こんにちは、
猛暑が続いています。くれぐれもご自愛くださいませ。
『きょうの健康「気づきにくい肝臓・胆のう・膵臓癌」』22.10.11.放送
担当医:東京大学大学院 教授 國土典宏医師
◎ 肝臓・胆のう・膵臓はどれもお臍から上の上腹部にある臓器です。
肝臓は成人で重さ1Kg以上にもなる体内で最も大きな臓器です。
肝臓の下の窪みに治まっているなすの様な形をしている臓器が胆のうです。
そして胃の裏側にある十二指腸と接しているのが膵臓です。
この3つの臓器は近くにあるということなんですね?
Q.それぞれの癌に共通点があるのでしょうか?
A.3つとも初期の段階では自覚症状が出にくいという共通点があります。
又、胆のうがんと膵臓癌では共通の治療法もあります。
本シリーズは4回に分けて項目別にお伝えします。
<気づきにくい肝臓・胆のう・膵臓癌>
① 肝臓がん、ウイルスと転移
② 肝臓がんの治療
③ 胆のう・膵臓癌
④ 肝臓・胆のう・膵臓癌のQ&A
「① 肝臓がん、ウイルスと転移」
Q.肝臓がんの特徴についてどんな事がありますか?
A.肝臓がんは2つの大きな特徴があります。
一つは子宮頸がんと同じで原因が明らかな癌です。
肝臓がんの9割が肝炎ウイルスによって発症するといわれています。
特にC型肝炎が7割で一番多く、次がB型肝炎が2割になっています。
Q.もう一つの特徴は?
A.もう一つは他の臓器の癌が転移して発症する場合があります。
<ガンが転移しやすい臓器>
がんで亡くなった方1000人の解剖結果より
肝 50%弱 (ガンになった人の半数が肝臓に転移があった。)
肺 46%
骨 28%
副腎 27%
脳 17%
Q.肝臓がんはウイルスによるものと他から転移してきたものとがあると言うことですね。
A.肝臓に元々出来る癌を「原発性肝がん」といいます。
他の臓器からの転移癌を「転移性肝がん」と呼んでいます。
● 肝臓がどのような臓器なのか検証すると
<肝臓の主な働き>
○ 栄養分の分解・合成・貯蔵
○ 有害物質の分解(アルコールなどの有害物質の分解、解毒作用)
○ 胆汁の合成
肝臓は昔から心臓と並んで重要な臓器だと考えられていました。
私たちが生きて行く為に欠かせない働きをしている肝臓には高い再生能力を持っています。
例え全細胞の70%がダメージを受けても残りの30%で本来の機能を補えるだけの予備能力が備わっています。
肝臓が沈黙の臓器といわれているのはこのためです。
Q.肝臓がんになっても気づきにくいということでしょうか?
A.かなり進行すると黄疸や腹水などの症状が出てきますが、肝臓がんの特異な症状はほとんどないといって差し支えないと思います。
気づいた時には進行していたり大きくなってしまっていたりということも結構あります。
Q.肝炎ウイルスに感染してから肝がんになるまでどのような経過を辿るのでしょうか?
A.B型・C型肝炎の経過
肝炎ウイルスに感染 → 無症状ならば治療の必要なし
↓
C型肝炎に感染 → 治癒、または
慢性肝炎→肝硬変→肝がんに推移する。
↓
B型肝炎に感染 → 劇症肝炎になるかまたは、
慢性肝炎→肝硬変→肝がんに推移する。
C型肝炎では、感染してからゆっくり進行していきますから肝がんになるまで20~30年かかることもあります。
B型肝炎も母子感染の場合は同じような経過を辿る。
Q.慢性肝炎の段階できちんと治療を受ければ肝がんになるリスクを減らすことが出来るということですね。
A.肝炎の治療をしっかりしてウイルスを抑えられると肝がんのリスクが減るというデーターがはっきり出ています。
Q.自分が肝炎ウイルスに感染しているか否か?知らない人も多いですね。
A.<C型肝炎ウイルス感染の可能性が高い人>
◇ 1992年以前に輸血した人 ◇臓器移植した人 ◇大きな手術をした人 ◇薬物常用者・入れ墨 ◇血液凝固因子剤 ◇ボディピアス ◇長期に血液透析 ◇健康診断などで肝機能検査の異常がある人
B型肝炎ウイルスは、母子感染対策が現在は取られているのでほとんど発症しなくなりました。その代わり性交渉による感染が増えてきているといわれています。
● 肝炎ウイルスに感染しているか確かめることが大事ですね。
Q.肝炎の検査はどのようなものがあるのか?
A.<肝臓の検査>
1.肝機能検査 GOT(AST) GPT(ALT)
2.肝炎ウイルス検査 HBs抗原(B型肝炎)HCV抗体(C型肝炎)陽性になると
↓
3.腹部超音波検査
4.腫瘍マーカー AFP PIKA-Ⅱ(原発肝がんのマーカー) 陽性になると
↓
5.造影剤を用いた画像検査 ダイナミックCT、 ダイナミックMRI 肝がんの確定診断を行う
●転移性肝がんについて
Q.肝臓に転移しやすいのは何故ですか?
A.他の臓器に比べて肝臓には沢山の血液が流れてくる。
他の臓器と違うのは,肝動脈(心臓から送られた酸素を運ぶ)、肝静脈の他に、胃や腸などで吸収された栄養を運ぶ「門脈」があって1分間に1㍑の血液が流れ込む。
これは心臓から送り出される血液の四分の一にあたる。むしろ原発性肝がんより転移性肝がんの方が多いということもあります。
Q.原発性肝がんと転移性肝がんの違いは?
A.<原発性と転移性の肝がんの比較>
原発性 項目 転移性
少ない(3個以下) 数 多い(5個以上)
球状(丸い形で) 形 いびつ(形はゴツゴツしている)
血管が多い 血流 少ない(原発性に比べて)
この違いは治療法の違いにも通じてくる。
きちんとした理解をされていない為に謝った治療を受けて癌を進行させてしまったケースもある(これって医者のミス?)
Q.治療法の違いはどんな例か?
A.例、ラジオ波熱凝固療法をする場合
(癌に電極を射して熱で癌を焼いてしまう方法)小型の原発性がんに有効
1.原発性がんは形状が丸い
丸い形状だと全体を均一に焼くことが出来る。
2.転移性癌は形状が凸凹
ゴツゴツしていると凸部分が残ってしまうので再発が多い,あまり適さない。
Q.転移性肝がんの治療法とは?
A.転移したガンは比較的小さく数が少ない。そして肝臓以外に転移がない場合は、肝臓を部分的に切除して治療をします。
転移性癌は、大腸ガンの性質、乳ガンは乳ガンの性質を持ったままなので元々の癌に基づいた抗がん剤の治療をする。
大腸ガンには、3年ほど前から分子標的治療薬が出て来て有効な実績を上げています。
以前は切除できなかった癌も新しい治療法で癌が小さくなって切除できる様になりました。
癌が肝臓に転移して落胆する人も多いのですが,癌治療は日々進歩しているので主治医以外にも肝臓外科専門医を是非訪ねてみて下さいと結んでいます。
(これって専門以外はガン情報を持っている医者が少ないということ?)
<ヒデちゃんのコメント>
患者がもっと賢くならないと癌が進行してしまうのが現在の医療現場であることを知らせています。
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次回「肝臓がんの治療」につづきます。