黒猫庵 烏亭 (くろねこあん からすてい)
 
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 大きな墓地を横切ると煉瓦造りの塀がある。
 その塀に沿う小道を進むと洋館が見える。

 洋館を横目にして真っ直ぐ進めば突き当りにその店はある。

 水曜日午前10時開店。
 亭主からのメールによれば、月に一度、月末の水曜日にだけ営業する。
 
 老朽化で茶褐色に朽ちたような建物が 黒猫庵 である。
 烏亭 はその一室の呼称だ。
 
 ギシギシ軋む急な階段を上る、天国への階段 である。
  
 暗くて狭い階段を上りきり靴を脱ぎその部屋へ進む。
 部屋の前で、遠慮気味に、ドアをトントンと叩く。

 しばらくすると、 亭主が、そっと鍵を開けてくれる。
 
 亭主が促す席に座り、ワイングラスに注がれる赤い色をみつめている。
 注ぎ終わりを目で相図され、ゆっくりと手をのばしグラスを持ち上げる。 

 作法など知らないが、香りを確かめ、一口だけ口に含み、口内にワインをゆきわたせる。

 「久しぶりだったね・・・」

 やっと、口を開いた亭主と、まともではない難解な会話をして、ワインに酔いしれる・・・
 
 昼間の明るい時間から、日の暮れる時間までそうすることで、自分自身を確かめて・・・・
 
 天国からの帰り道は、 地獄への階段 を下り娑婆という日常に引き戻されていく。

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 本日のワインは
 黒ワイン(ヴァン・ノワール)と呼ばれる
 カオール(南西フランス)のワイン。
 文字通り黒に近いダークチェリーレッド。
 チェリー、ブラックチェリー、ラズベリー、プルーン
 などの赤と黒の果実のアロマ。濃厚な果実味の、
 フルボディの赤ワインである。