あなたは兵士です。
戦争なんてしたくない。
そう常に思っていました。
しかし、世論とは恐ろしいものです。
ある国の愚かなる若い指導者の挑発がエスカレートして、
わが国にミサイルが落ちました。
しかも、まだ夜も明けきれぬ早朝のできごとでした。
時の首相は歴代続く軍隊大好きなナショナリズムなお方。
これは宣戦布告だとおっしゃいまして、
政府のお犬と化した国営放送が声明文を臨時ニュースを発令。
まず、報道戒厳令を引きます。
弱体化していたマスメディアは二つ返事で、
戦意高揚な記事を発表していきます。
ナショナリズムが蔓延しはじめたわが国に、
憲法改定を否定する人はもういません。
そんな人はすでにこの世から居なくなっています。
かろうじて生き延びた方もすでに危機感を募らせてすでに欧州に亡命していました。
ネットを中心に迅速に情報は集まってきます。
災害で力を発揮したインターネット。
悪用でも効果を発揮してしまったわけです。
あとはもの云えぬ一般市民たち。
かれらこそ、最大の被害者であるわけで、
有無も言わさず、軍隊への加入が義務付けられます。
そして、
ある無名の兵士が敵国へ送られました。
彼は別にナショナリズムを持った方ではありませんでした。
むしろ、それを毛嫌いしていた方です。
彼は敵国への派遣を嫌がっていました。
しかし、本当の敵は自国にあったわけです。
彼は入隊時に行われた意識調査で、
相反する場所へと飛ばされたわけです。
そこで、彼は嫌気を憎悪と改させられ、
敵陣を皆殺しにすれば、自分は解放される。
哀しいことに、
日本を変えると意気込んだ学生運動の異端者たちが編み出した行為が、
日本を変えるどころか、最悪の状況まで引き戻されたわけです。
彼はある村へと行きました。
そこで村の少女と遭遇しました。
突然現れた見知らぬ男に驚き悲鳴をあげる少女。
敵の兵士に対しては憎悪を感じてはいますが、
まだ、敵国とはいえど、一般市民には同情の念さえ持っていました。
彼は静かにしてくださいと言いたげに唇に人差し指をあてて、
「しぃ――。」
と云いました。それが万国共通の行為かどうかはわかりませんが、
彼にできるのはとにかくあなたに危害を与えませんよというメッセージを伝えることです。
しかし、彼女は驚きのあまり声を上げて逃げていきました。
焦った彼は、一刻も黙らせようと少女を追いかけます。
村の人たちが集まって来てはこちらに危害が及ぶおそれがあるからです。
ただでも、生きるか死ぬかの毎日の中で、
悲観的な思想に行きついてしまうのは戦争の持つ悲劇というしかないでしょう。
彼はついに最終手段に出ました。
少女は彼が撃った弾を足に受けて倒れます。
彼は一瞬、周りを見回します。
まだ村人は集まってきません。
むしろ気が付いていないようです。
彼は…。
ここからはみなさまの想像におまかせしましょう。
戦争とはそういうものなのです。
誰が悪い。誰が良い。
誰が勝った。誰が負けた。
という話ではありません。
ただし、確実に云えることはあります。
敗者は罪のない人々なのです。
