人工呼吸器が外れる
翌日は雨でレインコートと傘を差して自転車で出かけた。
5月の雨は風を伴ってなかなか運転しにくい。
以前使っていた透明な傘はちょっと風にあおられるとひっくりかえって骨が折れてしまったので普通の傘を差す。傘を傾けると前が見えない。差す角度が難しい。
雨の中を縫って金平糖の香りが鼻をくすぐった。
今日のような日は香りを吸い込むような余裕は無い。
だいぶ濡れて病院に着き、自転車を置いてICUへ行く。
子の隣に居ても何も出来ることは無く、ただ泣いているのを見ているだけ。子のそばに血が付いたようなガーゼが置き忘れられている。鼻には鼻管と酸素、口には呼吸器、お腹にはドレーン、胸には心拍を測る電子線、脚の付け根には輸血や点滴、足指には酸素を測る電子線、沢山の管が配備されているけれど、
「輸血や点滴は数が減ってきています。自分で息が出来るようになったら人工呼吸器が外れます。明日の午前中にその処置があります。息がまだ出来なかったらもう少し呼吸器を着けることになります」
と看護士さんが説明した。
帰り道、帰ってから眠るまでも人工呼吸器が順調に外せることを願った。
翌日、病院に行こうとしていると電話があって、人工呼吸器が外れたとのことだった。ICUに行くことをドキドキしていたけど先に知らせが来て安心した。
会いに行くと呼吸器は外れていたが、声はまだ出ない子が泣いていた。かわいそうなのは一緒だけれど、私はこの様子に少し慣れてきたらしく、気持ちは落ち着いていた。もうすぐまたNICUに戻れる。