メンバーのリクエストがあってこの題名にしました。久々のしおんおがみの登場です。こんばんは。
しばし無茶ぶりに答える見切り発車のしおんおがみvsピーの壁をお楽しみ下さいませ。




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気がつくと僕は壁の前に立っていた。



それは赤レンガを積み上げられて作られた、巨大な美しい壁であった。その壁は見渡す限りそびえたっており、それは僕に昔写真で見た北欧の雪景色を連想させた。
僕はポケットの中の煙草に火をつけて自分に言い聞かせた。
「落ち着け。これまで僕は上手くやってきたじゃないか。」と。



少し「僕」の話をしよう。



僕の1日は台所のネズミ捕りの確認から始まる。トーストを焼きながらコーヒーを飲み、新聞に一通り目を通すと、片田舎のブタ箱のような満員電車に乗られ仕事へと向かう。午後の7時には仕事を切り上げ、行きつけのBARでビールとフィッシュアンドチップを食べる。決まってビールは2杯まで。その後は布団に潜り込んで今日に別れを告げる。どこにでもいるような会社員。それが僕の日常だった。





それがどうしたのだろう。僕は今巨大な壁を目の前に途方に暮れている。

結局僕はもう一本、煙草に火をつけ、壁づたいに歩いていくことにした。


歩きながら僕はふと、Pのことを思い出した。あれはもう5年前の暑い夏の日だった。



Pは完璧な男であった。学生時代、僕はそのほとんどをPと過ごした。彼は何をやらせても器用にこなした。スポーツも勉強も料理も、日曜大工でさえ。それでついたあだ名はPerfectのP。そんな彼がなぜ平凡な僕と一緒にいたのかわからない。時々そのことについて彼に聞いてみると決まって彼はこう答えた。


「君が平凡じゃないからさ。」


卒業後風の噂で知った。Pが交通事故で死んでしまったことを。それが完璧な死であったのかは誰も知らない。



その時ふと僕は思ったこの壁は、Pだ。これはPの壁だったんだ。



壁の上から人がのぞいているのが見える。


「P、随分と探したよ。聞きたいことがあるんだ。」


pは少しバツの悪そうな顔をして悲しげに微笑むと手を振った。何者かが僕を後ろへと強く引っ張っていく。やめてくれ。僕はPに聞きたいことがあるんだ。なぜ君は平凡な僕を平凡じゃないと言ったのか。僕はそれを知りたいんだ。


遠ざかっていく中、Pの口がこう動いたように見えた。

「またあとでね。」






その日、平凡ではない一人の会社員が病院で息を吹き返した。


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結論、深夜のテンションは怖い。


しおんおがみ