クロスステップ《1/3》(新一×快斗)
※1月7日アップ『インターセプト』へつづく、その前の内容、工藤が黒羽を見つけた時のお話です。快斗視点でスタート。
――――――――――――――――――
幼なじみと遊びに出掛けた帰りの夜道だった。
自宅のすぐ近くまで戻ったところで、君、と誰かに呼び止められ、俺は振り向いた。
見ると、俺と同じくらいの年格好の男が俺の方を向いて立っていた。
「なんですか……?」
「黒羽快斗くんだね」
「キミは?」
「工藤新一。探偵さ」
俺は驚いた。
目の前に立つ、こいつが工藤――?
どこか懐かしい眼差しで俺を見つめる〝工藤新一〟の出現に、俺は正体を突き止められた畏れよりも〝待っていたものが訪れた〟という感覚を覚えて一瞬立ち尽くした。
そう、俺は…きっと待っていた。この〝邂逅〟が訪れることを。
〝小さな名探偵〟が姿を消してからしばらく経つ。工藤が元の姿を取り戻したらしいと知って―――この日がやがて来るのを俺は覚悟し、そして期待していた。
名探偵の行動に制限がなくなれば、俺の正体にたどり着くのは名探偵にとって時間の問題だったに違いない。
これまでに俺が落とした僅かなヒントの欠片を拾い集め、過去を探り〝怪盗キッド〟の過去を調べ上げ、有名なマジシャンだった親父が初代キッドだったと解いてしまば、そこがら俺を見つけ出すことはさほど難しくはなかっただろう。
俺は工藤を自宅へ招き入れた。
我ながらどうしてこんな事をするのか不思議だったが、工藤の方もまるで以前から友人だったかのように違和感なく俺についてきた。
――以前から互いを知っていた事に変わりはないか。
工藤は〝小さな名探偵〟として。
俺は〝二代目・怪盗キッド〟として。何度も関わり合い、競い合ってきた。
胸の奥では互いに惹かれる絆に気付いていながら……その事に目を瞑り、ライバルを演じてきたのだ。
その相手が、素顔に戻った工藤が、素顔の俺についに会いに来たのだ。
俺の部屋の中を興味深そうに眺め回す工藤の瞳は〝小さな名探偵〟だった時と変わりなく輝いて、謎を解く歓びに溢れていた。
ふーんとかへえーとか呟きながら、黒羽快斗の個人的な嗜好や情報を脳に取り入れ、欠けていたピースを当てはめるように頭の中で俺という人間を紐解いて批評しているのかもしれない。
俺は自分の勉強机のイスの背の方を前にして、背もたれに頬杖をついて座りながらそんな工藤を俺なりに観察していた。
ここまで互いにほとんど言葉も交わしてなかったが、俺はそんな工藤に問いかけてみた。
「どうってことない部屋だと思うけど、そんな面白いか?」
「ああ。宝物見つけたみたいに楽しいね」
「探偵ってわかんねぇな。事件の謎解きじゃないんだから、知りたい事があんなら相手に直接訊けばいいのに」
「おまえに?」
「黒羽って呼べよ。もう正体バレちまったし」
ちょっと肩を竦めた。このあとどうなるんだろう。警察が追う怪盗の正体を知ったからには、探偵はやはり俺を罪人として警察に突き出すのだろうか。
それにしてはお互い緊張感がない。ただ友達を家に遊びにつれて来たみたいな感じだ。
「このままだと捕まるから、逃げようかなぁ」となんとなく呟くと、工藤はバーロォ、と言って俺に向き直った。
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クロスステップ《2/3》へつづく
※1月7日アップ『インターセプト』へつづく、その前の内容、工藤が黒羽を見つけた時のお話です。快斗視点でスタート。
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幼なじみと遊びに出掛けた帰りの夜道だった。
自宅のすぐ近くまで戻ったところで、君、と誰かに呼び止められ、俺は振り向いた。
見ると、俺と同じくらいの年格好の男が俺の方を向いて立っていた。
「なんですか……?」
「黒羽快斗くんだね」
「キミは?」
「工藤新一。探偵さ」
俺は驚いた。
目の前に立つ、こいつが工藤――?
どこか懐かしい眼差しで俺を見つめる〝工藤新一〟の出現に、俺は正体を突き止められた畏れよりも〝待っていたものが訪れた〟という感覚を覚えて一瞬立ち尽くした。
そう、俺は…きっと待っていた。この〝邂逅〟が訪れることを。
〝小さな名探偵〟が姿を消してからしばらく経つ。工藤が元の姿を取り戻したらしいと知って―――この日がやがて来るのを俺は覚悟し、そして期待していた。
名探偵の行動に制限がなくなれば、俺の正体にたどり着くのは名探偵にとって時間の問題だったに違いない。
これまでに俺が落とした僅かなヒントの欠片を拾い集め、過去を探り〝怪盗キッド〟の過去を調べ上げ、有名なマジシャンだった親父が初代キッドだったと解いてしまば、そこがら俺を見つけ出すことはさほど難しくはなかっただろう。
俺は工藤を自宅へ招き入れた。
我ながらどうしてこんな事をするのか不思議だったが、工藤の方もまるで以前から友人だったかのように違和感なく俺についてきた。
――以前から互いを知っていた事に変わりはないか。
工藤は〝小さな名探偵〟として。
俺は〝二代目・怪盗キッド〟として。何度も関わり合い、競い合ってきた。
胸の奥では互いに惹かれる絆に気付いていながら……その事に目を瞑り、ライバルを演じてきたのだ。
その相手が、素顔に戻った工藤が、素顔の俺についに会いに来たのだ。
俺の部屋の中を興味深そうに眺め回す工藤の瞳は〝小さな名探偵〟だった時と変わりなく輝いて、謎を解く歓びに溢れていた。
ふーんとかへえーとか呟きながら、黒羽快斗の個人的な嗜好や情報を脳に取り入れ、欠けていたピースを当てはめるように頭の中で俺という人間を紐解いて批評しているのかもしれない。
俺は自分の勉強机のイスの背の方を前にして、背もたれに頬杖をついて座りながらそんな工藤を俺なりに観察していた。
ここまで互いにほとんど言葉も交わしてなかったが、俺はそんな工藤に問いかけてみた。
「どうってことない部屋だと思うけど、そんな面白いか?」
「ああ。宝物見つけたみたいに楽しいね」
「探偵ってわかんねぇな。事件の謎解きじゃないんだから、知りたい事があんなら相手に直接訊けばいいのに」
「おまえに?」
「黒羽って呼べよ。もう正体バレちまったし」
ちょっと肩を竦めた。このあとどうなるんだろう。警察が追う怪盗の正体を知ったからには、探偵はやはり俺を罪人として警察に突き出すのだろうか。
それにしてはお互い緊張感がない。ただ友達を家に遊びにつれて来たみたいな感じだ。
「このままだと捕まるから、逃げようかなぁ」となんとなく呟くと、工藤はバーロォ、と言って俺に向き直った。
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クロスステップ《2/3》へつづく