■書評 四方田犬彦『白土三平論』 ちくま文庫2013/9/10 | 本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒

■書評 四方田犬彦『白土三平論』 ちくま文庫2013/9/10

白土三平論 (ちくま文庫)/筑摩書房
¥1,050
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2004年に出版されてたモノが文庫化。

白土三平と言えば、1960年代後半から1970年代前半までの間、忍者マンガを主体とした時代物マンガで一世を風靡した漫画家だ。
僕ぐらいの年齢の者は、知らない内にアニメ『風のフジ丸』(原作者)でファーストコンタクトを果たし、その後にアニメ『サスケ』や『カムイ外伝』で、子供にとっては決して甘くないその世界観に衝撃を受けた事だろう。
白土三平の凄さは、それからである。
長じて、代表作である『忍者武芸帳-影丸伝-』『カムイ伝』に触れる事によって、実はその作品が大人の鑑賞に耐える社会的なテーマを持っている事に気がつく。
実際の所、白土三平の作品が1960年代後半の学生運動に与えた影響は計り知れないだろう。
そういう意味で、どうしても良識派で政治そのものとは距離をとった手塚治虫を内容的に初めて越え、階級闘争を描いたマンガ作家であると捕らえても良いかもしれない。

一方で、現状のマンガ文化論というジャンルから考えると、白土三平は無視されていると言っても良い。
現在のマンガ文化は、その表現論を中心に、手塚治虫と大友克洋という二人の天才を軸に語られている様に見える。
その後のマンガに影響を与えた度合いで言えば、もっとこの白土三平や梶原一輝が語られても良い様に思うのだが…
梶原一輝はその不良性故に、そして白土三平はその左翼的な政治臭さ故に敬遠されている様に感じてる。

この四方田犬彦による『白土三平論』は、そういう白土三平のマンガを体系的に捕らえなおした初めての論文だと言っても良い。
かなりの力作(まぁ、ちくま文庫で出版されるのはそもそもかなりの力作ばかりなのだが…)
何となく感じていた白土三平の左翼臭さや政治臭さも含め、この希有な作家の全体像を的確に捕らえていると思う。


日本のマンガやアニメには、日常生活から離れて理想を求める一派と、徹底的に土臭い生活に根ざし現実を見つめ直す一派があるように、僕自身、感じている。
前者の源流が手塚治虫で、後者の源流が白土三平だ。
それは現在、前者が少年ジャンプやマガジンのメジャーなマンガに、後者はスタジオジブリの宮崎駿や高畑勲へと受け継がれていると、僕は思っている。
実際の所、東映動画の『太陽の王子ホルスの大冒険』は白土三平の『カムイ伝』に大きな影響を受けている事は、誰が観ても否定しようがないだろう。(実際の所、1980年代の同人誌FILM1/24の中で、ホルスの作画監督 大塚康男はホルスのキャラクターデザインがどうしてもカムイに似てしまって困ったと語っている。)
もっとも、ジブリのそれは、豊かになってしまったとても牧歌的な生活に基づいた作品で、階級闘争を目指した1960年代の農村を土台とした左翼的な過激さは見る影もないが…
そうした世代闘争の過激さは『進撃の巨人』とかに見られるのだが、残念ながら、こちらは世界が狭くて生活に根ざした実感が決定的に不足している。まるで70年頃の学生運動の様に…