あれはもう7年も前の話し。
私が好きだった人には彼女が居た。
彼女が居る人を好きになったのは初めてだったけど、
私はなんの迷いもなく彼を好きになってしまった。
彼女がいる事は最初から知っていた。
それでも、なんの迷いもなく彼の近くに居たいと思った。
彼は、彼女がいる様には思えなかった。
遠距離だったからかもしれないし、
例えそうじゃなくても彼は変わらなかったのか、
それは分からないけど、とにかく彼は隙だらけだった。
彼は彼女が居る事を隠さなかったし、彼女以外にも一緒に居る女の人が居た。
なのに、なぜか私は浮気相手の1人になろうとした。
今思えば、なんでそんな事思ったのか謎だけど、
そうする事になんの迷いもなかった。
ただ、恋をしていたのだ。
とにかにく彼の近くに居たいと思った。
他の事はとりあえずどうでも良かったし、罪の意識はなかった。
隙だらけの彼だったから、浮気相手の1人になるのは簡単だった。
浮気相手とは言っても私の方は本気だったので、
精神的には簡単じゃなかったけど、浮気相手になるまでに、
そんなに時間はかからなかったと思う。
彼のあだ名しか知らず、連絡先も知らなかった頃。
私は彼の住む部屋に行く事を夢に見ていた。
それは私にとって、とても幸せな事だと思っていた。
実際、それはやっぱり幸せな事だった。
約束の日には、朝からソワソワした。
何か予定が崩れてしまう様な事が起きやしないか、不安だった。
電車はちゃんと着くだろうか?人身事故が起きたらどうしよう・・・
今地震が起きたら歩いて帰れるのか?
私はその頃地元から2時間かけて通勤していたから、
もしも東京に居る間に地震が起きたら、今夜彼に会えなくなってしまう。
本気でそんな事を考えていた。
自分では正常だと思っていたけど、
当時の私はきっと異常だったと思う。
その証拠に、自分は浮気相手なのにも関わらず、
今夜彼に会える私は世界一幸せだと思っていた。
どんなに幸せそうに笑うあの子よりも。
でも幸せな夜は必ず終わり、当たり前の様に朝がくる。
私は当初、重いウザい女と思われるのが怖くてお昼頃には帰る事にしていた。
彼がまだ寝ている間に支度をして、部屋を出る。
2階建の小さなアパートの階段を降りる時、私は泣いていた。
毎回、ボロボロ泣いていた。
その後、何年かして彼は彼女と別れ、
私は念願だった彼の彼女になり、5年近く付き合った後別れた。
今では、彼の住んでいたアパートは取り壊され、
後にはオシャレなメゾネットが建ったし、彼は遠い故郷に帰って行った。
あの時あのアパートの階段を降りる私は、なぜ泣いていたのだろう?
次に会った時に彼が「お昼ご飯一緒に食べよう」
って言う事を知らなかったし、私が浮気相手じゃなくて、彼氏に浮気される彼女になる事だって知らなかった。
ただ毎回、会えるのはこれが最後かもしれないと思っていた。
今でもあのアパートで彼が眠っている気がする。
私はソワソワしながら電車に乗って、彼の元へ無事に辿り着くことを祈ってる気がする。
世界一幸せそうな顔をして。