【プロローグってなんなんだよ?】
放課後の屋上には僕だけしか居なかった。
ほんとうなら、僕の隣には誰かが居るはずなのに、僕の隣には少しだけ冷ややかな空気だけが篭っている。
友達の「でーぶ」や「まろん」を呼んだら喜んでついてくるんだろうけど、今はひとりで居たかった。屋上から見える僕の住む町はあまりにも寂しくひっそりしてるんだなって思った。
いつものチャリンコに乗って見える景色と、今、屋上から見える景色の違いに僕は軽い戸惑いを覚えた。
それは単なる感情の違いとわかるのはもう少し後の話しなんだけど…。
僕は出せなかった手紙を頭に浮かべた。
一行も書けなくて、くしゃくしゃに丸めて捨てた社会のノートの切れ端。
今なら、何か書けるかな?
くしゃくしゃに丸めたノートの切れ端の残像が彼女の笑顔に変わる。
僕がどうかしてしまったかと思うほどに胸が熱くなった笑顔が、いつまでも一時停止ボタンを押したままで、僕は再生ボタンを押すことができない。
あの時から僕は何かにつけてこの笑顔を思い浮かべる。
浮かべちゃダメだ!
浮かべちゃダメなんだ!
そう思うとさらに鮮やかに笑顔が浮かぶ。
そのおかげで、
3回先生に注意されて、(しかも、1度は軽く頭をゴツンと殴られた。)
1度、前方不注意で事故をしかけて、(駐車している自動車にぶつかりそうになった。)
こんな状況だから、1度、自転車から派手にこけた。
(小さな下り坂に気がつかずに、バランスを崩してこけた。)
近くにいた人達が駆け寄って来たけど、僕は慌てて立ち上がり、
「なんでもないですからぁ!」
と、なんでもある状況でちゃりんこに乗って去って行った。あきらかに異様なちゃりんこの「ギィーギィ!」と云う悲鳴をあげながら…。
下校を急かすチャイムが鳴って、僕は屋上の出口に向かった。
階段を降りて、僕の教室がある階に降りる直前に、彼女の様な女生徒が急ぎ足で階段を降りて行く。
「追いかけろ!」
僕の心は言った。
「よし!」
同意した僕の足は止まった。
彼女の階段を降りるコトコトと云う音だけが響く。
少しずつ小さくなる足音が消えて無くなるまで僕は立ち尽くしていた。
まるで金縛りにあったみたいに。
そして、彼女の笑顔がふんわりと浮かびあがってきた。