クローン病は、口から肛門までの全消化管をおかす原因不明の慢性炎症性疾患です。消化器のどの部位にもおこり、とくに小腸と大腸に起こることが最も多く、腹痛や下痢の他、発熱や体重減少がみられることもあり、主に若年者に発症する病気です。
専門家もまだ、クローン病の原因についてはっきりとつかんでいませんが、いくつかの理論はあります。ほとんどの人がクローン病が通常こうした要因の一つ(もしくは、複数の要因の組み合わせ)によって発症すると信じています。
免疫システムに異常がある
免疫システムは、細菌やウイルスから体を守る役割をします。しかし、免疫システムの8割は内臓にあり、逆に、内臓は異なる種類の悪い細菌、良い細菌(悪玉菌と善玉菌)の棲み家でもあります。
健康な人では免疫システムがこうした細菌を認識し、つまり良い細菌を繁殖させ、害のある細菌を殺す役割をします。
しかし、何かが免疫システムを破壊すると、こうした細菌を認識できず、そのかわり、特別な腫瘍破壊因子α(TNFα)として知られるタンパク質を送ります。
このタンパク質は、細菌をすべて(良い悪いにかかわらず)殺してしまいます。一度こうしたことが起こると、白血球細胞が内臓の内壁に積み上げられ、炎症や潰瘍、腸管損傷を引き起こします。
遺伝子がクローン病の発症に何らかの形で関係しているかもしれません。
なぜなら、この病気を発生する人が共通して他の人よりも持っていることが多い遺伝子が200種類確認されているからです。また、特定の遺伝子的体質を持つことが、免疫システムの反応に影響することがあるともいわれています。
この病気にかかりやすい人は異常な免疫反応につながる可能性のあるあるタイプの欠陥遺伝子を受け継いでいるのかもしれません。2009年にクローン病の発症しやすさが増す遺伝子のDNA配列を発見した研究者がいます。
彼らは遺伝子の中にクローン病へのかかりやすさに関係すると考えられているNLRP3と呼ばれるDNA配列変種の場所を確認しました。これらの発見は雑誌Nature Geneticsに発表されました。
クローン病は遺伝することもある
患者の20人に一人には同じ病気を患う近い親戚がいます。もしあなたにクローン病になった一卵性双生児の双子の兄弟がいる場合、70パーセントの確率でクローン病を発症します。
あらたに、もしくは以前に細菌に感染していた場合
遺伝的にこの病気にかかりやすい人が、以前、子供のころに細菌に感染していた場合は、感染が異常な免疫反応を引き起こすことがあるため、この病気を実際に発症する可能性があります。
専門家の中には一種の細菌やビールス、大腸菌やエンテロウイルスなどがこの病気を引き起こす炎症の原因になるという人がいます。
非ステロイド性の抗炎症薬(NSAIDs)の使用
こうした処方薬を使用することで、クローン病を引き起こしたり、悪化させることがあります。イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウムなどがこうした薬に含まれます。研究によると、NSAIDsを常用してから一週間以内にこうした炎症が起こる可能性があるそうです。
喫煙
おそらく、この慢性的な病気の原因としてはこれが最も管理可能なものでしょう。喫煙者は非喫煙者に比べて2倍の確率でクローン病になりやすく、症状もより深刻になるため、通常、手術をしなければならないほどです。
食事
クローン病の発症に何らかの関連があることがはっきりと証明された特定の食べ物はありませんが、精製糖の摂取量が高い食事が病気のきっかけになると考える人がいます。これは驚くことではありません。なぜならフルクトースのような精製糖は炎症の印であるインスリンやレプチンの抵抗性を引き起こすからです。
加工食品、とくに乳化剤を含む食品もクローン病の発症に関係があるかもしれません。科学者の研究により、こうした食品添加物が私たちの内臓の粘膜内壁を破壊し、発症の可能性を高めることが分かっています。なぜなら粘膜内壁には私たちの内臓内で有害な細菌を破壊するバクテリオファージが含まれているからです。
その他、生活スタイルの要因、無菌環境に長時間さらされることなども、この疾患の発症に関係しているかもしれません。衛生仮説という理論では、より無菌状態の環境で育つ子供は免疫システムが完全に発達しない可能性があると言われています。ある程度、雑菌があったほうが健康になるんです。
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