とぼとぼ歩き帰る夜道に、
湿った匂い。

梅雨の一日の、
雨上がり日本の、
湿度を感じる。

こんなときは、
頭のてっぺんから足の先まで、じっとりとむず痒く、
何もかも投げ出したいような衝動にかられがちだ。

そして、
こんな匂いが漂うときは、
地面をぬるぬると這う性質の、
これまた気持ちのよくない生き物に出会うことも、
経験から分かっている。

なめくじを見た。

わたしはなめくじに塩をかけたことがない。

そういえば、
常識的なまでの経験を、
未経験でいることが、
結構いろいろあるかもしれない、
なんて、思って、
駅に向かった。