昔、マドンナがジョニ・ミッチェルの「Court and Spark」を全曲、宙で歌えるほど大好きだと語っていたが、ワタシのそれに近いのがこのスティーヴィーのコレ。
このレコードがスティーヴィーの中でベストだというつもりはなく単純に好きで一番よく聴いたレコード。実際歌えるか否かは別として、全曲クチずさめるほど好きだということ。全曲歌えそうなレコードならベスト盤でもいいじゃないか?ともいわれそうだが、そういうことではない。シングル盤にはならないだろうな・・・という曲さえクチずさめるスティーヴィーのアルバムってのも、中々ありそうでない。(このアルバムからは3曲もシングルカットされたが)ただ曲がキャッチーなだけということでもモチロンない。ある種の崇高さも兼ね備えた楽曲をここまでポップにしてしまえるのも、この時代のスティーヴィーゆえ。そんな気がする。この頃はレゲエ等もそうだったが、ナスティなものと崇高さが同居する音楽というのが存在していたようにも感じる。
所謂70年代3部作でのピークは「Innervisions」だったかも知れないが、一番好きなアルバムとなると、やはりこのアルバム。参加メンバーの豪華さには目眩しそう。
当時ラジオでも頻繁に耳にした"Heaven Is 10 Zillion Light Years Away"でのポール・アンカのバック・ヴォーカルも、当時はもうポール・アンカといえばオールディーズの人くらいの認識しかなかったが、こんな熱いヴォーカルも聴かせる人なんだとビックリした憶えがある。それから、ミニー・リパートンのバック・ヴォーカル。このアルバムでは何曲かあるが、どれも良い。"Creepin'"それから、取り分け好きな1曲"It Ain't No Use"でのミニー、デニース・ウィリアムス、ラニ・グルーヴスによるコーラスなどは特に堪らん。もちろんジャクソン5の参加したファンク・ナンバー"You Haven't Done Nothin'"でのカッコ良さは言わずもがな。
"Birds of Beauty"でのポルトガル語訳をセルメンがやっていたりとか、"Please Don't Go"のバックコーラスはパースウェイションズだとか・・・そういった楽しみもありますが、しかしそんな付加価値で聴かせるアルバムでないことくらい、ワタシごときが云うまでもないことだろう。