ベルギーのギタリストといえば、なんといってもジャンゴ・ラインハルトだが・・・
このルネ・トーマも同じベルギーのジャズ・ギタリスト。

スタイル、知名度ともにも較べるのは無理があるけど、トーマも玄人肌の渋いギタリストだった人。
そのトーマと同じベルギー・ジャズメンのボビー・ジャスパーの双頭クインテット。ジャスパーが早くに亡くなってしまったということもあって短命で終わってしまったコンボの1作。
フロントにトーマとジャスパーのベルギー人2人、リズム隊はアメデオ・トマッシーのピアノを中心としたイタリア・トリオのベルギー×イタリアといった布陣。ベースとタイコが変われば、チェット・ベイカーがイタリア刑務所を出所した後、イタリアRCAへ吹き込んだ「Chet Is Back」と同じ面子ということになる。
オープニングはロリンズ・ナンバーの"Oleo"。ロリンズとは縁あるトーマらしい選曲ではないかと。ここではジャスパー抜きのカルテットでの演奏。トーマのノリノリのギターとトマッシーの荒削りではあるがブロック・コードを駆使した中々の好演が聴けるオープニング。それでもってラスト・ナンバーが"I Remember Sonny"って・・・出来過ぎ(笑)。
2曲目の"Theme For Freddie"はトーマのアルペジオとジャスパーのフルートが絡むムーディなバラード。どうも、フルートとギターのアルペジオというとキングクリムゾンを連想してしまう。短いソロだがトマッシーのソロも美しい。
3曲目、ここでようやくジャスパーのテナーが聴ける。若干スケール感は違うけどジャスパーもロリンズ系のテナー奏者なんで彼のテナーは結構好き。しかし、ここではロリンズとトレーンの中間的なソロを吹いている。曲はお馴染み"Half Nelson"。
4曲目、"But Not For Me"モダン・ジャズでは、いやっちゅうほど耳にするガーシュイン・ナンバー。ここでのジャスパーのテナーはトレーンっぽい・・・やっぱ時節柄なんだろうか。

後半アタマの5曲目はトマッシーの書いたバラード"Hannie's Dream"。トマッシーのピアノはエヴァンスをもって骨っぽくしたようなとこがあって中々良い。
6曲目は"Bernie's Tune"ならぬ"Bernie's Taste"。どうも作者はシャフ・ハディことカーティス・ポーターではないか・・・とのこと。ここではトマッシーが抜けピアノレス・カルテット。トーマとジャスパーのフルートでグルーヴィな雰囲気蔓延。
7曲目、再びスタンダード・ナンバー、"Smoke Gets In Your Eyes"これはトーマのギター・ソロ。こんな生々しい音での”煙が目にしみる”ってもなんかありそでない。
そしてラストの"I Remember Sonny"。ファンキーなハード・バップで幕。

双頭クインテットというよりは、トーマ、ジャスパー、トマッシーの”三頭政治”的でもあるこのコンボ。とくにトマッシーのピアノは良い。エヴァンスとガーランドの中間をいくよう。
派手さはないが、中々良い線いってるコンボ。

あと何枚か聴いてみたかった気がする。

Thomas=Jasper Quintet (Itariana RCA)

1. Oleo
2. Theme For Freddie
3. Half Nelson
4. But Not For Me

5. Hannie's Dream
6. Bernie's Taste
7. Smoke Gets In Your Eyes
8. I Remember Sonny

Rene Thomas (g), Bobby Jaspar (ts,fl),Amedo Tommasi (pf)
Maurizio Majorana (b), Franco Mondini (ds)

Recorded Jan. 1962