摘まれれば、粟立つのです
噛まれれば、声が出るのです

突っ込まれれば、溢れるのです
それが口なら、舌が動くのです


オートマチック。


身体の役割は身体に任せて
そこに感傷を派生させないで


不自然な態勢で
不自然な言葉で
不自然な目線で
不自然なふしだら


「自分の持ち物には、きちんと名前を書きましょう」

失くさないように


柔らかい管を両手に掴む
「ごっこ遊び」は終わりにしたいの

きっと幸せなのね
目が潤んでいるから


身体がオートマチックなら
涙は不随意運動

意識の果てで限りなき戯れ


まったく心と身体のどちらが
より自在だというのでしょう


畳み掛けられれば、飛ぶのです



細切れの睡眠は、日に日に脳を衰弱せしめ
夢の合間に見る現実は、みるみる悪意を増殖させる


衆人監視のセックスや
熔けた蝋の花びらや


煙を吐けない指輪をせめて
連れてってくれれば良かったのに

倒したマグカップから珈琲が零れて
畳に染みを作れば良かったのに

嘘を吐けない口ならせめて
いま在る身体を使って欲しかったのに


低音の振動は髪を揺らし
高音の尖端は鼓膜を破る


背を向ける部屋を出る家を出る煙草を吸う
来ない待たない帰る眠る朝が来る

予定調和のどれかひとつを
壊してしまえば良いだけなのに


非常階段の手摺りに乗っかって
足をばたつかせたかったけれど
万が一落っこちでもしたら
自殺と片付けられるのが悔しくて

上れず終いで寝息を聴いた


このままじゃしあわせになれないの


そうだ誘拐犯になろうと
少しだけ心を軽くして

豚のくわえるパイプを見つめる


頭蓋を締めつける金の環と
胃袋を握る見えない手


此処にいるって
何処にも行かないって

言葉は少しも届かない


髪がこんなに冷たいものだなんて
抱きしめられてばかりいるわたしは、ちっとも気がつかなかったのよ


「外はやさしく寒かった」

あなたはやさしくやさしかった
わたしは寒く寒かった


無力だ無力だ無力だ



リセット。



傷がつくことに慣れてしまって
傷が消えることには慣れなくて

まるで臆病なライオンで
まるで心のないブリキの木こりで

滑稽だけれど
醜悪ではなくて



リセット。



理で動く女がほんとうは好きですか
利で動く女になれば良いですか



リセット。



大丈夫だよ
だって血も出ないし

大丈夫だよ
だって胸に穴もあかない

泣くくらい吐くくらい泣くくらい
なんだって言うんだ


左脚を失った男が
義足を得て一歩を踏み出すまでの時間と

視力を失った女の
聴覚と皮膚感覚が動物的に研ぎ澄まされるまでの時間と

月が地球から
いちばん遠くなるまでの時間と


それらをすべて合わせただけの時間をあげる



リセット。



「愛じゃなくても恋じゃなくても」

古い歌に重ね合わせて
たとえ間違いでも、と付け足して

上手く呼吸が出来なくなったら
ちゃんと口も塞いでくれるんでしょう


消える痕なら
毎日刻めば良いだけだわ