(以下引用)
ビオチンはビタミンB群の一種で水溶性の必須微量栄養素です。ビオチンは、ビタミンB7、ビタミンH、補酵素R、d-ビオチンとも呼ばれます。
ビオチンのサプリメントは副作用が無いとされ、アトピー性皮膚炎の治療にもよく使われています。
ビオチンはエネルギー生成に役立っており、体内でビオチンが合成されないので、食事から摂るしかありません。ビオチンは特定の酵素欠乏に伴う神経系の問題、脱毛(円形脱毛)を是正、皮膚の異常(にきびや湿疹)を治すために使用されます。
小児で一日に5マイクログラム(mcg)、成人で30mcgが適度な量とされており、この量は食事から摂りやすいので欠乏することはまず考えられません。
例えば、バター(およそ大さじ3.5杯分)50gやひまわりの種50gに、それぞれ、47mcgと33mcgのビオチンが含まれています。よく、頭髪、皮膚、爪をよくするためにビオチンサプリを多量に摂る人がいますが多すぎると甲状腺ホルモン検査の結果が不正確になることがあります。
ビオチン不足によくある兆候と症状
ビオチン欠乏は、他の栄養素の欠乏より起きにくいとはいっても、ビオチン不足とか欠乏は確かにありえます。しかもビオチンは水溶性なので体内には貯蔵されません。
このため、常時一定量、ビオチンを摂り続ける必要があります。妊婦もこのビオチンの不足や欠乏リスクが高く、そのために、成長途中の胎児に重篤な影響が及ぶことがあります。
脱毛や、とくに顔を中心に赤いかさぶたのような腫れものができるのもビオチン不足の兆候です。
ビオチン欠乏のその他の兆候や症状
うつ状態
食欲不振
吐き気
筋肉痛
感覚異常
ビオチンが果たす重要な機能
脂肪、炭水化物、アミノ酸の代謝
神経系統の正常な機能
健康的なLDLコレステロールの維持
血糖値の制御
酵素と反応して髪の成分アミノ酸(ケラチン等のプロテイン生産の要素)を作り、髪を強化し、脱毛から回復
爪の強化-ある研究で一日に2.5mcgのビオチンを6カ月以上投与したら爪の厚さが25%増加しました
健康な皮膚の維持
加齢に伴う認知力の障害・劣化の防止
ビオチンは多発性硬化症患者にいい
興味深い点としては、最近の研究によると、ビオチンが多発性硬化症(MS)の治療に効くことを示唆しています。Authority Nutritionの報告を次にご紹介します。
「多発性硬化症(MS)の場合、脳、脊髄、目の中の神経線維を保護する被覆が損傷しているか破損しています。この保護鞘をミエリンといい、ビオチンはその生成のために欠かせません。進行型多発性硬化症患者23人のパイロット研究は多用量ビオチンでテストしました。
参加者の90%以上に何らかの臨床的回復がありました。進行型多発性硬化症患者についてランダム対照試験を行ったもので、最終結果は公表されませんでしたが、予備的な結果は有望なものでした。」
Multiple Sclerosis News Todayは、次のように説明しています。
「ビオチンは多発性硬化症患者において、細胞エネルギー生成経路を増大させ、神経細胞の軸索が壊れないように保護します。ミエリンの成分を生産する際に関与することでミエリン修復のペースを速める酵素を活性化もします。」
これらの検査のうち一件において、進行型多発性硬化症患者の13%は、医薬品等級の高用量ビオチン(MD1003と呼ぶ)を9か月間投与後に回復したと報告していました。
偽薬を投与された患者に回復者はいませんでした。2年後、処置した群の15.4%で身体障害が軽減していました。
エイマン・トゥーアバー(Ayman Tourbah)教授によると
「MS-SPI研究の全結果は特別に注目に値します。患者のうち統計的に有意な比率でこの病の進行が薬剤で抑えられたのはこれが初でした。
さらに、総合障害度評価尺度(EDSS)の変化を見ると同じエンドポイントを見た過去の全検査に対してとてもよくなったデータが得られています。MD1003を24カ月投与した患者は進行がほぼ止まり、このことは以前になかったことです。
ニューロンとオリゴデンドロサイトメタボリズムを標的にすると、非活性の進行型疾病に罹患した患者の場合は特に進行型多発性硬化症に対する有望で画期的な修正治療アプローチになることを、その結果は示しています。」
(注意事項)ビオチンのサプリメントで甲状腺検査の結果が異常になるおそれがある!
ビオチンのサプリメントはメリットがある一方、把握しておくべきマイナス面もあります。ビオチンのサプリメントで、甲状腺検査の結果に異常に高い値や低い値が出るおそれがあります!
Endocrine Newsによると
「医者は患者の甲状腺機能低下を、しばらくの間、レヴォチロキシンでうまく治療できていたのに、甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度が正常であるにもかかわらずT4濃度が急増しました。
患者を、インディアナポリスのインディアナ大学臨床医学教授のDr.ケリー・N・マリアシュに紹介したら、そこで行った補完的ラボテストの結果が矛盾するものでした。遊離T4と総T3が増えても、総T4、T4指数、TSHは正常だったのです。
幸いマリアシュ医師は患者に簡単な質問をしたおかげでこの混同を解決できました:「ビオチン飲んでますか?」答えは「はい、摂っています」「髪と爪をよくできるだろうと期待して、毎日、ビオチンを10 mg飲んでいます」でした。
そこで、ビオチンをやめたら、検査結果は正常になりました。この問題は患者の甲状腺とは関係ありませんでした。結局、ビオチンが検査に干渉していたのです。
マリアシュ医師はこの症例を、近年開催されたInternational Thyroid Congressで発表しました。
そのわけは、甲状腺検査結果が異常だった患者の数人がビオチンを飲んでいたためで、そのことに「ほとんどの内分泌科医師が気づいていないから」でした。
甲状腺検査結果が臨床所見と食い違っていればビオチンの干渉が考えられる
この種の検査結果への干渉による影響は重大になる場合があります。コロラド州の内分泌科Dr.キャロル・グリーンリー医師によると、実際には甲状腺の問題がないにも拘わらず、甲状腺機能亢進症、グレーブ病、さらにガンとさえも診断されてしまうおそれがあります。こうした人は多用量のビオチンを服用しており、検査結果が誤ってしまいました。
検査結果のこうしたズレは、ほとんどの免疫測定方法がビオチンとストレプトアビジンの相互作用に依存して行われているからで、血液試料に多量のビオチンが含まれていると、この作用に干渉し、検査結果が異常に高くも低くもなるのです。
Endocrine Newsによると
「競合的免疫測定方法の場合 — 通常は低分子量標的(T4、T3、コルチゾール等)に対して使用される — ビオチンの干渉で高い値が出ます。サンドイッチ免疫測定方法では低い値が出ます。
測定方法の他の特性も相違の原因です。例えば、培養時間が長いと干渉確率が高くなります。同じメーカー製の異なる分析物での測定においてさえビオチン干渉に対する感作度が異なります。
マヨクリニック内分泌実験室長Dr. ステファングレーベによると、検査を発注する医者が注意すべきことだと言っています。
「ラボでの結果が臨床診断結果と整合性がない、または、ラボ検査結果の総合的あり方からいって整合性がない場合、まず考えられるのは測定への干渉であり(ビオチンはその一つ)この検討をしてからでないと、SH分泌下垂体腺腫瘍などの病気が原因ではないかという見当をつけることはできません。」
その対処方法
しかし、その対処方法は簡単です。ビオチンは水溶性なので、体外へすぐに出て行きます。ビオチンサプリは甲状腺検査日の二日前にはいったんやめるほうがよいです。ビオチンは実際には甲状腺ホルモンを変化させず、検査結果のみに影響するので、概して甲状腺の健康のために禁忌とはされません。
ビオチンの摂取源となる食物
ビオチンのために検査結果が変わるという懸念は多用量ビオチンのサプリメントに関してのみで、食物は問題ではありません。ビオチンは多くの食品から摂りやすいので食品から摂るようにするのが最適です。
さらに、ビオチンのサプリメントは多発性硬化症の研究で使用されたような1日に300 mgの多量でも安全です。
食物には、遊離ビオチン(植物に含まれる)と、タンパク質結合型ビオチン(動物性タンパク質に含まれる)の二形態のビオチンが含まれています。体はこのいずれの形態でも利用可能ですが、遊離型ビオチンのほうが生体利用能がある形態に変換される必要がないので吸収され易いです。
遊離ビオチンが豊富な食品
ひまわりの種
グリーンピース、レンズ豆
クルミ、ピーカン
にんじん、カリフラワー、きのこ
アボカド
タンパク質結合ビオチンが豊富な食品
有機飼料/放し飼いで育てた鶏からの卵黄
レバー、腎臓などモツ肉
ミルク、バター、チーズ等の乳製品(有機的に草を食べさせた牛から取れる絞りたての生牛乳)
海産物(野生捕獲、養殖でなく、水銀等汚染物質フリーであること)
有機の草を食べさせた玉子の黄身は最適なビオチンの摂取源ですが、ビオチンと結合してしまうグリコプロテインの一種、アビジンが白身にあるということで玉子はよくないという人が多くいるのは事実です。その警告の背景には白身を食べるとビオチン欠乏につながるかもしれないという考えです。
玉子は調理すると白身のアビジンが不活性化するのでこのおそれはありません。ビオチンはこれに対して加熱しても壊れません。
さらに、玉子を全部(黄身と白身)食べると、アビジンで結合されるよりはるかに豊富なビオチンを黄身から摂れるので、玉子を食べるとビオチン欠乏にはなりません。
しかし、日常的に玉子の白身だけを食べると(コレステロールや脂肪が怖いので黄身を避けようとして)、ビオチンが豊富な他の食品を食べるとかビオチンサプリを飲むなどしない限り、自らビオチン欠乏を招くことになります。
従って、玉子は全部食べたほうが良いです。ビオチンを豊富に摂れるだけではなく、玉子の黄身には最適な健康のために欠かせない良質な脂肪、コレステロール、タンパク質が含まれます
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