身を低くしてへりくだり
むか~し、まだ20代の頃の話です。ロングタイムアゴー。
とある京都のギャラリーで、2人展をした時のお客さんのことが、忘れられなくて今も時々思い出すのですが、展示が始まって何日か経った金曜日のことでした。
そのお客さんは一人でやってきました。
50代のおじさん。微妙にインテリジェンスがある風。
じゃあ、私の絵にも興味持ってくれるかな?
今、私の絵、見てるし・・・
と、甘い考えを持って話しかけた横山。
絵を見ていた彼は振り返り、「○○さん、来るの?」と聞く。
「いえ、今日はまだですが、お知合いですか?」
「これ、あんたが描いたの?」
「そうです」
「あんた、何年描いてんの?」
「え~え~と。10年くらい?」
「○○さんとなんで(展示)やってんの?」
「え~え~と。気が合うというか、方向性が一緒っていうか」
「一緒って、○○さんはいいけど、あんたの絵!」
と、なんだかすっごい怒ってる。
「女性の局所を薔薇の花で隠すなんて稚拙で凡庸すぎるやろ!」
「え?ギリギリ隠してないですけど・・」
彼は私の絵の気に入らないところをかなり貶しつつ、○○さんを褒めながら
「こっちの絵は・・・」
と、移動し、私はあんまり話したくなくなってきたけどここでついていかなかったら彼も立つ瀬がないだろうとついて行っては1点1点の絵のダメ出しを受けたのです。
あーあ、誰か他にお客さん来てくれたら離れられるのにな!
と、思いつつ、長すぎるダメ出しにほとんど生返事で聞いていないスリープモードに入って、
早く終わらないかな・・・
と、勉強が嫌いな子供のように思い始めたとき、彼が言ったのです。
「1枚買うから、頑張りなさい」
えっ。
えー!
だから、そのお客さんが忘れられないのです。
「褒めて、気に入って、買ってくれる」
「褒めて、気に入るけど買ってくれない」
「気に入らないから買わない」
というのはあるんですけど、さんざんに言っておいて買ってくれるなんてことありませんから。
ごめん、ちゃんと話全部聞いてませんでした。
神は、身を低くしてへりくだり、自分の間違いを認めた者にだけ祝福を与えたもうと言いますが、それです。
それっきり、彼は展示に来ることは無かったけど、忘れられないお客様です。