彼が静かな寝室で身体を横たわらせていると、ちょうど廊下を挟んだ先の茶の間から、父が顔を出した。
「お前便秘だろ。」
彼は思わず目を剥いた。
父の頬に赤みが差していた。昨年の年末に、バランスを崩して戸をぶち抜いた直後の顔と同じ色だった。酒がまわれば舌も体もまわる。そんな父が自分の体の異変に気付けるわけがない。
「小指だよ。」、左手を上げると、皮の剥がれた無骨な手が、茶の間の光をバックに開かれた。
「中指がおれで、人差し指が母さんだろォ。最近調子がいいんだよ。仕事中、小指怪我しちまってなァ、ホラここ、ちょうど指の腹に絆創膏貼ってあるべ。お前お腹痛めて苦労してんだなァって、一発でわかったよ。」
あぁ、と落胆した。携帯を手の中に収めさっきよりもぐったりした。そんなことだろうと思った。
「お父さんとパイナップル食べないか、明日から。」
その響きに、若々しい、清々しさが伴っていた。
「パイナップルはほとんど繊維質でできてんだ。おれは毎日パイナップル食べてたおかげで毎日腸が好調だぜ。」、いっつもさえないギャグだなあとあきれてしまった。父は上機嫌のまま彼の返事を待たずに戸を閉めた。
翌日はパイナップルを食べなかった。
その翌日に昨日の分もまとめて喰わされてしまった。
「お前便秘だろ。」
彼は思わず目を剥いた。
父の頬に赤みが差していた。昨年の年末に、バランスを崩して戸をぶち抜いた直後の顔と同じ色だった。酒がまわれば舌も体もまわる。そんな父が自分の体の異変に気付けるわけがない。
「小指だよ。」、左手を上げると、皮の剥がれた無骨な手が、茶の間の光をバックに開かれた。
「中指がおれで、人差し指が母さんだろォ。最近調子がいいんだよ。仕事中、小指怪我しちまってなァ、ホラここ、ちょうど指の腹に絆創膏貼ってあるべ。お前お腹痛めて苦労してんだなァって、一発でわかったよ。」
あぁ、と落胆した。携帯を手の中に収めさっきよりもぐったりした。そんなことだろうと思った。
「お父さんとパイナップル食べないか、明日から。」
その響きに、若々しい、清々しさが伴っていた。
「パイナップルはほとんど繊維質でできてんだ。おれは毎日パイナップル食べてたおかげで毎日腸が好調だぜ。」、いっつもさえないギャグだなあとあきれてしまった。父は上機嫌のまま彼の返事を待たずに戸を閉めた。
翌日はパイナップルを食べなかった。
その翌日に昨日の分もまとめて喰わされてしまった。