ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる -30ページ目

ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる

わたしはかもめ。飛べないかもめ。日記みたいなもの。

読み終えた本。

『ドッグテールズ/樋口明雄』(光文社文庫)

今月の新刊です。

今月は偶然にも同じ作者で徳間文庫から、

『天空の犬』と云う作品が発売されています。

この『天空の犬』の姉妹作がこの作品集の最後に収録されています。

5編が収録された短編集で、タイトルの通り、すべて犬が登場します。

そして、犬と触れ合う中で生きている意味を見つけていきます。

やっと、犬が登場する本を対抗なく読めるようにはなってきました。

でも、描写によってはふとぶーりんとの思い出が甦り、胸が苦しくなることもあります。

たぶん、小説だから読めるんだろうな。これがテレビドラマや映画だとまだダメだと思います。

本文に出てくるセリフ。

「犬ってね、飼い主が選ぶんじゃないの。犬の方が自分で飼い主を選んで生まれてくるんだよ。」

とても、救われる言葉だと思います。

にーなとゆかりとるみは3人固まって、まりりんの動向をチェックしていた。
えりかと真緒とまりりんは喫煙席側のテーブルを拭いていた。


「ねっ、似てるというより、本物でしょ。」


と、にーなは禁煙席側のテーブルを拭くふりをして、2人の元へ近づいていった。


「ほんとうだわぁ。」


ゆかりが感心して言った。
でも、るみの様子がおかしい。
にーながぼんやりと喫煙テーブル側の方を見ているるみに話しかけると、


「ふにゃ?」


と、言った。


「あちゃ。」


るみはさっそく、目を合わせてしまったようである。
にーなはゆかりのそばに行って報告をしに行こうとすると、
ゆかりも、


「ごろにゃん?」


と、言った。
にーなは孤独を感じた。
そして、次はわたしかも。

と、危機を感じて、

とっさの判断で厨房へと向かった。


その厨房ではヒデユキがいつものように朝の仕込みをしていた。
しかし、視線はどうしてもついついホール側に目が行ってしまう。
視線をふと戻すと、にーながにこにこしながらそばでヒデユキを見ていた。


「おぉ!びっくりするじゃねーかよぉ。」


ヒデユキはおもわず驚いて飛び跳ねた。


「何を見てたんですかぁ?」


にーなは興味津々であった。


「べっ、別に何にも見てねーよぉ。」


「ほんとですかぁ~?」


尚もにーなは食らいついてくる。


「それより、何の用だよ。」


「あっ、そうだ。今日、厨房のお手伝いします!」


「はぁ?」


ヒデユキがきょとんとしてにーなを見た。


「いや、今日は別に大丈夫だけど…。」


「でも、今日はホール人が多いいしぃ、さゆみさんも昼からでしょぉ。」


にーなはそれとも視線の女性を呼びますかとイタズラ心で言いそうになったが、
それを言ったら、またホールに戻らされて、

まりりんの視線を浴びなければならない。

(ここは粘らなきゃ!)


と、にーなは気合いを入れなおした。


「そ、そうか。まぁ、確かになぁ。じゃ、…」


ヒデユキが何か言おうとしたが、

それより前に、にーなは、


「ありがとうございます!にーなぁ♡がんばりま~すぅ♪」


と、言って、更衣室へ向かって言った。


「いや、…。まいったなぁ。」


ヒデユキが頭を掻きながら、ふとホールを見ると、えりかと視線があった。
一瞬の沈黙。

そして、えりかは再び、何事もなかったように作業を始めた。
ヒデユキはしかめっ面で、


「あっ、し、しまった。」


とつぶやいた。

今日、読んだ本『○に近い△を生きる/鎌田實』(ポプラ新書)

生きる自信を失った時。

何かがぼくを支えてくれる。

それは自ら求める本能の現れなのか、

単なる偶然なのかわからない。

この本も偶然に買った本。

きっかけはぼくが勤める本屋でのこと。

一本の電話がかかってきた。

お客さんの在庫確認。それが鎌田實さんの昔の本だった。

在庫がありますよ。と伝えて、取り置きとして、レジの奥に保管される。

人が求むものに興味がわかない人はいない。

ぼくも当然のようにちらりとページをめくってみる。

でも、その時はなんの関心も出てこなかった。

はずだった。

閉店間際。店内に掃除機をかける。

その時に鎌田さんの新刊があったことをふと思い出した。

創刊されたばかりのポプラ新書の記念すべき第一弾。

ここからは本能だろう。○に近い△を生きる。

このワードにぼくの今の心境が投影されている。

その本をポケットに入れて、レジの近くを通った時に本棚の上に置いた。

そして、購入後。この本の言葉、言葉が自分の今に沁みていく。

お前は間違っていないんだよ。常識や正論に惑わされず、

相手の事も考えつつ、自分の事も考える。

著者ほど、素晴らしい人生を送っているとは思わないけど、

小さいながらも自分の正しいことが、人を救うのだと確信して行動することの正しさをこの本で教えてもらった。

だから、疲れていてもぼくは少しでも本を読む。

それが今のぼくにとっての心の汚れを洗い流す言葉のシャワーなのです。