1 司法警察員は令状に基づいてテレビ局の保管するディスクを差し押さえている。かかる行為はテレビ局のディスクを保管する自由を侵害し違憲ではないか。

2 ここで、ディスクを保管する自由は取材の自由に含まれるところ、取材の自由が憲法上保障されているか。明文なく問題となる。

(1) この点、判例は取材の自由は尊重に値するとして、憲法上保障されるか否かについて明言していない。 

しかし、取材の自由は報道の自由の不可欠の前提である(報道は取材→編集→発表という一連の流れで成り立っている。)ところ、報道の自由は国民の知る権利(21条1項)資するものとして同項で保障されると解される。

そこで、取材の自由も21条1項で保障されると解する。

(2) そして、取材の自由は法人であるテレビ局にも性質上保障されると解する。なぜなら、取材の自由はテレビ局や新聞社等のマスメディアにこそ認められるべき権利だからである。

(3) この点については、裁判所がテレビ局に対してディスクの提出命令をした設問後段も同様である。

3(1) しかし、かかる取材の自由も憲法上の要請からの必要最小限度の制限をうける。本問においては、捜査の必要性(35条)という要請からの制限をうける。そこで、本問制限が必要最小限度の制限といえるか。違憲審査基準が問題となる。

たしかに、捜査が十分に行われなければ真実を発見することができなし、また、捜査が十分に行われなければ公正・適正な裁判(32条、37条1項)も達成できない。

しかし、捜査そのものは人権保障に直接資するものではない。

思うに、取材の自由は表現の自由にかかわるところ、表現の自由は自己実現・自己統治の価値を有する重要な権利である。

そこで、厳格な基準で審査すべきと解する。

具体的には、①規制目的の正当性②規制目的を達成できるより制限的でないほかに選びうる手段の有無(LRAの基準)で審査すべきである。

 (2) 他方、設問後段の憲法上の要請は適正公正な裁判の実現(32条、37条)である。そして、適正公正な裁判が実現されてはじめて被告人の人権が保障されるのである。とすれば、適正公正な裁判は、捜査と異なり人権保障に直接資するものである。

よって、かかる要請は設問前段の捜査の必要性よりも重要であるといえる。

     そこで、設問前段よりも緩やかな基準で審査すべきと解する。

   具体的には、①規制目的の重要性②規制目的と規制手段との実質的関連性で審査すべきである。

4(1) これを本問につきみるに、司法警察員がディスクを差し押さえた目的は多数の死傷者が出た交通事故の原因を調べるためである。そして、かかる目的は重大事件たる本問事件の真実を発見するためといえ、①目的は正当といえる。

     では、②手段についてはどうか。

    この点、放送したものを録画したもので真実を発見できるのであれば他に選びうる手段が存在するといえる。

    では、放送したものを録画したものでは真実を発見できない場合はどうか。

    この点、本件ディスクはテレビ局しか保有しておらず、これに対して差し押さえをする必要がある。また、本件ディスクはたまたまドラマを収録していた際に取材したもので偶然性のつよいものであるといえ、かかる場合にディスクの差し押さえを認めたとしても、将来の取材の自由に与える影響は小さいといえる。

    とすれば、目的を達成するためのほかに選びうる手段はないといえる。

よって、放送したものを録画したもので真実を発見できる場合は違憲であるが、放送したものを録画したもので真実を発見できない場合は合憲である。

(2) 他方、設問後段の提出命令の目的は、公正適正な裁判を達成するためであり①目的は重要である。

    では、②手段についてはどうか。

    この点、設問前段と同様に放送したものを録画したもので目的を達成できるか否かで分けてかんがえる。

    すなわち、録画したもので目的を達成できる場合は、これを証拠として用いればたり、手段との実質的関連性がなく違憲である。

    では、録画いたものでは目的を達成できない場合はどうか。

    この点、設問前段同様に提出命令を認めるべきとも思える。

しかし、ディスクはテレビ局が取材を通じて入手したものであり、これに対して提出命令を認めることは将来の取材の自由に対する影響が大きい。

    また、本件ディスクは一般人も所有しており、これに対して提出命令をすれば目的を達成できる。

    とすれば、テレビ局に提出命令をすることは目的に対して有効な手段とはいえない。

    よって、録画したもので目的を達成でない場合も、②目的と手段の実質的関連性を欠き違憲である。

 

第1 問
自動車の多重衝突により多数の死傷者が出た交通事故の発生前後の状
況を, たまたまその付近でドラマを収録していたテレビ局のカメラマン
がデジタルビデオカメラで撮影しており, テレビ局がこれを編集の上ニ
ュース番組で放映した後, 撮影時の生データが記録されたディスクを保
管していたところ, 同事故を自動車運転過失致死傷事件として捜査中の
司法警察員が, 令状に基づき同ディスクを差し押さえた。
この事例に含まれる憲法上の問題点について, その交通事故を取材し
ていたテレビ局が, 一般人が撮影したデジタルデータの記録されたディ
スクを入手し, それを編集の上ニュース番組で放映したところ, 同事故
に関する自動車運転過失致死傷被告事件の係属する裁判所が, テレビ局
に対し, 同ディスクの提出命令を発した場合と比較しつつ, 論ぜよ。


1 司法警察員は令状に基づいてテレビ局の保管するディスクを差し押さえている。かかる行為はテレビ局のディスクを保管する自由を侵害し違憲ではないか。

2 ここで、ディスクを保管する自由は取材の自由に含まれるところ、取材の自由が憲法上保障されているか。明文なく問題となる。

(1) この点、判例は取材の自由は尊重に値するとして、憲法上保障されるか否かについて明言していない。 

しかし、取材の自由は報道の自由の不可欠の前提である(報道は取材→編集→発表という一連の流れで成り立っている。)ところ、報道の自由は国民の知る権利(21条1項)資するものとして同項で保障されると解される。

そこで、取材の自由も21条1項で保障されると解する。

(2) そして、取材の自由は法人であるテレビ局にも性質上保障されると解する。なぜなら、取材の自由はテレビ局や新聞社等のマスメディアにも認められるべき権利だからである。

(3) この点については、裁判所がテレビ局に対してディスクの提出命令をした設問後段も同様である。

3(1) しかし、かかる取材の自由も憲法上の要請からの必要最小限度の制限をうける。本問においては、捜査の必要性(35条)という要請からの制限をうける。そこで、本問制限が必要最小限度の制限といえるか。違憲審査基準が問題となる。

たしかに、捜査が十分に行われなければ真実を発見することができなし、また、捜査が十分に行われなければ公正・適正な裁判(32条、37条1項)も達成できない。

しかし、取材の自由は表現の自由にかかわるところ、表現の自由は自己実現・自己統治の価値を有する重要な権利である。

そこで、厳格な基準で審査すべきと解する。

具体的には、①規制目的の正当性②規制目的を達成できるより制限的でないほかに選びうる手段の有無(LRAの基準)で審査すべきである。

 (2) 他方、設問後段の憲法上の要請は適正公正な裁判の実現(32条、37条)である。そして、適正公正な裁判が実現されてはじめて被告人の人権が保障されるのである。とすれば、かかる要請は設問前段の捜査の必要性よりも重要である。

   そこで、設問前段よりも緩やかな基準で審査すべきと解する。

   具体的には、①規制目的の重要性②規制目的と規制手段との実質的関連性で審査すべきである。

4(1) これを本問につきみるに、司法警察員がディスクを差し押さえた目的は多数の死傷者が出た交通事故の原因を調べるためである。そして、かかる目的は真実を発見するためといえ、①目的は正当といえる。

     では、②手段についてはどうか。

    この点、放送したものを録画したもので真実を発見できるのであれば他に選びうる手段が存在するといえる。

    しかし、放送したものを録画したものでは真実を発見できないのであれば他に選びうる手段が存在しないといえる。

    また、かかる場合にディスクの差し押さえを認めたとしても、たまたまドラマを収録していた際に取材したもので、偶然性のつよいものであり、将来の取材の自由に与える影響は小さいといえる。

    よって、放送したものを録画したもので真実を発見できる場合は違憲であるが、放送したものを録画したもので真実を発見できない場合は合憲である。

(2) 他方、設問後段の提出命令の目的は、公正適正な裁判を達成するためであり①目的は重要である。

    では、②手段についてはどうか。

    この点、設問前段と同様に放送したものを録画したもので目的を達成できるか否かで分けてかんがえる。

    すなわち、録画したもので目的を達成できる場合は、これを証拠として用いればたり、手段との実質的関連性がなく違憲である。

    では、録画いたものでは目的を達成できない場合はどうか。

    この点、たしかに設問前段と異なり、ディスクはテレビ局が取材を通じて入手したものであり、たまたま手に入れたものではない。

    しかし、本問交通事故は「多数の死傷者」を出した重大事件であり、適正公正な裁判を実現するためにはディスクが必要不可欠である。

    また、テレビ局に対して提出命令ができないとなると、テレビ局がディスクを入手した一般人に対して提出命令をすることになるが、この者がだれであるかを特定することは困難であり、実質的にはディスクを証拠とすることができなくなる。

    よって、録画したもので目的を達成でない場合は、②目的と手段の実質的関連性があるといえ合憲である。