ごぶさたです。いよいよワールドカップも始まりましたが、いかがお過ごしでしょうか。早速寝不足エブリデイな方もいらっしゃるかと思います。そんな・・・おつむ朦朧な日々の中で、見逃しのない様、展覧会会期末アラームブログ「一致する不一致」が展覧会の会期末をお知らせします(とうとう開き直ったw)。
 
国立西洋美術館(上野公園)       ~6月15日(日)
 
ということで、西美の「ジャック・カロ―リアリズムと奇想の劇場」と併催の平野啓一郎監修「非日常からの呼び声」が今週末6/15(日)までとなりました。コレクション展とはいえ、ともに見ごたえありの企画で、「非日常から~」の方が油彩も含む個性派作品を集めた名品展ということで、全作品版画のカロ展の地味さ(^^;を補って、トータルでやや濃い味の(笑)、満足感のある特別展になっていると思います。すので、お見逃しなく。
・・・で、ここでは特に、カロ展を中心に。

17世紀、エッチングの技法に新境地を開いた版画家ジャック・カロ(1592-1635)。西美コレクションより、年代と主題というふたつの切り口から初期~晩年に至るカロの活動の軌跡をたどりつつ、リアリズムと奇想が共演するその版画世界を紹介し、あわせて当時の芸術的潮流や社会の諸相に対する作者の姿勢を探る、展覧会。
ま、コレクション展ということでお祭り感が全くないんですが(^^; きっちり図録も作ってカロの創作の全体像を見せる展覧会になってます。展示構成は、
 
I. ローマ、そしてフィレンツェへ
II. メディチ家の版画家
III. アウトサイダーたち
IV. ロレーヌの宮廷
V. 宗教
VI. 戦争
VII. 風景
 
前半Ⅰ~Ⅲが大まかな活動年代別、後半Ⅳ~Ⅶがテーマ別の展示。ま、前半の方も活動地ごとに傾向があるから、全体にテーマ別展示っぽい印象もあり。
 
ジャック・カロというと、一番有名なのはおそらく「戦争の惨禍」連作(本展では「戦争の悲惨」)で、中でも「絞首刑」が美術史(残酷表現まわりとか)だけでなく、西洋史の方でも三十年戦争の惨状の記録として引用される事が多くて(むしろそっちでよく見る)、まあ・・・殺伐とした代表作というか(^^;
イメージ 2
連作「戦争の悲惨」から「絞首刑」
で、それ以外はほとんど知らなかったので、ジャック・カロって一体どんなもんか、というのがそもそもの所だったんですが。
個人的には・・・Ⅲ.「アウトサイダーたち」とⅣ.「ロレーヌの宮廷」が面白い。
 
Ⅲ「アウトサイダーたち」
  連作「小さな道化達」から表題紙
ここらへんは現代的倫理感からすると、かなり際どいところなんですが(^^; グロテスクでもありつつ・・・微妙に可愛かったりするところは、カリカチュアの原型みたいにも言われるレオナルド・ダ・ヴィンチの素描や、ボスの風刺的な作品にあらわれる人達ともちょっと違う感じ。
 イメージ 3 連作「小さな道化達」から「ヴァイオリンを弾く道化」
これなんか特に。ややキャラ化してますよね。楽器の持ち方が逆なのは版画だからですね(でも高級品だったら反転するのも計算して下書きしますよね・・・)。
 
Ⅳ「ロレーヌの宮廷」
  連作「槍試合」から「徒歩によるロレーヌ公の入場」
こちらは宮廷祝祭。けっこうバロック。というか、とってもバロック。宮廷の大イベントの際、各種催し物の様子やイベントのための凱旋門などの仮設建築を版画にして出版するというのは、16世紀から(15世紀から?)あるわけですが、やっぱりバロックに入ってからが本番というイメージで、祝祭的、かつ劇場的というところが時代の空気そのものな感じ。
 
  連作「槍試合」から「ド・ヴロンクール殿、ティヨン殿、マリモン殿の入場」
カロの作品がちょっと変わっているのは、宮廷祝祭の記録であるはずなのに、現実の山車を写生するのではなく、それが表現している神話なり歴史なりのファンタジックな情景として描いていること。山車なのに車輪が付いてない(笑)。 ・・・≪イメージ映像です≫ってヤツですかね。
  連作「槍試合」から「ド・クーヴォンジュ殿、ド・シャラブル殿の入場」
「入場」、フランス・バロックのオペラやバレ作品でもおなじみの「アントレ」ですね。歌舞伎の花道もそうですけど、前近代の演劇世界において「登場」がいかに重要であるか、むしろ「登場」こそが「見世物」の本体って感じがする。
 
ん、しかしまあ、地味ですね(笑)。それとまあ、せっかく沢山持ってるんだから、もっと出せばいいのに、という気はしましたです。ジャック・カロ単独の展覧会なんて、そう頻繁にやるわけじゃないんだし。
 
 
 
「非日常からの呼び声 平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品」
で・・・併催展の方ですけど、美術に非常に造詣の深い作家・平野啓一郎の監修で、西美コレクションから「非日常の光景あるいは非日常の世界へと誘う光景を描いた作品」というコンセプトによる、時代・スタイル・フォーマット横断的なセレクションが面白い。
ただ、カロ展の方がそんな感じなんで、こっちはカラー作品で選ぶとか、かぶり要素のないセレクションにして欲しかったなと思わないでもなく。
  デューラー「メレンコリアI」
いくらカロが優秀な作家とはいっても、連続で見る流れにまた版画、それもデューラー、しかも「メレンコリアI」「騎士と死と悪魔」とか出してるのは反則じゃないか(笑)。さらにクラーナハ「聖アントニウスの誘惑」だのマックス・クリンガー「手袋」だのロドルフ・ブレダン「よきサマリア人」だのと、きっついのばっかり(笑)並んでれば、前半の印象は薄まっちゃいますよね・・・。
ブレダン「よきサマリア人」  
 
ほか、油彩はディルク・バウツあたりからティツィアーノ工房からクロード・ロランからドラクロワからハンマースホイあたりまで、水彩はモローがあって、ロダンのブロンズがあって、とバラエティあり、、かつやや濃い味作品が揃って楽しめます。
 
で・・・平野さんの見識はそれはそれとして、コレクションというのは入手の労苦や金のギリギリの工面があって(たとえどんな権力者、大富豪でも、ですね)一つの世界観を形成するもので、国立美術館の所蔵品からのお好みセレクションというのは、そういうのと比べてなんか軽い感じ、は、ある。
もちろん作品の質は、保障付きなわけですが。
 
 イメージ 4 フェリシアン・ロップス「ポルノクラテスあるいは豚を連れた女」
そんな中、このロップス作品がなかなかの近代的エロ表現でよかった。これは知らなかったです。絵葉書あったら買うところだったんですが、無くて残念。
 
 
ともあれ、「カロ」「非日常」ともに・・・ええ、そりゃもう世間様のサンバのリズムとはかけ離れた時間が流れておりますですよ(笑)。深夜~早朝の興奮を落ち着かせに、あるいは世のバカ騒ぎが鬱陶しいという方、明日6/15までなんですが(^^; 上野のお山まで、いかが。