フリーソウルなる定義が何なのか、なんだか分かるような分からないような・・・。
ただ私的には、ジャズ、ソウル/R&B、ブルーズ、フォークのボーダーレスなもの、
という事だと大雑把解釈しているのだが・・・。
このペニー・グッドウィン唯一のスタジオ・アルバムも、今現在そんなフリーソウル的解釈をなされている中の一枚。

ミルウォーキーのローカル・シンガーという一般的にはアンダーレイテッドな存在なんだろうが、
このペニー・グッドウィンを発掘したのは、やはりというか英国の某著名DJだったようだ。
昔からブルーズ、ノーザンソウルなどの隠れ逸品を見つけ出してくるのは決まって英国人のような気もする。

その嗅覚たるや凄いものがあるといつも関心させられる。

日本人も中々こういったフィールドでは良い仕事をしてきたんじゃないかとは思うが、英国人の感覚とは少し違うようにも。
ただ、この「portrait of jemini」はブートで市場に流れてたようなんだが、それをオフィシャルでリイシューしたのは日本でのこと。

2004年にリイシューされたものが手持ちなんだが、まず、バリバリ合成写真のチープなジャケが目を惹く(笑)。

関係ないけど、このジャケの構図を見て最初に浮かんだのが、トニ・ハーパーの「night mood」。ハーパーの方は正統ジャズ・ヴォーカル系で品のある佇まいが素敵だったけど、グッドウィンの「portrait of jemini」はもっと下世話な感じ。
ただ、グッドウィンのヴォーカルはというと、そういった下世話感はあまりなく、どちらかというと薄っすらと上品さが滲み出たものとなっている。少し掠れ気味の声で淡々としかし丹念に歌う彼女のヴォーカルはかなり魅力的。
リチャード・エバンス、フィル・アップチャーチのカデット組などが参加しているとこなどから、マリーナ・ショウを連想させる面もある。

このアルバムで取りあげているカヴァー曲が中々興味深いものがあり、尚且つ出来も良い。
エスター・フィリップスのヴァージョンで好きな"That's All Right With Me"、
ギル・スコット・ヘロンの"Lady Day & John Coltrane"も過度な表現を抑えたさり気ない疾走感が良い出来だと。

マーヴィン・ゲイのベタな"What's Going On"も在り来たりなものでなく、急速調のジャジーで印象的なイントロ付で途中ゴスペル・トラッドのスウィング・ロウ・スウィート・チャリオット~ハレルヤ・アイ・ラヴ・ユー・ソーへと流れるちょっと面白いアレンジになっている。
そして、その流れはラストのアメイジング・グレイスと繋がり、このアルバムのベーシックなコンセプトがニグロ・スピリチュアルだったと種明かし的なもので終幕となるといった実に味わい深いアルバム。
ただ、そこにはアビ・リンカーンなどのような武闘派ニグロ・スピリチュアルではなく70年代的洗練さを持った、もっとしなやかさを伴ったもの。