例えば、集中できない、注意力が散漫、行動を抑制できない、多動などが見られると子の病気を診断されることになります。問題は、全ての子供にそのような症状が少なからず見られる点です。
このような行動が「より深刻」「より頻繁」で半年以上継続する場合は、ADHDと診断されますが、あくまで主観的な判断となります。
子供のADHDの診断には、検査や客観的な判断基準はなく、両親、教師、または、精神科医などの意見によって診断されることがほとんどです。
ADHDと診断された子供には、心理療法が行われる場合もありますが、最も代表的な治療は中枢刺激薬です。ADHD治療薬は、子供に処方される最も代表的な向精神薬です(抗うつ剤と共に処方される)。
ADHD治療薬の効能はさほどない
ADHD治療薬の利用を検討する場合、その効果とリスクを慎重に比較する必要があります。メチルフェニデート剤(販売名は、リタリン、コンサータ、Medikinet、Equasymなど)の妥当性が疑われる薬剤です。
Cochrane Database of Systematic Reviewsに掲載された研究によると、治療薬で全般的な行動面、生活の質をある程度改善させる効果があるとされています。
しかし、これは水準の低い研究によって導き出された見解であり、治療薬の使用には、慎重な判断が必要であることを研究者達は注意喚起しています。研究の著者である、児童思春期精神科医のMorris Zwi医師は述べています。
「この治療法の効果に対する期待が高すぎるのです。レビューでも効果が認められる点もありましたが、ベースとなった実験の精度が高くないことを理解しておく必要があります」
効能とリスクを明らかにするには、大規模で指揮管理のなされた臨床実験を実施する必要があります。
システマティック・レビューの結果、この薬剤によって睡眠障害や食欲不振などのリスクが増加することがわかっています。メチルフェニデートを服用している患者では、主に睡眠障害、食欲不振などの軽い副作用が起こるリスクが29%と高い結果が出ています。
ADHDの子供への中枢刺激薬の投与と睡眠の問題
Pediatricsに掲載された別の研究でも、リタリンをはじめとする中枢刺激薬による子供の睡眠障害について報告しています。
刺激効果を持ちながら、ADHDの子供には鎮静効果が期待できるとされており、入眠時の覚醒維持を抑制して眠りを改善することも示唆されています。
しかし、ベースとなった研究では、調査対象者は9人であり、中枢刺激薬を服用する子供に共通する次の様な現象を紹介しています。
寝付くのに時間がかかる(用量が多いほど長くかかる)
睡眠時間が短い
良く眠れていない(ベッドにいる時間と眠っている時間の比率)
睡眠不足はADHDの症状を悪化させるため、これは非常にやっかいな問題です。「中枢刺激薬がもたらす効能よりも、それによる睡眠への悪影響が大きい症例もある」と研究者達は指摘しています。
毎年2万3千人の子供がADHD治療薬の使用で救急診療を受診
多用されているにもかかわらず。ADHDの処方薬の効果は「おだやか」とは言えません。依存性が非常に高く、Drug Enforcement Agency(アメリカ麻薬取締局)の規制物質として、スケジュールII薬物に指定されています。
それにも関わらず、ADHDの診断を受けた子供の大部分がこのような危険性のある薬剤の中でも代表的なリタリンを処方されています。リタリンの作用は、中枢神経系の刺激であり、繊細で複雑な脳の機能や性格にまで影響を与えます。
言うまでもなく、子供の場合、長期の影響は良くわかっていません。また、判明しているだけで、睡眠障害や食欲不振の他にも次のような副作用があります。
心臓に障害がある場合の突然死
脳卒中や心臓病
血圧の上昇
行動、思考面での新たな問題または悪化
双極性障害の発症または悪化
攻撃行動、怒りの発症または悪化
精神症状の発症(幻聴、盲信、疑り深いなど)
躁病の発症
心拍数の上昇
子供における発達の遅れ(伸長、体重)
発作
視力の変化、かすみ
ADHDと診断される子供の5人に1人は誤診
リタリンなどの薬剤を子供に服用させる前に、本当に必要な措置であるのかをはっきりさせることが大切です。現在、ADHDの診断は、 意見によってなされています。病状を測る身体的な検査法がないためです。
2010年の研究によると、ADHDと診断された子供のうち20%が誤診であると推定されています。言い換えると、多動に見える子供の行動も正常な子供らしい行動の範囲内であったり、または生活習慣や有害物質への暴露などが原因であり、精神状態に影響を与える強力な作用のある薬が必要な病気ではない可能性があります。
脳SPECT検査 は、ADHDのような精神疾患に欠かせない検査法です。脳SPECT検査は、身体構造を画像診断するMRIやCTスキャンとは異なります。SPECは血流の状態を画像化する診断方法です。脳がどのように機能しているかがわかります。ブドウ糖の代謝を確認する陽電子放射断層撮影(PET)スキャンに似ています。SPECT検査では、次の3つの診断をします。
正しく機能している脳の部位
活性が低下している脳の部位
活性化している脳の部位
さらに、脳の機能が低下している部分と機能している部分のバランスを取る処置を行います。外科医で精神科専門医のDaniel Amen医師はSPECT検査に関する研究で、7種類の不安とうつ、6種類のADHD、5種類の過食、6種類の中毒症状を発見しました。例えば、SPECT検査では前頭前皮質の活動(衝撃抑制力の低下に関わる)の様子がわかります。また、ADHDとの関連性も指摘されています。
SPECT検査の利点は、有害物質への暴露による損傷を特定出来る点です。Amen医師は適切な処置を可能にするためにはこのような発見が非常に重要であると説明しています。
「かつて、ADD(注意欠陥障害)と診断された患者さんがいました。ADDの権威による診断です。その医師は、患者の様子について約10分間話を聞いて診断を下したそうです。私達がスキャンを撮ったとき、彼の脳はあきらかに有害物質による影響が見られました。前頭前皮質に損傷があれば注意欠陥障害の症状が出て当然です。この患者さんはヒ素中毒でした。必要なのは解毒の処置で、薬のアデロールではありませんでした。」
ADHDの子供には運動を勧めると良い
Pediatricsジャーナルに掲載された研究によると、定期的に運動する子供では、抑制力(集中を維持する)、作業記憶、認知機能の柔軟性(違う作業を進行させる)などの遂行機能の改善が見られることがわかっています。
ADHDの子供では、しばしば遂行機能に問題が起こりますので、運動をすると症状の改善につながる可能性があります。ADHDの子供では、学校の成績が良く無いため、多くの親が薬を使うことを承諾してしまう大きな理由です。
運動をする子供は、テストの点数や学業の成績も良くなることが知られていますが、このことはADHDの子供には特に該当します。
例えば、ある研究によると、学校の始業前と放課後に身体活動を取り入れたプログラムを実施すると、ADHDの可能性の高い子供達で、不注意や機嫌の変化が抑制され、数学や読解テストの点数が上がったことがわかりました。他の研究でも、毎日26分間の身体活動で小中学生のADHDの症状が大幅に改善したことを発表しています。
ハーバード大学精神科准教授のJohn Ratey氏は2012年のTEDで、運動はADHDの治療薬として考えられるべきだという意見を述べています。運動により、脳からドーパミンやセロトニンなどが放出され、機嫌が改善し、認知機能を高める効果が得られるためです。
ADHDの症状を克服する
もしも、お子さんに素行の問題やADHDの症状がある場合、ADHDの診断を受けていてもいなくても、次の点に注意してみて下さい。
糖分の摂り過ぎ:糖分の多い食事、でんぷん質の炭水化物の摂り過ぎは、インスリンの過剰な放出につながり血糖値が下がって低血糖を引き起こします。低血糖により、脳でグルタミン酸が分泌され、焦燥、うつ、怒り、不安、パニック発作などを引き起こします。
その他、糖分は慢性炎症を促進し、多くの研究でも糖分の多い食事によって精神面の健康が悪化することが示されています。
糖分や穀類が多い食事をいつも取っていると、血中グルコースレベルは、それに従って高くなり、長い間には身体がインスリンに対して「鈍感」になります。そこで、血糖値を下げる仕事をするためにますますインスリンが必要となります。最終的にインスリン抵抗性ができて、完全に糖尿病になります。
インスリンは、通常、血糖値を健康な範囲に保つ役割を果たしますが、同時に、脳への信号伝達の役割を果たします。
ある動物研究において、脳内インスリンの適切な信号伝達を破壊したとき、 アルツハイマー病(見当識障害、錯乱、学習と記憶障害)でよく観察される特徴的な脳内変化の多くを誘導することができたのです。
インスリンとレプチン抵抗性と2型糖尿病につながるのと同じ病理学的プロセスが、ヒトの脳にも当てはまる可能性がますます高まっています。
糖分や穀類に依存し過ぎるようになると、脳が常に高レベルのインスリンに圧倒されるようになり、最終的にはインスリンおよびレプチンレベルが高まり、信号伝達が深く破壊され、思考や記憶能力の障害が起こるのです。
そして究極的には、いろいろな健康上の問題に加えて、脳障害が恒久化します。過去2013年に「ニューイングランド・ジャーナルオブメデスン」に公表された研究では、血糖値の穏やかな上昇、105とか110位のレベルでもリスク増に関連していることを示しました。
さらに、ジャンクフードを食べれば食べるほど、身体はそれに慣れ親しみ、ますます、同じ欲しい物を欲しがるようになります。ちょうど、薬の中毒のようです。最終的には幸福感を維持するためにジャンクフードをいつも食べなくてはならなくなります。
Scientific American誌によれば
「研究により、脂っこくて甘い食物が口に入る前から脳はそれに反応することを示した。欲しい物を見るだけで報酬回路が活性化する。そのようなジャンクフードが舌に触れるとすぐ、味蕾は、信号を脳のいろいろな部位に送り、脳は脳内化学物質、ドーパミンをまき散らして反応する。その結果、喜びの強い感情を得る。
つまり、“とてもおいしい”食物を頻繫に食べ過ぎることは、脳をドーパミンで飽和させるので、究極的には脳はその状況に適応して鈍感になってしまい、脳内の化学物質で認識と反応を行う細胞の受容体数を減らすのです。」
小麦のグルテン感受性:ADHDなどの神経系、精神系の病状の根本原因が グルテン感受性 であることはエビデンスからも有力です。2011年の研究によると、ADHDの患者にセリアック病が非常に多く、グルテンフリーの食事で子供の行動の問題が大幅に改善されることがわかりました。
ADHDの症状のチェックリストにセリアック病を追加するべきであると示唆しています。
腸の健康状態の悪さ :Natasha Campbell-McBride博士(大学院にて神経学修了)によると、腸内の毒素は身体から脳に達し、自閉症、ADHD、失読症、統合運動障害、うつ、精神分裂症や様々な精神疾患の引き金となります。精神の健康問題では、腸の炎症を改善することが必要です。子供の腸内フローラを整えることが欠かせません。
このためには、加工食品、精製食品を避け、伝統的な発酵食品を食べるようにしましょう。発酵食品の中でも食べやすいのは発酵野菜です。子供の場合はケフィアなどの発酵食品をスムージーに入れたものも好みます。
動物性のオメガ3脂肪酸の不足:研究によると、 オメガ3脂肪酸が不足すると、多動、学習障害、素行の問題が起こりやすくなることが示されました。オメガ3脂肪酸の不足により、失読症、暴力、うつが起こることもわかっています。2007年に発表されたある臨床実験では、ADHDと診断された大人でのクリルオイルの効果について調査しています。
食品添加物と遺伝子組み換え原料:数々の食品添加物がADHDを悪化させると考えられヨーロッパでは禁止されるようになりました。
避けたほうが良い食品添加物は、 お菓子などにも入っている人工着色料の青色1号/2号、緑色3号、オレンジB、赤色3号/40号、黄色5号/6号、ジュースなどにも入っている保存料の安息香酸ナトリウムです。
研究の結果、モンサント社の除草剤ラウンドアップの有効成分であるグリホサートが、除草剤ラウンドアップに耐性を持つよう遺伝子組み換えされた遺伝子組み換え作物に大量に使われており、体内から異物である化学物質を解毒する作用を制限してしまいます。その結果、化学物質や環境毒素による悪影響が強くなり、脳障害(行動に影響する)などの様々な病気に発展する可能性があります。
ADHDの症状を和らげる要素
家庭内に危険な殺虫剤や、合成シャンプー、リンス、コンディショナー、ボディーシャンプー、合成洗剤、合成石鹸などの合成化学物質を置かない。
EMF(電磁波)。携帯電話などの電磁波汚染をなるべく制限する。休息と回復の場所である寝室の環境には特に気をつけましょう。できるだけ電磁波を避けるようにしましょう。
市販の洗濯洗剤や掃除用製品を買わない。 洋服や家の中で使う製品は、合成香料や柔軟剤の含まれない天然成分由来の製品に替えましょう。
自然の中で過ごす。研究によると、ADHDの子供を自然に触れさせると、費用が掛からず、健康的に症状をコントロールできる方法です。
感覚統合療法や感情を健康にするツールを検討してみる。 EFT(感情解放テクニック)などのエネルギー心理学ツールが、感情面の対処法や治癒効果を向上させます。
その他の有害物質。有害物質は避けましょう。味の素グルタミン酸ナトリウム(食品表示は「調味料 アミノ酸」)、アスパルテームなどの人工甘味料、歯の詰め物アマルガムに含まれる水銀、歯磨き粉や歯科洗口のフッ素などにも気を付けましょう。ジュースなどに入っているアスパルテームやスクラロースのような人工甘味料もご法度です。砂糖やコーンシロップ(果糖ぶどう糖液糖)よりもはるかに悪質な一連の健康問題を新たにもたらすからです。
有害物質の排毒がポピュラーになってきています。現代社会において、身体が持つ本来の解毒作用(肝臓、腎臓や肺)では排毒できない様々な有害物質が体内に蓄積されているという考えが浸透してきているためです。
1日に1〜2回の排便が理想的なのですが、多くの人が2〜3日に1度という場合が多いようです。毒素は体外へ排出される際に肝臓を通過します。有害な化学物質は肝臓で水溶性の分子に変化し、尿や便として排出されるのです。その排出が遅れると、体内に毒素が残ってしまうことになります。体内の排毒に必要な水分補給も大切です。
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