わたしに餌を与えないでください。 | ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる

ほらでいっぱいの町にぼくのうそが白い息と共に流れてる

わたしはかもめ。飛べないかもめ。日記みたいなもの。

ある晴れた休日の朝に、
わたしはダンボールの切れ端に、
『わたしに餌を与えないでください。』
と太字の油性マジックで書いて、
無人駅のそばのくつろげない空間に行って、しゃがみ込み、そのダンボールを足元に置いた。
そこへ、
買い物帰りの老婆が、通りすがりに、足を止めてわたしをみて、足元のダンボールをみた。
老婆はわたしの顔を悲しそうに見つめて、財布を取り出してレシートをダンボールのそばにそっと置いて、
「ごめんよ。」
と小さな声を残して去っていった。

わたしは満足して、無人駅に戻った。
レシートはポケットの中へ無造作に入れて、
ダンボールは券売機に立てかけて置いた。
全く以って意味のない。
そんな午後にリアルさは要らない。
電車はまだ40分待ちだ。