第71弾『スパイの妻』
《ベネチア国際映画祭》銀獅子賞(監督賞)受賞
監督:黒沢清
出演:蒼井優、高橋一生、東出昌大
~男と女で愛の定義は異なるか~
2003年ベネチア国際映画祭で北野武監督が『座頭市』で銀獅子賞を獲ってはや17年。時の進むのは速いものである。どうしてもパワーのある映画が獲る傾向にある賞レースだが、この映画での受賞は純粋に静かなる日本映画のメッセージが外国に伝わった証となる。そう言えば1997年の北野武作品『HANA-BI』(金獅子賞)も『座頭市』同様にパワー全開の映画。日本の戦争映画と言うと「日本はこんな風に戦争頑張った」映画が作れない以上、どうしても「被害者としての戦争映画」になりがちなのだが、これは日本の戦争犯罪に一歩踏み込んだ内容。タイトルに「スパイ」という単語があるがこれは高橋一生演じる福原優作がスパイとして行動しているわけではなく、単なる貿易会社社長である。彼がたまたま満州で目にした日本軍の暗部を世界に公開しようとした上手くいけばヒーロー(当然当時の日本からすると国賊)となりえる人物であり、蒼井優演じる聡子はどんなことがあっても彼と一緒にいることを幸せとする普通の妻である。しかし夫の正義心は彼女の幸せを壊してでも国家の罪を暴くことを優先しようとする。そんな中でも正義と幸せの両方を掴もうとあるアイデアを決行しようとするのだが…。この映画はハッピーエンドなのか、アンハッピーエンドなのか、分からないまま終了する。優作の選択が正しかったのかどうかは分からないし、その決心自体が「愛」なのか、聡子に対する「裏切り」なのか、男と女の立場で考えが変わるのではないだろうか。
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21. 赤い闇/スターリンの冷たい大地で
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23. 1917/命をかけた伝令
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26. スペシャルズ!~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~
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34. シチリアーノ/裏切りの美学
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40. 人数の町
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46. フォードVSフェラーリ
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51. 精神0
52. 海辺の映画館/キネマの玉手箱
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