ミナミが大手出版社の話泉出版社から採用通知が届いたのは昨年の秋の事だった。
妹のコトミが一通の封筒をもって、興奮でミナミの部屋のドアを突き破りそうな勢いでやってきた。
「おねーちゃん。『少女カラフル』の会社から手紙が来たよ!」
まだ、採用かどうかわからないのに、苦笑しながらも、ミナミの気持ちは尋常な状態ではなかった。そんなことにお構いなしにコトミは、
「ねぇ、ねぇ、むらさきみどり先生に逢えるのかな、おねーちゃん。」
「まだ、わからないわよ。」
と、答えつつも、手紙の封を破く手が震えてしかたがない。
なんとか、封をやぶり、便箋を広げる。そんな姉の姿をコトミは心配そうに見つめている。
「おねーちゃん。どうだった?」
無反応のミナミに、じれったくなり、コトミは声をかけた。
ミナミは声にならない声で、
「採用だって…。」
とつぶやいた。
コトミの抑えた感情がはちきれて、声をあげてぴょんぴょん跳ねた。
「おねーちゃん。みどり先生に会ったらサイン貰ってね。」
無邪気なコトミにミナミは微笑ましく見ていたが、この時はこの後の展開など夢にも思っていなかっただろう。