隣に寝ていた男の身じろぎで、マリオン・モード・パリッシュは自分の意識が眠りの底から浮かび上がるのを感じた。今日は休日の1日目‥‥まだまだ心地よい微睡みの中に身を置いていても構わない時間だ。
ベッドに身を起こした彼は、マリオンの金髪をひと房手に取ってキスを落とし‥‥
立ち上がって軽く伸びをすると、そっと部屋を出て行った。
隣のリビング越しに、キッチンで調理器具を使う音が微かに聞こえる。今朝も朝食を作ってくれるらしい。
彼の名前はアレン・ワイルダー。28歳、某劇団の俳優である。
セレステアート社では福利厚生の一環として、幾つかの劇団・美術館・楽団などとチケットの優先購入契約を結び、それを社員に割引で販売している。「優れた芸術・芸能には出来るだけ数多く触れて、自らの糧としてほしい」というヒル社長の意向でもある。
社内総務の担当者が退職した時、後任が決まるまでの間、マリオンが一時期その業務を引き受けた時があった。取り纏めたチケットを会社まで持参したのがその芝居の出演者だと知って、驚いたものである‥‥その俳優がアレン・ワイルダーだったのだ。
彼にも出演作品にも興味を惹かれたマリオンは、自分もチケットを購入してアレンの芝居を観た。次に彼が来社した時にその芝居の感想と解釈について話したのを面白がったアレンが、マリオンを食事に誘った‥‥ゆっくりと話の続きをする為に。
時折二人で出会っての食事或いは飲酒の機会は、後任が決まってからも続いた。
ある日様子の違うアレンを訝り何かあったのかと訊ねたマリオンに彼は、住んでいるアパートメントの建物の取り壊しが決まり、新しい住まいを見つけなければならないのだと打ち明けた。「私の処に来る?」‥‥気が付いたら、マリオンはそう口にしていたのだった。
「おはよーーーー」
「おはよう。朝メシ食うだろ?今ちょうど出来たとこ」
「うん、食べるーーーー」
大学を卒業後、実家を出て以来、何人ものルームメイトと暮らしてきた。相手が異性だった事も何度もあるが、料理をする男、というのはアレンが初めてである。
アレンは時折、地方巡業で数週間から一ヶ月ほど不在になる事がある。二人で暮らして初めて迎えた冬のこと、寒さに凍え疲れ切って会社から一人の部屋に帰ってきたマリオンを迎えたのは、アレンが出る前に仕込んでおいた鍋いっぱいのボストンクラムチャウダーだった。
「サンドイッチも作ったから」
「うわ、食べ切れるかしら」
「残して構わん、俺が食う‥‥と、そうそう生ハム使い切ったぞ。卵も」
「あら、買いに行かなくちゃ」
「俺がクルマ出すよ。どうせならショッピングセンターの方に行こう」
この機会だーーーと、集めまくった食べ物系や食器類のミニチュアを、目いっぱいテーブルに並べ立てましたうは~楽しーーーそれにしても、私も欲しいぞクッキング彼氏ーーー「パートナーの男性が料理をする」は、友人夫妻を参考にしています。
「お待たせ。じゃぁ出掛けましょ」
二人はこれから海岸沿いのショッピングセンターに出掛ける。家具とカーテンを見て、評判のパンケーキ屋で遅めのランチ兼ティータイム的な中食を摂り、最後に併設の大型グロサリーで一週間分の食料品を買い込む予定だ。
休みはあと一日ある。アレンは牛の塊肉を買い込んで、明日はローストビーフを作ると言っている。
「お。似合うじゃない」おろしたての季節ものブラウスを着てきたら、アレンが褒めてくれた。そういうアレンは着るものに頓着しないが、俳優だけあってどんなアイテムでもさらりと着こなすし、しかも独特のオーラを放っている。実際、並んで歩くと、すれ違う女たち、そして男たちからも、羨望と嫉妬の入り交じった視線を投げられる事が多くなった。
このコンドミニアムはマリオンが、ちょっと無理をして購入した分譲だ。二人で住むには少々手狭だが、今後アレンとの付き合いがどうなるのかは分からない、とマリオンは考えている。
もし‥‥と、マリオンは思う。もし、この人と別れるようなことになったら‥‥あのボストンクラムチャウダーの事はきっと、猛烈に恋しくなるのだろうな、と。
ヒル社長の秘書マリオン・モード嬢の相手役に、ニューフェイスのパジャマスタイルナインさんを据えましたこの記事で語った通り大層な色気のある人ですので、職業はオフィスワーカーではなく俳優ってコトにしました。
そして、会社を通して購入したチケットを届けに来てくれたのがその演目の出演俳優だった、というのと、その俳優さんと飲みに行ったことがある、というのは私自身のOL時代の経験を元にして書いています
余談ですが、ロナルド・ロウエル役を割り振っているスーツスタイルナインさんに、長髪のカツラを被せて雰囲気を変えアレンとの二役で使おうか‥‥と考えていたこともありました町田ブックオフでゲットした大きすぎるカツラを詰めるのが面倒くさくなったので、却下しましたけど
今回は、パジャマスタイルナインさんのデフォルトアウトフィットを使って「一着のパジャマをカップル二人で分け合う」という遊びもやってみました。少女漫画に時折登場するシチュエーションです
マリオン・モード嬢、パジャマ下にはこんな可愛いランジェリーを着けているんですよメルカリ作家さんのランジェリーで、凄い競争率なのを勝ち抜いてゲットしました
そして何気に並べてありますが、1/6スケールウィンザーチェアの「小サイズ」をゲットしてたの、分かりますか~しかも2脚アレンの同居によりダイニングの椅子がもう1脚必要になったが、同じモノは売り切れだったので同型で塗装の違うのを買った、という説明しなけりゃ分からん設定です実の処は、私が二種類欲しかっただけなんですけどね
29㌢&27㌢ドールとのサイズ感や相性は抜群でしたぁ「大サイズ」ではハイバック過ぎて作れなかった「背後から腕を回して抱擁する」ポーズも、この通り
「一着のパジャマを‥‥」は、女性にトップス・男性にボトムスを着せるのが定石です‥‥が、男女・上下逆にしたらどうなんだろうと思い立ちましたで、やってみたのがコレです。
ちょい下げ~
なかなか「うはぁ」な絵面が撮れましたよ
俯瞰図‥‥身体を捻って斜め上を向くポーズの作れるmomokoの「見返り美人」っぷりが見事です六分の一男子は構造上どうしても俯いてしまうので、お互いしっかり目を合わせるポーズも作りたかったのですが‥‥ちょい残念でした
それでもラブラブなお二人さん案じることはないよ、マリオン・モード‥‥と、書き手としては言いたいものです