三人暮らしまで 陣痛編 | 美しすぎる切り絵教室 横山夢(よこやまろまん)

三人暮らしまで 陣痛編

真夜中に摺り足でたどり着いた産科の受付には誰もおらずで、聞こえてくる分娩中らしき叫び声にびびりながらしばらく佇んでから、店主が、


「あの~すみませ~ん・・・」


と声を出してみたらしばらくして看護士らしい女の人が来てくれた。

電話で破水したことを連絡しておいた者だとつげると、破水かどうか診てみましょう、ということで受付横の緊急処置室に通され、内診台に乗っけられた。


破水かどうかって・・・この間ずっとお湯が出てるけど・・・。


台に乗ってすぐ、


「破水です」


と診断され、オムツみたようなものを当てておくようにと渡された。

部屋の隅にあるソファベッドに横になり、陣痛が始まるかどうか様子を見ることになった。破水しても陣痛が始まるかどうかはわからないらしい。抗生物質の点滴を打たれた時、一刺し目に失敗されてそこが内出血して固まってしまった。

微妙な子宮収縮の痛みが10分くらいの感覚で来るように感じてきたのでそのまま入院ということになり、車で送ってくれた店主は帰宅。


その後は陣痛室のベッドで分娩を待機することになる。超音波で胎児の状況をモニターする装置をおなかに貼られる。


「陣痛」ってドラマでは女優が「う~んう~ん」というようなちょっと大変そうな演技をしている「おなか痛い」ような状況だと思っていたし、昼間に受けたマザーズクラスでは、


「人によりますが、ちょっと下痢でおなか痛いかなというくらいの陣痛の方もいますので、わからないときは病院に電話して」


と、いうくらいのもんだと聞いていたのでそんなに大変な痛みが来るとは想像していなかった。

しかし、時が経つにつれ猛烈な痛みが10分→5分で押し寄せるようになり、眠っていても痛みで覚醒するようになった。そしてどうやら私の場合、ベッドに横になると余計に痛みが増すらしく、椅子に背筋を伸ばして座る方がいくらかマシなので、眠気に頭をガクッとしながら痛みに起きてはまた眠気にガクッとなりながら、陣痛が押し寄せたら


「フゥゥ~」


と声にだしながら息を吐き痛みに耐えるというスタイルになった。この、声が必至の叫び声になってしまい、陣痛室の外まで聞こえているほどなので、今から考えると恥ずかしい。でも!もう声をあげないとやり過ごせないほどの痛み!ほんとは「ぎゃあぁ~」と叫びたいところ・・・。

産婦人科の医師が様子を診に来た時にいつまでこの陣痛は続くのかという問いには、


「だいたい陣痛は初産で平均10時間だから」


まだ10時間ほど耐えろと・・・。5分間隔でくるから10時間で一体何回陣痛が来るんだろ。意識を失いたい。麻酔かなんかで眠ったりできないのかとも聞いてみたけど


「赤ちゃんはもっと今頑張ってますよ!」


と産科にとっては日常茶飯事、さらっと医師は分娩室を出て行った・・。

朝がくると病院食の朝食が運ばれてきた。食べられるわけがない。しかし分娩には体力が勝負だから周囲が食べろ食べろと言う。・・・無理でしょう・・。


再び病院を訪れた店主がパックのゼリーやアイスクリームを買ってきてくれたのでそれをなんとか飲む。

入院してから10時間が経った。胎児は参道に降りて来ていないし、子宮口は開いておらず、分娩が始まる状態ではなくまだまだ様子を観ることになる。

10時間耐えたけど・・・。まだ続くの・・・。眠っていないし陣痛が来るたびに叫んでいたので疲れてしまい、声も出さなくなった。


よく、


「生まれたことを後悔するぞ!」


という台詞が登場しますが・・映画やドラマに。それはこれレベルの痛みだろうかと思いました。



女・・・女って・・・なんでこんな目に合うんだろ。



昼には食べられもしない昼食が運ばれ、そしてまた夜が来たようで夕食が運ばれてきた。

一緒にいてくれた店主も疲れてくたくた。分娩はまだまだ始まる気配がないそうだ。明日は展覧会の初日なので店主は帰宅することにした。ひとり陣痛をやり過ごす。この頃にはもう起きてるのか寝てるのかわからずぼんやりしてきていた。


看護士の人に、「切って(帝王切開で)出してもらえないのか」と聞いてみた。もう耐えられない・・・。このあとさらに分娩が来るなんて。



医師がやってきて、帝王切開のリスクを言い聞かせられる。とにかく普通に分娩しなさいということ。赤ちゃんは頑張ってるって・・・。もう一息頑張って出て来ておくれ~。


医師も看護士も分娩室を去り、諦めて陣痛の痛みに身を任せながら支配しようとしていたら、なにやらおなかに貼ってある装置のモニターが鳴り始めて、去って行った看護士が急いで戻ってきて私の口にホースの付いた吸入器みたいなものを当てた。


「これを当てて吸っていてください」


そしてなにやら何人も看護士が来たり医師が来たり内診したりとバタバタし・・・。私は点滴と超音波モニターの他に心電図のモニターを新たに付けられた。


少し時間が過ぎたらしい頃に産婦人科のかかりつけ医師が、別のオペが終わったらしく様子を観に来た。またモニターが鳴り始め、看護士や医師が来て内診をする。


「だんなさんはいつ帰ったの?」


と聞かれ、ついさっきと答える。すぐ呼ぶように言われた。


「手術の同意書にサインしていただかないと手術ができない。何分くらいで戻って来られる?」



なにやら。


羊水が出て行ってるのに子宮口が開いておらず分娩できずにいるところに陣痛と言う子宮収縮が来るために胎児が圧迫されて酸素が供給できなくなってきているそうで。


「緊急帝王切開で出さないと胎児が危険」


ということに。









陣痛編でした。


次回は胎児摘出オペ編です。