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『じゃあ、いってくる。』
『・・おう』
そう言い残して、車に乗り込むシウォニの背中を見送った。
夜明け前だからか、車が出たあとの風景は、ガランとして。
・・・寂しくないといったら嘘かもしれない。
でもそれは、『淋しい』とは明らかに違って。
(単純)
まだ、シウォニの感触が残る身体を両腕でそっと包む。
でも、それでもいい。
(頑張れ)
今は、素直にそう思える自分に少しホッとしていた。
カチッ――
未だ、ふわふわと覚束ない足を引きずるようにして――、自室のドアを静かに開ける。
ニャー
「・・・っ、ヒボム静かに」
すると、足元にじゃれついてくるヒボム。
俺は、しぃっ・・と、人差し指を口にあてると、すでに寝入っているであろう――、この猫の飼い主のベッドに目を走らせた。
(起こさないように)
そろそろと、ベッドに近づき、布団をそっと捲りあげる。
「・・・ん?ドンへ?」
と、その時、後ろから聞こえてきた声に振り返った。
「あ・・ヒチョルヒョン、起こしちゃいましたか?すみませ・・」
「・・楽しかったかー」
「は?」
一瞬、ヒチョルヒョンが何のことを言ってるのかわからなかった。
「会えたんだろ?」
「へ?」
「シウォニ」
「えぇっ・・・・」
ばれてる?
だが、そんな俺にはお構いなしと言った風情のヒチョルヒョンは、からかうように言葉を続ける。
まさか。
なんだか、嫌な予感が胸を走った。
「ったく、あいつ、俺にお前の居場所聞くとか、呆れるんですけどー」
「てか、お前もー。彼氏にくらい居場所ゆっとけ?」
「なっ・・・」
顔から火が吹くかと思った。
暗闇なのに、恥ずかしさから目が泳いでしまう。
「あんさー、あいつ、お前探すのに必死過ぎて俺、もう今日はクタクタなの」
聞いてる?
そう言いたげにヒチョルヒョンはヒラヒラ手を振ると、布団の下から目だけでニヤリと笑った。
「す、すみません。・・・・ヒョン寝て?」
ここ、俺は謝るので正解なのか?
そう思いつつも、早口でまくし立てると、急いで自分のベッドに潜り込む。
マジかよ。
あいつ、よりによってヒチョルヒョンになんて。
(ばかやろ)
今すぐ抗議のメールでもしてやりたいくらいだ。
布団の中で、もぞもぞ携帯を引っ張りだす。
(あ―――)
しかし、いくら押しても真っ暗な画面。
電源が落ちてたことに初めて気付いて、思わず苦笑いが洩れた。
(ばかは俺だ)
でも、と、ヒチョルヒョンの台詞を思い返す。
あいつ。
俺を、探してたんだ。
あいつだって、俺に会いたかったんだ。
「・・・・・・」
そしたら、何だかとても嬉しくなってしまって。
そうだな。
明日からあいつはいないし。
多分、しばらくはからかいのネタにされてしまうかも。
でも、頑張って俺を見つけてくれたシウォニに免じて、今回は目を瞑ろう。
そう思った。
―――淋しいよりも。
なんだか温かくて、少し気恥ずかしい、そんな気持ち・・・・悪くない。
(寝よ。)
うーっと、おもいっきり伸びをした。
そして、急速に襲ってきた眠気に目蓋を閉じると。
俺は、深い眠りについていった。
fin.
