沼ってからというものYouTubeなどで彼のインタビューを見ることが多くなったのですが、デヴィッド・モース氏は演技に対して常に真摯な態度で、非常に頭の良い人物という印象です。
最近、「グリーンマイル」が4Kでリリースされることになり再び注目を浴びたことからデヴィッド・モースがオンラインでYouTuberからインタビューを受けていたのですが、その中でも自分のポリシーをしっかりと持っていて決してファンサービスのために嘘をつかない様子が見て取れ、私にはとても好印象でした。
ただし、撮影の裏話や業界の事情など事実に基づくことは包み隠さず話してくれて、それが逆にインタビュアーを喜ばせていたことも。
その中のいくつかをご紹介します。
(拙いリスニングゆえ、間違っている部分もあると思いますがご容赦ください(>_<))
すべての動画のリンクは貼れませんが、ご本人が話している動画のひとつがこちらです。
・「チョコパイ事件撮影秘話」
グリーンマイルの劇中で強烈な印象を残した「ムーンパイ」のシーンでは、サム・ロックウェル演じるワイルド・ビルが口からムーンパイと呼ばれるチョコレート菓子をブルータルの顔に向かって吐き出す場面がありましたが、SAG(全米俳優協会)の規定で俳優が安全に撮影する規則があるため、モースの顔にかけられるのは口から吐き出したものではなく噴射装置から発射されたものだそう。
しかも、モースはチョコレートにアレルギーを持っていて撮影に使われたのは卵白に色をつけた偽物だったそうで、本人曰く「あれはかなり気持ち悪かった」とのこと(笑)
結果として映画にとっていいシーンになったのでよかったと語っていましたが、大変な撮影だったようです。
・「撮影後に監督から贈られた小道具」
ブルータルといえば、序盤で囚人が到着してポールを呼びに行きトイレをそっとノックする場面や、アーレン・ビターバックの処刑当日に彼の話に耳を傾けるポールに処刑場へ向かう時間を示したりと、懐中時計を手にしているシーンが何度もあります。
時間に厳格なグリーンマイルの看守の象徴とも言えるあの時計は、撮影終了後に監督のフランク・ダラボンから映画で使われた実物がデヴィッド・モースに贈られたそうです。
余談ですが、他の動画では同じくダラボン監督作の「ショーシャンクの空に」に出演していると勘違いされるようで、「あなたの出演していたショーシャンクすごくよかったです!」と言われたそうですが訂正せずに感謝だけ伝えたとのこと(笑)
・「Mr.ジングルスのスタンドイン?」
名演技を見せたネズミのMr.ジングルス。
人間の役者と一緒に映る場面以外はその場にネズミはおらず、レーザーポインターを床に投影して目線を合わせていたとのこと。
これにはインタビュアーも「猫みたいですね!」と笑うとモースも「トム・ハンクスが飛びつかなかったのが不思議だよ」(トムは猫の愛称としてよく使われる)とジョークを飛ばしていました。
・「マイケル・クラーク・ダンカンの巨体」
同じくグリーンマイルでマイケル・クラーク・ダンカン演じるジョン・コーフィが2mを超える巨体であるという設定から、194cmのモースと196cmのダンカンが並ぶシーンでもダンカンが台の上に乗って撮影したとのこと。
また、当時モースは体重95kgほどだったのに比べてダンカンは約158kgにまで筋肉を増量していて、隣に立つと自分と同じ背丈の人間とは思えなかったと話していました。
ちなみにコーフィを連れて刑務所を抜け出すシーンの遠景では全身が映るため、コーフィ以外を背の低い代役が演じたそうです。
その代役についてモースはいささか不服だったようで、「ちょっとガッカリした」と笑っていました。
・「デヴィッド・モース、MCU参戦?」
他作品のオファーやオーディションの裏話を披露した際には「MARVEL映画のオファーもあってエージェントが交渉していた」とこぼし、MARVELファンのYouTuberがガッツポーズをしていましたがそれは実現しなかったそう。
私もMARVEL作品が大好きなので、デヴィッド・モースがMCUに参戦してくれていたらと願ってしまいます。
もしオファーを受けていたらどんな役を演じていたのかとても気になります。
・「ブラッカイマー作品での裏話」
ジェリー・ブラッカイマーの「ザ・ロック」では当初バクスター少佐ではなくただの悪役の一人を演じる予定だったそうですが、台本を読んで自分の出番が最後のページよりだいぶ前に終わってしまうことにガッカリしていたところ、なんとニコラス・ケイジがスタッフに掛け合って脚本が書き直されたとか。
のちの「アルマゲドン」ではビリー・ボブ・ソーントンが演じたダン役のオーディションを受けたとのこと。
しかし結局その役は断り、ジェリー・ブラッカイマー作品のオファーを”蹴った”ことで関係者に気まずい反応をさせてしまったことも明かしました。
彼は「Disappointed(ガッカリした)」という言葉をよく使っていました。必ずしも悪い意味でなくて、「監督(ハート・ロッカーのキャスリン・ビグロウ)が他の俳優と作っていた素晴らしい映画に自分が参加できなくて落ち込んだ」という意味合いでも使っていたと思います。
また他のインタビューでも、映画音楽の素晴らしさについて「俳優が演じているときには流れていないBGMを完成版で聴いて改めて自分のシーンをどう感じたか」と質問されたときには、悪気はないと断った上で「多くの映画音楽は素晴らしいけれど、ある作品では生の楽器じゃなく電子音楽で作られたスコアに正直ガッカリしたことがあった」と率直に答えて変な空気になったり(笑)
でも最後には、「音楽は素晴らしいよ。本当に。でも自分の仕事は演じることだけだから」とプロとして仕事をきっちり分けて考えていることを主張していました。
そんな、すぐにDisappointedしてしまうモースですが最近ではオフ・ブロードウェイでの公演も再開し、プレビューも終えて現在本公演中とのこと。
ニューヨークの報道番組に出演した動画では、衝撃的な内容の演劇を25年以上経った今再演することについて、かねてより再演の話はあったものの昨年も新型コロナウィルスの影響で延期になったことや、性的虐待を扱う作品についてより真剣に受け入れられる社会になったと「#MeToo」のムーブメントを例に挙げて論理的に解説していました。
一時期、舞台での活動が少なくなった理由についても直近のインタビューで答えていました。
90年代後半は舞台でも映画でも多忙を極めており、当時まだ小さかった子どもたちの世話を妻のスーザンがひとりでしていたため、「仕事を少しセーブしてほしい」と頼まれたのだそう。
それを承諾し、舞台の出演を減らして映画やTVドラマなどの撮影にシフトしたらしいです。
そんな愛妻家としての一面もあるのが素敵だと思いました。
オンラインで映画スターのインタビューを配信できるという時代だからこそ、こういった貴重なエピソードを知ることができるのはありがたいことです。
過去のインタビューでは極端にテンションが低い様子や無愛想な受け答えに賛否が分かれているコメントもありましたが、メソッド俳優であるモースはおそらく撮影終了後かなり疲弊してしまうことが多いのではないかと思います。推測ではありますが。
また、メソッド演技法が役者にとって身体的・精神的に負担をかけがちだということも知られています。そのため、撮影を離れた際には専門家による医療的なサポートも必要な場合があります。
同じくメソッドアクターであったヒース・レジャーやロバート・ダウニーJr. などの例でも言及されていますね。
ところで、190cmを超える体格だとやはりそれが特徴のひとつとなると思うのですが、モースは調べるたびに身長の表記がまちまちで、どれが公式の情報なのか謎です。
日本ではフィートからセンチメートルに変換する際に誤差が出るというのもありますが、検索してすぐに出てくる情報では時期によって「193cm」となっていたり「192cm」だったりあいまいで、海外のプロフィールでは6フィート4.5インチ(およそ194cm)とのこと。
他のサイトの説明では「ピーク時が194cm、現在は191cm」となっています。
加齢とともに身長が縮むのは自然なので、「だいたい190cm強」と思っているのが正解なのかもしれません。
ともかく、私もブログの中で「前調べた時と身長違うな…」と思いながら書いていたのでモヤモヤしていました。混乱させてしまった方がいたらすみません。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
たくさんの方が素敵な映画作品と出会えますように。