「Songs For A Tailor」と共にジャック・ブルースのアルバムの中で大フェイバリットな通算3作目のソロアルバム「Harmony Row」

最初に言っておくと私はクリームというバンドがそれほど好きではない。

クリームの中でどうしても好きな曲を挙げよと言われたら"Crossroads"より

"As You Said"を選ぶような人間。クラプトンのバックグランドより

ジャック・ブルースのバックグランドに興味を惹かれていた。


このアルバムはジャック・ブルースにクリス・スペディング、ジョン・マーシャルというトリオでの録音。
このメンバーで当然クリームやウエスト,ブルース&レイングのようなパワーロックのわけがなく、実に渋い英国臭い詩情溢れる楽曲を聴かせてくれる。
私はベースプレイヤーとしてのジャック・ブルースというより、

ピート・ブラウンとのコンビ等によるソングライター及びシンガーとしての彼のファンだったので、このアルバムは特にその好きな部分を味わうことができる。
トリオ編成だが、クリス・スペディングの特質からしてギター弾きまくりのギターロック・アルバムでないことは先に書いたとおり。ツボを押さえたいぶし銀のギターを聴かせてくれる。ロカビリアンとしてのスペディングのギターも好きだが、この頃やバタード・オーナメンツでのプレイなどのジャジーな素養を感じさせるギターは中々。
ジョン・マーシャルはジョン・ハイズマンのバカテクさは感じさせないが、ソフト・マシーンでのプレイを引っ張り出すまでもなく並の人ではないが、ここでは過不足のない抑えたプレイ。
ジャック・ブルースはベースはもちろんだが、その他鍵盤類も結構弾いていて、アルバムの印象としてはトリオバンドのアルバムという印象は薄い。
このアルバムは、発表順でいうとヘクストール・スミス、マクラフリン、ハイズマンらが参加したブリティッシュ・ジャズ傑作アルバム「Things We Like」(これも好き)の次になるのだが、録音順で行くと「Songs For A Tailor」の次に当たる。
この頃のジャック・ブルースは活動は本当に充実している。
A面ラストの"Folk Song"はとりわけ美しいナンバー。ジャック・ブルースの楽曲の中でも屈指。
演奏者として以前にコンポーザーとしてのジャック・ブルースの素晴らしさを知らしめる極上の曲でもある。70年前後の英国特有の翳りを感じさせる楽曲。
この時代のジャック・ブルースに惹かれるのを象徴するような1曲。