結局ひと月たってしまった(苦笑)。えーと?何の話でしたっけ(爆)?
なんか・・・箱にコンパイルされた5タイトル・6枚分の曲目書いたら意外と文字数食って、各タイトルをざくっと紹介したところで終わっちゃったんですよね。リリース情報としては済んでるから後は書くだけ蛇足ですが、無駄話をしないとこのブログの趣旨に反するので(笑)・・・。
 
【CD1】 音楽の戯れ―ビーバー、シュメルツァー、ヴァルターの作品
 【CD2】 ビーバー:響きの食卓 - 描写的なソナタ / 【CD3】 ビーバー:ザルツブルク大聖堂ミサ曲
【CD4】 食卓のための音楽―ビーバー、ヴァレンティーニ、シュメルツァー、ペーツェルの作品
【CD5&6】 ビーバー:技巧的で楽しい合奏音楽 - 調律のさまざまな様式
(演奏)ムジカ・アンティクヮ・ケルン/ラインハルト・ゲーベル
 
 
Biber: Battalia (CD1)
今回収録された中で、個人的に特別懐かしいのは1.「SCHERZI MUSICALI」収録のビーバー作曲「バッタリア(戦い)」。これ、大昔に本番やったことがあるんですよ(笑)。なんといっても強烈なのが2楽章アレグロ「ありとあらゆるユーモアを持った放埓な仲間」で、全パートが完全にてんでんばらばらに動き、ハモりもリズムも全くないメチャクチャ音楽。全員が譜面通り弾くと、結果的に全員同時に終わることが出来る(笑)。一度落ちたら二度と戻れない恐ろしい楽章でした(^^;
 
そのほか、4曲目ではチェロのネックに紙を巻いて弾いてビリつかせ小太鼓を模したり(いうなれば「プリペアード・チェロ」ですな(笑)。その上でヴァイオリン・ソロがピッコロの真似で、軍楽隊の行進を表現)、更には5曲では今で云うバルトーク・ピチカートで銃撃戦を描写(大笑)したりと、「冗談音楽」では済まされない前衛的実験性 が炸裂。ちなみに終曲がアダージョ「傷ついた銃士たちのラメント」で、じっさい冗談音楽とばかりも言えない。

ちなみにこの曲(&「農民の教会行き」)のモダン譜(Doblinger)の校訂者がかのアーノンクール様で、CDにもわざわざクレジットされてます^^
ジャック・カロ: 連作「戦争の悲惨」から「絞首刑」
 
で、解説によると、この「バッタリア」をはじめ、「SCHERZI MUSICALI」収録曲のうちヴァルターの1曲を除いて全てモラヴィアのオルミュッツ司教領のクレムジアー(クロムニェジーシュ)の宮廷音楽だった、というのが面白いところで、ここはこの時期、かなりの音楽パトロンだったようで。
 
クロムニェジーシュ・・・なんか聞き覚えあると思ったら、そうそう、世界遺産の宮殿&庭園があるんでした。あれはまさにバロック宮殿&庭園だし、つまり音楽に限らずバロック期の凄い芸術パトロンだったって事ですか・・・。
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クロムニェジーシュ庭園(世界遺産)
というか、それってリヒテンシュタイン家なんですね。一昨年の国立新美の展覧会の話だとリヒテンシュタインはハプスブルクの重臣みたいなスタンスで、ハプスブルク=ウィーン文化の一部みたいな感じでしたね。そう思うとこのCDの奇怪な曲たち、フェンシングの描写あり、農民の聖歌あり、酔っ払いあり戦争あり、バグパイプあり、カッコウの鳴き声あり、なんかリヒテンシュタインの「音のヴンダーカマー」だなあ。ヴンダーカマー(驚異の部屋)って、リヒテンシュタインとかハプスブルクとかの得意の世界ですよね。
 
あと「オルミュッツ司教」もどこかで聞き覚えがあると思ったら、ベートーヴェンのパトロンだった「ルドルフ大公」、あの方がオルミュッツ大司教なのか(例の「大公トリオ」の)。音楽パトロネージの伝統ですかね。ま、フェンシングだの酔っ払いだのの曲集めてた人とは大分趣味が違うわけですが(笑)。
・・・あ、ベートーヴェンも「戦争交響曲」書いてたw!
ここで私の名前を出しますか・・・  
 
Biber: Sonata Representativa (CD2)
こちらはDisc2。アルバム表題曲「Mensa Sonora」と共にこちらもやはりクロムニェジーシュのコレクションの1曲らしい。ゲーベルのソロ、冴えてます。
この「描写的なソナタ」は、ビーバー作品としては「ロザリオ」と同様よく知られる曲(というか単曲なので、大部の「ロザリオ」よりいくぶん頻繁に演奏されてると思う)で、ヴァイオリン・ソロがナイチンゲール、カッコウ、カエル、雌鶏、雄鶏、うずら、猫、マスケット銃士の行進などを描く。「マスケット~」は「バッタリア」のそれとそっくり。しかし動物揃えの中で異質ですよね。ソロのテクニックを見せられるし、バッタリアで好評だったんでしょうか。

ナイチンゲールやカッコウはクラシック音楽の永遠の定番という感じ。雄鶏と雌鶏も、前例としてはC.ファリーナの「Capriccio Stravagante」があり・・・はるか後世にはサン=サーンスが居る(笑)。ファリーナの「ネコ」は最後逃げ出すが、こちらのネコは逃げ出さない(笑)。
あとカエル。カエル笑えます。「ゲロゲロ」と音を動かすのではなく、不協和音の重音だけで「ゲロゲロ」を表現してるのが素晴らしい。
ちなみにこの曲の楽譜もDoblingerから「バッタリア」と一緒にアーノンクール版で出てるんですが、この録音ではDTÖ版を使用。
 
 
で、あの・・・「笑えます」とか言っておいてなんなんですが、果たしてこれらが笑うことを目指しているかどうか、ですね。以前のアーノンクールの「バロック期の標題音楽集」の原題も"komödiantische Musik"で、「喜劇的音楽」みたいなタイトルだったり、今回のこれはScherzi Musicaliで「音楽の戯れ」だったりして喜劇性を強調したタイトルづけになってるんですが・・・個人的には、これらは「遊び」ではあっても「お笑い」ではないような気がしてまして。
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(左)作者不詳(フィレンツェ)「貴石象嵌のテーブルトップ」     (右) 同 (部分)        
 
その「リヒテンシュタイン」展の時、イタリアの「貴石細工」って出てましたよね。単にカラフルな石でパズル絵を作るだけでなく、自然石一つ一つの石理(いしめ)を絵の細かいデッサンに当てはめることで、絵のニュアンスになっているところがある種の奇跡(駄洒落^^;)・驚異として成立しているわけなんですが・・・ああいう感じ?
あるいは・・・もちろんジャケットになってるアルチンボルドとか。大理石が絵画になる、というか鳥や花になる、果実や花や魚が人間になる、そんな感じで、カッコウや猫がソナタになる、戦争が音楽になる、感じ。
 →「一致する不一致」ですよ。
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BOXのジャケットにも使われた アルチンボルド:「庭師」。 上下逆さにすると・・・お野菜。
 
バッハの無伴奏が、一人で3声のフーガ弾いてる!ってのも一人で大勢を装うある種のギミックなわけで、ま、そちらはギミックというには仕掛けが凄すぎるんですけど、一方ここらへんの曲たちの場合、「装う」という以上に「変身(メタモルフォーズ)」のなりきり感が強い分、よりまがい物くさい、子供だましな印象が強くなるっていうのはあります。ただ、いずれにしても笑いを誘う面白音楽というよりは、これもなにかしらメラヴィリア(驚異)を目指したもののような気がして・・・。
 
 
・・・以上、無駄話でした(苦笑)。だからどう、という結論は、ない(笑)。
MAKの演奏というのは非常にシャープで時にモノクロームな印象を与えることもあるし、多少田舎っぽく演奏していても「ローカルテイスト」はほとんど感じないんですけど、チェコはクロムニェジーシュの宮廷音楽、ザルツブルクのミサ曲・・・と並ぶといかにも中欧バロックワールド。もちろん中欧は中欧のハプスブルク的なソフィスティケーションがあって、別に田舎の音楽というわけではないわけですが。どこか歪なセンスが独特・・・。
 
しかしクロムニェジーシュ宮殿、行ってみたいなあ・・・絵画コレクションも素晴らしいみたいですよ。