
料理の腕は超一流ながら他人とのコミュニケーションが上手く図れないシェフの
グレゴア(ヨーゼフ・オステンドルフ)。
そんな彼が平凡な主婦・エデン(シャルロット・ロシュ)に恋をした。
口下手な彼に出来るのはおいしい料理を作って彼女を満足させることだけ。
彼の恋心は店の看板メニュー、“官能料理”ことエロチック・キュイジーヌにも影響。
その味わいにますます磨きがかかり、食べる者みなを魅了するのだが…
この映画はドイツだけど、前戲の料理は“フレンチ”と聞いたことを思い出した。
フレンチも、イタリアンも基本的に男女でいただく
食事という概念の上に成り立っている。
フォーマルに、男性は騎士道に基づいて紳士的に、
女性も淑女という気持ちと身なりで立ち居振る舞う。
そう。
食べることはエロチックなのだ。
なぜなら口を使うからだ。
『味わう』ということは、五感をフル活用して行うことだ。
その上、味わう為にマナーとエチケットが随所に散りばめられ、
不自由なことで、余計にエロッチックに拍車がかかる。
手食ができないからだ。
フィンガーボールが用意されている特別メニューを覗けば、
手食が許されているのはパンのみ。
そして、そのクロスがダマスク織であったのなら、
こぼさない、汚さないゲストとしての、もの言わぬ緊張がつく。
そんな焦らされた前戲が、どれほどの効果をもたらすか、
この映画を見ればわかる。