アメリカでは1990年代に入って代替療法がブームとなった。1993年にハーバード大学のアイゼンベルグ教授らが調査したところ、1990年には代替療法の利用者は34%にのぼり、1997年には42%に増えていることが分かった。
そのほとんどが、これまでアジア圏で伝統・伝承的に用いられてきたポピュラーな治療法である。これらは伝統的西洋医学サイドからみれば、オルタナティブ(もう一つの、別の)医療と呼ばれた。
アイゼンベルグ教授らの調査でわかったもう一つのことは、それまで代替医療は、医療保険にも加入できず、高額な医療費を支払えない貧しい人々が利用しているものと一般的に思われていた。それが、ふたを開けてみると、実際は上層階級といわれる人々が多く利用していたことであった。これには多くの医療従事者が少なからずショックを受けた。
アメリカがガンに宣戦布告したのは1971年。ヴィクトリーまでの道のりはまだ遠いが、それでも、ガンによる死亡率は年々減少傾向を示している。ガン予防で「納豆」 など日本の伝統食が注目され、既存の西洋医学と代替療法を組み合わせた治療効果への関心も高まっている。
アメリカのガンの死亡率が減り始めたのは1990年半ば頃からで、なかでも男性の肺ガンに劇的な減少がみられた。また、乳ガン、前立腺ガン、大腸ガンも右下がりとなっている。
死亡率減少という朗報に加え、ガンと代替療法に関する興味深い調査報告も最近発表された。フレッド・ハッチンソン・キャンサーリサーチセンターの調査報告で、 1997年2月から1998年12月にかけて、乳ガン、または前立腺ガン、大腸ガンと 診断されたワシントン州西部に住む大人356人を対象に電話でインタビュー したところ、約97%がなんらかの代替療法を利用しており、その結果、ほぼ全員が体調がよくなったと答えたという。
健康維持が主な理由だが、約56%はガン治療の一環に代替療法を積極的に組み込んでいるという。また、17%が栄養療法、自然療法やマッサージ療法といった代替療法専門医に通い、20%がバイオフィードバック、催眠療法、イメージ療法、クリスタル療法、キレーション療法、マグネット療法などのメンタルおよびエネルギーの改善に効果があるといわれる代替療法を試みているという。なかでも最も多かったのはサプリメント利用で65%だった。
また、別の調査でも、ガン患者の37%から83%が診断後、何らかの代替療法を試みているといった報告があったように、代替療法を治療の選択肢のひとつと考える患者は確実に増えている。そうした状況を踏まえ、代替療法を治療の一環に組み込む病院も出てきた。
ニューヨークにあるメモリアル・スローン・ケータリング・キャンサーセンターもその一つ。 西洋医学の医者と代替療法医がチームを組み、既存医学による治療と患者のニーズに合わせた代替療法を併用し、最善のガン治療に取り組んでいる。通院でも入院でも代替療法サービスが受けられる。既存医学と代替療法を組み合わせることで、患者のガンと闘う意欲が高まり、目を見張る治療効果をあげているという。
ここで受けられる代替療法は、マッサージ、針の他に、音楽療法、瞑想、 バイオフィードバック、自己催眠、ヨガといったマインド療法。末期患者の不安感、痛みなどの緩和ケアに効果にも大きな効果をあげている。
治療の選択肢が広まったとはいえ、予防するのがまず第一。そこで、アメリカで注目されたのが日本食。アメリカでも緑茶、豆腐、味噌のガン予防効果はすっかり浸透したと言っていい。なかでも、「椎茸」と「納豆」のガン予防効果が評価されている。
「椎茸」はガン予防のほか免疫力を高める働きがあると、健康食品店の定番商品にもなりつつある。 ただ、あのねばりと強い匂いと味が苦手というアメリカ人も多く、「Nattokinase」というタブレットも販売されている。
「納豆」は、ガンを防ぎ、更年期障害の症状を緩和し、血液をサラサラにすることから、脳卒中や心臓発作も予防すると健康雑誌が大々的に取り上げたことから、緑茶や豆腐に次ぐブームになった。
一方、日本食がもてはやされるなかで、ガン予防の定番サプリメントが非難の矢面に立たされた。
アメリカ連邦政府の諮問機関「アメリカ・プリベンティティブ・サービス特別専門委員会」が、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEといった抗酸化サプリメントのガン予防効果に疑問符をつけたからだ。
体内で自然発生する活性酸素がガンを招く。そこでビタミンA、ビタミンC、ビタミンEといった抗酸化力をもつサプリメンがにわかに注目されたわけだが、同委員会は 「抗酸化サプリメントに関する複数の研究報告を調べたところ、ガンおよび心臓病の発生を食い止めると言いきれるほどの十分な証拠はない」と結論付けた。
なぜなら、活性酸素を無毒化する抗酸化物質は、確かにガンなどの様々な病気の発生や進行を食い止めるものの、あくまで食べ物で摂った際に効果があるという指摘もあったため、サプリメントの利用に懐疑の目を向けた形だ。また、β-カロチンについては、ヘビースモーカーが服用すると逆にガンの発生率を高めると警告している。
この他、サプリメントのガンをめぐる気になる情報については、ハーバード大学医学部が、カルシウムの過剰摂取は、かえって前立腺ガン発症の誘因となることを発表した。
また、抗酸化サプリメントは、放射線療法、化学療法の副作用を緩和する一方、 治療効果を妨げる恐れがあるといった報告も出ている。ただし、これらを結論付けるには、さらに今後の研究が必要とされている。
アメリカでは1990年代半ば、代替療法がブームになる中、とくに手軽に利用できる療法としてサプリメントを利用した栄養療法が関心を集めた。同時に患者がサプリメントと薬を併用した際の相互作用の問題についても医療関係者の間で取り沙汰されるようになった。
健康のために飲んでいるサプリメントも医薬品との飲み合わせ次第では有害に―そんなサプリメントと医薬品との相互作用の問題がやたら喧伝された。
アメリカ臨床内分泌学者協会(AACE)はその点を明確にした。 医薬品の場合、別の医薬品と併用した際の相互作用の報告が、アメリカ食品医薬品局 (FDA)により義務付けられているが、サプリメントは対象外となっていた。 そのため、併用による有害性に関するデータが不足していたことが背景にあった。 アメリカ臨床内分泌学者協会では「併用すると問題あり」という医薬品とサプリメントを下記のように報告した。
医薬品:抗てんかん剤Anticonvulsants
+
栄養補助食品:Borage oil マツヨイグサ抽出物 Shankapulshpi
ビオチン(ビタミン複合体)葉酸 ビタミンB6 ビタミンD
医薬品:バルビツール酸塩
+
栄養補助食品:カノコソウ
医薬品:ベンゾジアゼピン系抗不安薬
+
栄養補助食品:カノコソウ カバカバ根抽出物 グレープフルーツジュース
医薬品:ビスホスネート系骨吸収阻害剤
+
栄養補助食品:Bonemeal カルシウム ipriflavone 鉄 マグネシウム
医薬品:副腎皮質ステロイド
+
栄養補助食品:アロエ クロウメモドキ樹皮・実 カスカラ コロハ
甘草の根抽出物 エフェドラ エキナセア 亜鉛
医薬品:免疫抑制剤Cyclosporine
+
栄養補助食品:セントジョーンズ・ウォート
医薬品:強心剤Digoxin
+
栄養補助食品:ジギタリス エフェドラ ガーゴム サンザシ 甘草の根抽出物
ペクチン オオバコ kyushin uzara root 薬用ニンジン セントジョーン
ズ・ウォート
医薬品:エストロゲン
+
栄養補助食品:アンドロステンジオン グレープフルーツジュース chasteberry
コロハ 甘草の根 panax 薬用ニンジン ノコギリヤシ シベリアン・ジンセン
医薬品:血液・造血器系作用薬ヘパリン
+
栄養補助食品:ヒドラスチス
医薬品:インシュリン
+
栄養補助食品:クロム 薬用ニンジン
医薬品:Iron
+
栄養補助食品:セントジョーンズ・ウォート ノコギリヤシ
医薬品:Metoclopramide
+
栄養補助食品:Chasteberry
医薬品:経口避妊薬
+
栄養補助食品:セントジョーンズ・ウォート
医薬品:Oral hypoglycemics
+
栄養補助食品:α-Lipoic acid ツノゴマ エフェドラ ナツシロギク
コロハ ニンニク ジンジャー Gotu Kola ガーゴム トチノキ種子抽出物
甘草の根 Panaxジンセン オオバコ シベリアン・ジンセン イラクサ
karela イノシトール ニアシン
医薬品:プロトンポンプ阻害薬
+
栄養補助食品:Bonemeal カルシウム indole-3-carbinol 鉄 ビタミンB12
医薬品:スピルノラクトン
+
栄養補助食品:甘草
医薬品:抗うつ剤 SSRIs
+
栄養補助食品:セントジョーンズ・ウォート
医薬品:コレステロール低下剤 スタチン剤
+
栄養補助食品:レッド・イースト グレープフルーツジュース ペクチン
補酵素Q10 ビタミンC
医薬品:抗感染薬Tetracycline
+
栄養補助食品:カルシウム 鉄 マグネシウム マンガン ペクチン
医薬品:中枢神経興奮剤テオフィリン
+
栄養補助食品:Ipriflavone ビタミンB6
医薬品:チアジド系利尿剤
+
栄養補助食品:イチョウ葉
医薬品:甲状腺ホルモン
+
栄養補助食品:シロネ属の各種草本 レッド・イースト ケルプ カルシウム
鉄 bonemeal
医薬品:経口抗凝血剤ワルファリン
+
栄養補助食品:ニンニク イチョウ葉 ツノゴマ dong quai Panaxジンセン
ビタミンE ナツシロギク ビタミンK ルリジサの抽出物 クロレラ
補酵素Q10 curcuminoids マツヨイ草 flaxseed oil トコフェロール
hemp seed oil Iイノシトール ヨウ素 ニアシン オオバコ tiratricol
wheat and barley grass コンドロイチン
サプリメントを飲む理由のトップはやはり健康維持。しかし一方で、特定の医療目的でサプリメントを飲む人も増えている。アメリカ臨床内分泌学者協会ではホルモンおよび新陳代謝系に作用する栄養成分を下記のように挙げている。
アドレナリン作用:
甘草の根 dehydroepiandrosterone sulfate 5-methyltetrahydrofolate pregnenolone holy basil leaf プロビオティック ビタミンB5 ビタミンB6 ビタミンB12 ビタミンC
抗酸化作用:
ビタミンB複合体 補酵素Q10 リボ酸 クェルセチン ビタミンC ビタミンE
インシュリン・ブドウ糖コントロール作用:
クロム マグネシウム オメガ三系脂肪酸 ビタミンE 亜鉛
更年期障害症状緩和:
ショウブの根茎 bacopa monniera Gotu Kola ブラック・コホッシュ enterolactone and enterodiol セントジョーンズ・ウォートのフラワー トップ indole-3-carbinol ラベンダー・フラワー 亜麻 カモミール・ フラワー panax ginseng クズのつるの根 大豆イソフラボン レッド・ クローバー ビタミンB12 ビタミンB6 葉酸 betaine 5-methyltetrahydrofolate chasteberry withania somnifera
前立腺の病気予防: クェルセチン ノコギリヤシ 大豆イソフラボン ビタミンE
USC School of Pharmacy研究グループは、外科手術の前にハーブサプリメントを使用することは危険であると指摘した。 一部のサプリメントは薬剤と相互作用を起こし、多量出血や呼吸困難など危険な症状を併発する恐れがあるという。
具体的には、ガーリック(ニンニク)やギンコ(イチョウ葉)、ジンセン(朝鮮人参)などは手術前に飲むと、 深刻な出血を起こす危険性があると指摘している。また、ヴァレリアン、カバは麻酔剤と相互作用を起こし、呼吸に問題が生じる恐れがあるという。
また、HIV感染患者が薬療法中にガーリック(ニンニク)を摂取すると、薬の効き目を半減することも指摘されている。 メリーランドの研究グループが、HIV 感染患者10人のプロテーゼ阻害剤であるsaquinavirの血中濃度を調べ、被験者にプロテーゼ阻害剤を39日与え、その間、1日2回ガーリックタブレットを与えたところ、 ガーリックを与えている間、血中のsaquinavir濃度は50%に落ちたことが分かったと いう。
この他、ジンジャー(生姜)のトロンボキサン合成酵素阻害作用が知られており、 出血時間を延ばすという。そのため、ワルファリンなどを常用している場合、ジンジャー(生姜)との併用は避けるよう忠告された。
女性が罹りやすいといわれる尿路感染症に有効性を発揮するといわれ、日本でも認知度が高まっているクランベリーについても、クランベリージュースがワルファリン (血液凝固防止薬)と相互作用を起こすことが指摘されている。ワルファリン分解に使われる酵素、P450の活動を阻害することが報告されている。
薬との相互作用に関する報告はますます増えている。すでに3万以上の市販薬と処方箋薬が流通し、さらにその数が増加するなか、ハーブやサプリメントと薬との相互作用は永遠に続く問題である。競争社会のアメリカではとく激しい。現在のところ、相互作用で確認されているのは、薬物動態的なものと薬効学的なものである。
薬物動態的な相互作用というのは、吸収、分布、代謝、排泄過程でハーブおよび薬分子の生物利用能に影響が出ることである。
まず吸収の場合、アメリカオオバコはリチウムの吸収を妨げる。 ダイオウやアロエは下痢を引き起こし、digoxinやワルファリン(血液凝固防止薬) の作用を減じると考えられている。
また、亜麻種は腸で胆汁と結合し、脂肪の再吸収を妨げるという。粘着性を持ち、 他の薬、とくに強心配糖体と結合して、吸収しにくくすることが指摘されている。
分布では、鎮痛作用を行うサリチル酸を含むシモツケやブラックウィローは、 ワルファリンやcarbamazepineのようなプロテイン結合剤を置換し、その結果、薬の副作用を増大するという。
代謝の場合、例えば、リコリスは、コルチコステロイドの代謝を減じ、その蓄積によって毒性を引き出すと考えられる。セント・ジョンズ・ワートは最近、肝臓のチトクロームP450システムで肝臓ミクロソーム酵素を誘発することが指摘された。
従って、このシステムで代謝する薬、disoxin、theophyline、cyclosporineなどの代謝を増大させる。この他、セント・ジョンズ・ワートは選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI)との相互作用も指摘されている。
セント・ジョンズ・ワートについては、リラックスハーブとしてアメリカではニーズが高く、高い売り上げを誇っていたため、薬との相互作用の検証が真っ先に行われたが、避妊薬や抗HIV薬をはじめとして多くの薬の効果を半減させることが報告されている。
また、リラックスハーブとして知られるカバは、ドーパミン拮抗作用を果たすため、薬と併用するとパーキンソン病患者の薬療法を無効にしてしまうと考えられている。 また、アルコール飲料、トランキライザー、抗うつ剤などの作用を高めるため、 これらと同時に併用はしてはならないとされている。
では、ガン治療などの際、サプリメントを併用することで何か問題は生じていないだろうか---。
American Journal of Clinical Nutrition 2004/6月号によると、ニューヨークの研究グループが、子供の急性白血病患者103人を対象に抗酸化ビタミンと化学療法の副作用を調査した。
6ヶ月の期間中、被験者はビタミンE、総カロチノイド、β-カロチン、ビタミンAをそれぞれ、1日の推薦摂取量の66%、30%、59%、29%与え、 さらにビタミンCを多く与えたところ、副作用や入院期間が減少することが分かったという。むしろ、副作用の緩和に好ましい影響が報告されている。
(元記事リンク)
http://www.health-station.com/d-1.html
👴🏻こんなビデオもあるぞ。