聖セシリア学園は明日から新学期です。クリスマスから新年を家族と過ごした寄宿生たちが、ぼちぼちと学園に戻ってきました。
外交官であるお父さまの任地のパリで休暇を過ごしていたアナ=マリアちゃんは、既に一昨日の夜に学園に戻り、荷物の片付けも済ませてしまっていたので、本でも読んで無聊を慰めようと、談話室に来ています。窓ガラスに霜の模様が出来るほど外は寒いですが、談話室にはストーブが赤々と焚かれ、いい具合に暖められていました。
一冊を読み終え、階段下に設えられた本棚まで本を替えに来た時、なんとも面妖な飾り物も一緒に置いてあるのに、気が付きました。
「とのレスリング‥‥それに、後ろのおじさんは誰なのかしら」
数年前の万国博覧会以降、大の日本贔屓となられた学長先生がせっせと買い込んでこられるという飾り物のようですが、賢いアナ=マリアちゃんをしても、ニッポン文化は摩訶不思議です。
久しぶりの『聖セシリア学園』シリーズです前記事(★)はなんと一年以上前
女生徒と女教師のみならず、男性陣も登場させようとお話を練っているのですが、ジオラマやら衣裳やらの準備が捗らず、アイデア段階で滞った侭なのですそれでも漸くマリオン先生以外の、登場人物の名前を決めました。黒髪のこの娘はアナ=マリアちゃんです。
彼女に着せたのはアゾンの「ギムナジウムセーラーワンピース」と「靴下止め付きソックス」です。いずれもメルカリでゲットしましたさすがピュアニーモボディのアナ=マリアちゃん、よく似合っていますね
バケツとシャベルを持った知らない男の子が階段を下りてきましたが、本を読んでいるアナ=マリアちゃんを見かけると談話室に入るのをやめ、ぺこりとお辞儀をして戻っていきました。
今回、著しく稚拙ながら<窓から戸外の見える部屋のジオラマ>を作ってみました
ボール紙にリメイクシートを張り付けて壁とし、窓を切り出して、百均の額縁とアイアン小物を組み合わせた窓枠を取り付けてあります。
「外の景色」には百均ドールハウスの一部を切り取って嵌め込みましたが、出来れば馬車通りや尖塔などを望む、クラシックな欧風の街並の景色が欲しかったんですよね……といっても色々探してもなかなか「これは」というモノに出会えず……絵画や絵本のワンシーンを使うのも、もしかしたら著作権の観点から難しいかもしれません
ショボいジオラマですが、インスタやメルカリに出品されている素晴らしい作家さんの1/6スケールドール家具力に底上げされて、何とかサマになりました
アンティーク階段、薪ストーブ、白い床パネル、そしてドア付き壁パネルを使っています
「見たことのない男の子だったわ……」
アナ=マリアちゃんは思いました。
「新しいボーイって感じの子だったわ。休暇の間に雇い入れたのかしら……あの子がストーブを焚いておいてくれたのね」
この薪ストーブインスタのフォロワーさんが素敵に使っておられるのを見て私も猛然と欲しくなり、ご縁をいただいちゃいました
煙突の雰囲気とか、中で燃える薪の感じとか心地よく暖かそうで、素晴らしくよく出来たミニチュア家具です
「アナ=マリアちゃん、ハピニューイヤー会いたかったーーー」
「わぁ、ロザリンドちゃん今着いたとこ」
容貌も言動も華やかな金髪のこの娘は、ロザリンドちゃんパパは銀行頭取です。
戸外から建物に入ってきたばかり、を演出したかったので、ロザリンドちゃんにはアゾンのツイードコートを着せました。
これ意外に細身に作ってあるので(袖なんか特に‥‥)、インナーには何も着せていません……が、バラさなければ分からないですよね代わりに厚手のタイツやミドル丈ブーツで、防寒イメージを固めました帽子はアナ=マリアちゃんに着せたセーラーワンピースと揃いの付属品です
「これから荷物をほどくの~~」
「あ、じゃぁ私もお部屋に帰る。ロザリンドちゃんにパリのおみやげ買ってきたのよ」
「ホントえーーーー嬉しいすぐに見たいわぁ」
「フフフ、お片付け済ませてからね。美味しいお菓子も買ってきたから一緒にお茶にしましょ終わるまで待っててあげる」
「はーい超特急で済ませるわ」
ふたりは笑いさざめきながら、軽やかに階段を駆け上っていきました。
寄宿舎のある3階からは、戻ってきた生徒たちの立てる物音や話し声が微かに聞こえてきますが、誰も居なくなった談話室はしんと静まりかえって、ぱちぱちと薪の爆ぜる音だけが響いています。
先ほどの男の子がまた談話室の様子を見に来て、今度は入ってきました。
黙々とストーブの火の世話をするこの子の名前は、カイルくんといいます。アナ=マリアちゃんが看破した通り、休暇中に雇い入れられたボーイです。
聖セシリア学園は、明日からまたいつもの日常に戻ります。カイルくんの仕事も、これまで以上に忙しくなるのでしょうね。
上流階級で富裕層のお嬢さんばかりの生徒たちと同年代ですが、カイルくんは労働者階級で、何かにつけ「小僧」と追い使われる身分の少年……ちょっとまだ、おどおどしてますね。
この子の物語も、いずれ書きたいと思っています。