私がわざわざ彼の事を書くのは、
私にとってそれが一番自然な事だからだ。
勉強は頑張れなかった、運動も頑張れなかった。
学生時代に頑張って何かをやり遂げた記憶は一つもない。
だけど洋服だけはずっと好きで、他に取り柄もなかったから、
高校を卒業して服飾の専門学校に行った。
専門学校を卒業してか34歳までずっとアパレルで働いていた。
一度転職をして別の会社に入ったりもしたけど、
結局、転職しても最初の会社と同じ様にアパレルで販売員をしていたから、
かれこれ変わらず10年くらい洋服の仕事をしていた。
でもその10年、私はずっといやいや働いていた。
もちろん、いい加減な気持ちで働いていたという訳じゃない。
最初はそれなりに目標だってあったし、そこで何者かになりたいと思っていた。
洋服はずっと好きだったけど、
洋服の仕事は、私にとって無意味に感じる作業ばかりだった。
私は、心から洋服が好きだったけど、
アパレルで働いていて、心から楽しいと思った事は一度もなかった。
学生の時同じ。
私は、好きだと思っていた洋服でも頑張れなかったのだ。
そんな私が唯一頑張れた事。
それが「恋愛」だった。
普通だったらとっくに心が折れて頑張れない様な場面でも、
私は余裕で頑張れた。絶対に諦めなかった。
どこで覚えたのか、諦めなければ、絶対に想いは伝わるという謎の自信もあった。
もちろん自信がなくなる日もあった。
流石にもうダメもしれない。自分を疑ってしまう事もあった。
でもだからって諦めるという事はなかった。
諦めるなんて出来なかった。
なぜか?
理由は簡単で、好きだったからだ。
単純に彼の事が好きだったから。
諦める事なんて全然出来なかった。
私はずっと、好きな事を仕事にしたいと思い続けていた。
遊ぶ事なんてそっちのけで、仕事に熱中している人が羨ましくて仕方がなかった。
そんな風に熱中出来る何かを、ずっと探していた。
頑張らなくても、頑張れる事。
だけど、そんなのなかなか見つからない。
見つけたと思っても、
どれも無理矢理に、自分を奮い立たせて頑張らなければいけなかった。
だからどんなに意気込んだって長続きしなかった。
好きだけど、ただ好きなだけ。
追いかけて、自分の何かを犠牲にしてもいいとは思えない。
気がつけば、そんな中途半端な「好き」が私の周りに溢れてた。
私が欲しかったのは、そんなんじゃない。
その事が頭から離れない、その事しか考えられなくなる、
他のことは手につかない、食べるのも眠るのも忘れてしまう。
時間はいくらあっても足りない。
そんな時間を与えてくれる何かだった。
それがなんと、私にとっては彼との恋愛だったのだ。
いくら探しても見つからなかったのは、
もう既に見つかっていたからなのだ。
でも、頑張れるのが恋愛だけなんて世間が許すだろうか?
世間に誇れるカッコイイ仕事がしたいと思っていた私は一瞬躊躇した。
だけど既に私自身が、
そんな自分をカッコイイと思い始めていたんだから、もう後には引けない。
そして私は、彼を思う気持ちを全て文章に変えて、
それを仕事にしようと決めた。
私は今でも彼が好きだし、彼がこれを読む可能性もあるんだけど、
私と彼の未来より、私がこれを仕事に出来るかどうかの方が重要だと思っている。
私は書きたい事を書く。
例え、そのせいでこの恋が本格的に終わってしまったとしても、
もう全然構わない。
その方がクールだと思うから。
きっとその時、私は私をちゃんと好きになれると思うから。