If《1》(新一×快斗)
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こないだの模試の結果が出た。

どの教科も、俺の一つ二つ上に同じ名前がある。
「黒羽快斗――江古田高校」。
黒羽快斗……?

〝受験〟は俺の目指すところではない。普段から予習復習するわけでもなく、警視庁に出向いて捜査に協力したり、ヒマな時はため込んでいたミステリー本の一気読みしたり。
模試の結果も、だから別に気にするつもりはなかった。
なかったのだが――。


……思い出した。

サッカー部の助っ人頼まれて都大会の予選会場に行った時、江古田高校のジャージを着た連中の中に『KUROBA』のネームを付けた奴がいた。

あいつ、か。


気にするつもりのなかった模試結果が、どうしてこんなに尾を引いてるのか。
いや、模試じゃない。
俺が気になっているのは。

黒羽だ。

脚が速くていい動きをするミッドフィルダーだった。試合を観てたら自然と目がいく。しかし後で人づてに聞いたら、奴も俺と同じ助っ人部員だとかいう話だった。もったいない。

直接対戦する事はなかったが、ピッチの脇で一度すれ違った。
移動しながら何とはなしに江古田高校の連中を見てたら、すれ違いざま俺の肩を叩く奴がいた。振り向いたら、それが黒羽で――
黒羽はニコッと笑って俺に親指を立てて見せた。
その時は俺のプレーを観た奴が、単にエールを送ってよこしたんだと思って軽く会釈して通り過ぎた…。

それだけのことだったのだが。

なんで気になるんだ?

別にテストの点数が全部負けてるからってワケじゃない。少しはそれもあるが。

なんだか……もう一度会いたいな。

一度、黒羽と会って話をしてみたい。

根拠はないが、気が合いそうな予感がする。

会えないだろうか――黒羽快斗に。


気づけばタレントの追っかけのように、一部分しか知らない相手に憧れているうちにその相手と知り合いになったような気分になり…会いに行けばスンナリ積もった話が弾みそうな――そんなストーカーの思い込みと同様な気分になっていた。


アレ?

俺、あんなのがタイプなのかな。

急に気になり始めた。

記憶の中の黒羽の姿は細かく思い出そうとするほど曖昧になっていき、
イメージだけが逆に膨らんで――
膨らんだ黒羽のイメージは、やがてひらりと俺の麻酔銃をかわす怪盗キッドにつながった。


「………………」

まさかね。

模試結果からここまで飛躍するとは。

単に俺の好みのタイプということか。
……いやしかし。

俺はマシンを立ち上げて自室の椅子に座り直した。

直感を侮るな。
百の推理よりも一つの直感の方が真実を言い当てるという事もある。

俺は江古田高校をネットで調べた。

このモヤモヤを打破するために黒羽快斗に直接会いに行ってみよう。明日にでも早速。
そう決めたらわくわくしてきた。楽しみで――今夜は眠れなくなりそうだった。




つづく
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きゃー。個人情報に気を使う昨今は個人名とか出ないのかしら…模試結果発表とかに。自分の記憶では古すぎて分かんない
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フィクションのフィクションなのでとりあえずご勘弁を;
そして今回の目標イメージは学園物です。
こんな出会いをしてたら?の《If》のつもりです。模試と「もし」を引っ掛けたってのもありますが……(^。^;)