ぼく、ロンです。





ガサゴソガサゴソ
またママがなにやら取り出してきました。

「ロン君、あったあった、見てこれ。」

それは「果物の絵」でした。






ママが「ビシキ展」を鑑賞したことは
前回、前々回と書かせていただきましたが

ママはギャラリームサシにて
その白い壁にあけられた無数の穴を見て

突如、思い出したことがあったのだそうです。


「あ、私、画廊でアルバイトしたことがある」


それは今から25年ほど前
ママが学生時代だった頃

銀座三越の裏の道にあった画廊で
個展を行うという画家の作品を
配置するといったアルバイトだったそうです。

「ネパールの風景画と
そこで出会った人物画だった。」






アルバイトの記憶はさらに甦り

「出版元から依頼されたモチーフで、生徒作品を描く」

というアルバイトもしたそうです。


それが冒頭の果物の絵と、これ↓です。





「えぇえぇ、もちろん、
生徒のダメな作品の代表として載りましたよ。」


ほんとうだ
しっかりと「✖︎」がついてる、笑。









ママの作品はプロの手により
しっかりと「上描き」され

出来あがった本とアルバイト料とともに
ママのもとに戻ってきたのだそうです。





気軽にはじめる油絵7日間』
視覚デザイン研究所 編
1997年初版発行

(今思うと『油絵7日間』とはオモシロイ題名だな。ちなみに水彩バージョンもあります)



「ママって学生時代、何をしてたの?」

ぼくは気になって聞きます。


「油絵や陶芸の美術サークルにはいっていました。
アトリエがあって
崩れそうなベランダには陶芸の窯もあって
焼きの日には夜中、火の温度管理をしたり、、、
というか、、、

夜中、お酒を飲んでいました。。。」



あぁ、なるほど、だから我が家には
こんな底の割れた器が大切そうにあるんだね。



一度この器にぼくのカリカリが入れられて出てきて、ぼくはびっくりしたよ。



ママは「ビシキ展」からの帰り道
こんなことを考えていたんだって。


「自己表現の秀でた能力を持つ人を尊敬する。
絵画や文学や写真や。

でも私は凡人だから

大好きなロンのことも
美しい花のことも
描けないし、言葉を紡げないし、写せない。

でも、大丈夫。

私はロンのことを誰よりも深く愛しているし

美しい花を美しく飾るために

これからも努力を続けよう。





ぼくは戸惑う。

いつもグ〜タラグ〜タラしているママが
なんだかキラキラしている。

ぼくは、戸惑う。