眉間に皺を寄せて、
みんなが、携帯メールやら、
ヘッドホンから流れる音楽にのみ、集中して、
つまりは、
周囲に極力無関心になろうとしている、
朝の通勤風景。

ホームに転がる、空き缶ひとつすら、
カラカラ コロコロ
みんなに蹴られて、
誰もが迷惑そうに蹴り返していて、
ただそれだけ。

遅れちゃうし
朝だし
不機嫌なのよね。

そんなとき、
さっと、空き缶を拾い上げたおじさんがいた。

さっと、
人の足と足の間からこぼれ落ちた、
無関心の殻を。

さくさくと階段を上がって、
ポイって、
回収箱に一入れ。

こんな簡単なことなのに、
こんなに難しい。

こんなに簡単な、
こんなに難しいことを、
やっぱりこんなに簡単にできる人は、
好い人にちがいないと、
少しほぐれた気がしまさた。