何事にも平凡なんてないと思うんだけど、今日の天気はどう考えても平凡と云う言葉がぴったりくる。
気持ち良いほどの晴天に漂う小さな雲がひとつ、ぽつりぽつりと個人行動をとっている。
思わず、
「どこへ行くの?」
と問い掛けてみたくなる。
もちろん、返事はない。
不快でない金属音が遠くで響いて、こもりぎみのスピーカーから、無感情の女性のアナウンスが聞こえてきた。
「まもなく、午前9時50分発上り方面ひかり15号東京行きが到着致します…。」
ふと自転車を止めて、新幹線のホームがある辺りを見上げる。
わずか窓からしか見えないホームにゆっくりと新幹線が滑り込んで来る。
乗ることのない自分が浮かぶ。
あまりに非現実な光景。
手が届くはずなに、するりとぼくの手を離れていく現実に眩し過ぎる太陽がぼくの目を細める。
新幹線が去っていく。
あわてて、空を見上げたら小さな雲は跡形も無く消えていた。
「乗せてってって言うわけないじゃん。」
ぼくはつぶやく。
心にある気持ちの残骸を飲み込んで自転車をまた漕ぎはじめる。
だから、平凡は嫌なんだ。
平凡すぎる日常には、邪悪な気持ちがぼくを誘惑せるシチュエーションを与える。
でも、哀しいかな、そのシチュエーションを描いているのはぼく自身なんだから文句は言えないよね。
まだ、日暮れまで時間がある。
次はどんなシチュエーションを用意しようかと考えるぼくを遮るように立ち漕ぎを続ける。
もしかしたら、新幹線を追い抜けるかもね。
晴天の下で、小さな笑い声が微かに漂う。