重く、喉が痛んだ。
誰かが部屋に入ってきた気配。
僕はカーテンがひかれる音に目を開け、そっちを見た。
「水、持ってきたぜ」
「……」
驚いたことに、再び顔を出したのはやはり黒羽だった。
カーテンから半分だけ体を出し、手にしたペットボトルを僕の方へ差し出す。
「ありがとう…」
少し上体を起こして受け取り、水を飲んだ。むせてまた咳こんだが、喉を水分が通過し、ホッとする。
「それ、中身は水道水だから」
「……このペットボトルは?」
「俺が昼に飲んだヤツだけど…。ちゃんと洗ってあるよ」
僕はつい、フフ、と笑った。
そんなこと断らなくてもよいのに。黒羽の正直さと、その奥にある僕への警戒心が垣間見えて、なんだかかわいく感じてしまったのだ。
なんでもない顔をしてはいるが、黒羽はやはりこの場所で僕と二人になることに抵抗があるのだ。当然だが。さっきから半分だけ体を覗かせ、カーテンの中に入ってこようとはしない。
それでも…黒羽が僕を意識していることが判っただけで、僕は嬉しかった。
黒羽は――僕が抱いた翌日にはもう普段の彼に戻っており、確かに手に入れたはずの黒羽の秘めた表情は幻だったかのようにすら――思えていたのだ。
「動けそうにないみたいだな」
「もう帰って下さい。君に迷惑はかけられない」
強がりを言った。
本当は……黒羽と二人でいられるなら、一晩中でもこうしていたいくらいだった。
また咳き込み始める。
なかなか止まらず、呼吸困難のようになって喘いだ。
「しっかりしろよ」
気付いたら、黒羽が背をさすってくれていた。
『放課後《2/2》』へつづく
カテゴリ★放課後(白快)
新快前提ではない〝白快カテゴリ〟2012.1月末up『放課後』&『風の音』の続編です。昨日どなたか拍手ありがとうございましたー(^^;)。
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気が付くと、保健室だった。
僕は……どうしたのだろう。
おぼろに思い出す。
風邪をひいて高熱が出たのだ。しかし学校を休みたくなくて、家の者が止めるのをきかず無理に登校した。
――あげくに、この様か。
自分の額に手を当て、ため息を付いた。熱い。体全体が熱く、ぼうっとした。
カーテン越しに外の様子を伺うと西陽が射し込んでいるのが分かった。微かに天井がオレンジ色に照らされている。
シャ、とカーテンが引かれた。見ると、覗き込んでいるのは……驚いたことに黒羽だった。
目が合い、ビクリとしたのは僕の方で、黒羽は平然としていた。ポーカーフェイスのまま。
「大丈夫かよ…白馬。熱、高いみてーだな」
「…まさか、この場所へ君が様子を見に来てくれるとは思いませんでしたよ…黒羽くん」
カーテンから半身を覗かせたままで黒羽がつぶやく。
「しゃーねーだろ。このまえ俺が調子悪かった時、てめーに世話になったのみんな知ってるし…今度は俺の番みたいな感じでさ」
「それは……申し訳ない」
――申し訳ないも何もないのだが。
僕はその時、黒羽が動けないのにつけ込み、有無をいわさず抱いたのだ。保健室のこのベッドで。いま目の前にいる黒羽を、この腕で……。
互いに黙り込み、なんとも言えない沈黙が流れる。もういいから帰って下さい、と途中まで言いかけたのだが、僕は咳き込んでベッドに突っ伏した。
苦しい。咳が止まらない。喉が渇いた。
ふと見ると、黒羽が姿を消していた。
僕に付き添う義理は彼にない。ちらとでも様子を見に来てくれただけで――僕は十分嬉しかった。それが自発的なものであろうとなかろうと。
先生はまだいるのだろうか。食欲がなく昼を抜いて席でうとうとしていたまでは覚えている。しかしその後どうなって、なぜ自分が今ここにいるのかまるで記憶がない。
腕時計が外されていて時間がわからず、途方にくれた。上着は壁に吊されている。カバンもその辺にあるのだろうか……。カバンには携帯も入っているのだが、どうにも起き上がる気力がない。時間が許す限りここから動きたくない。というより、情けないが動けそうになかった。
目を閉じて息を整える……。頭は重く、喉が痛んだ。
誰かが部屋に入ってきた気配。
僕はカーテンがひかれる音に目を開け、そっちを見た。
「水、持ってきたぜ」
「……」
驚いたことに、再び顔を出したのはやはり黒羽だった。
カーテンから半分だけ体を出し、手にしたペットボトルを僕の方へ差し出す。
「ありがとう…」
少し上体を起こして受け取り、水を飲んだ。むせてまた咳こんだが、喉を水分が通過し、ホッとする。
「それ、中身は水道水だから」
「……このペットボトルは?」
「俺が昼に飲んだヤツだけど…。ちゃんと洗ってあるよ」
僕はつい、フフ、と笑った。
そんなこと断らなくてもよいのに。黒羽の正直さと、その奥にある僕への警戒心が垣間見えて、なんだかかわいく感じてしまったのだ。
なんでもない顔をしてはいるが、黒羽はやはりこの場所で僕と二人になることに抵抗があるのだ。当然だが。さっきから半分だけ体を覗かせ、カーテンの中に入ってこようとはしない。
それでも…黒羽が僕を意識していることが判っただけで、僕は嬉しかった。
黒羽は――僕が抱いた翌日にはもう普段の彼に戻っており、確かに手に入れたはずの黒羽の秘めた表情は幻だったかのようにすら――思えていたのだ。
「動けそうにないみたいだな」
「もう帰って下さい。君に迷惑はかけられない」
強がりを言った。
本当は……黒羽と二人でいられるなら、一晩中でもこうしていたいくらいだった。
また咳き込み始める。
なかなか止まらず、呼吸困難のようになって喘いだ。
「しっかりしろよ」
気付いたら、黒羽が背をさすってくれていた。
『放課後《2/2》』へつづく