20IO(にぃまるあいおー) 911               
 
 「I=いつか」という未来、「O=思い出」という過去。
 9月11日の朝、踊る心を抑え、野球の身支度をし、練習場へ向かうフリをする。
 少し、いつもより、早いが、胸の鼓動の高まりが、行動を早くさせる。
 「きょうは、逢うだけ・・・・」
 そう、言い聞かせるのだが、別のなにかを期待している。
 
 駅へむかう。ひと雨が降り、涼しげだった昨日とは、うって変わり、暑い。
 日差しが肌を刺す。汗をかいて、不快な匂いが発しないよう気をつけながら
 日陰をゆっくりと歩く。が、時折、気持ちがあせり早足になってしまう。
 さすがに白の練習着のユニフォームの上下では逢えない。上は通風性のあるハイネック
 のシャツ。下は有楽町のトイレでひざ丈のハンパンに着替えるつもりだ。
 初対面ではラフすぎるが、事情を説明し、お断りをいれてある。
 
 久しぶりの有楽町。高校時代、まだ「日劇」が在ったころには、毎週のように
 映画を観にきていた町だ。
 駅前はかなり変化していた。それよりも厳戒態勢にびっくりした。
 どうやら、民主党の党首選挙あいさつがここであるようだ。
 
 私は、グローブや着替えの入った、大きなエナメルバックをかかえ、下はユニフォーム。
 どうみても不審人物扱いされそうだ。そそくさと駅前ビルの地下へ走りこんだ。
 そう、この地下には公開中の映画の前売り券が売られていて、
 昔むかしはよく来ていたところ。勝手知ったる気分でトイレを探す。
 
 やや昔とは趣きがことなるが、トイレにかけこみハンパンに着替える。
 ん、逆にもっと怪しまれるかな・・・・・・・・・
 
 待ち合わせ時間もせまっているので、気にせず目標地点を目指して歩く。
 と、後ろからすごい勢いで走ってくる気配を感じる。イヤホンをした体格の
 よい御仁が横をすり抜け、走り去って行った。
 
 「ほっ」である。
 
 いよいよ、目的地。御対面である。何人かがベンチに佇む中、「居た。」
 きっと、あの人だ。
 
 音楽を聴いているのか、イヤホンをしてプレーヤーの操作をしているようだった。
 やや下向き加減なので、確信はもてなかった。いただいていた写真の顔は正面を
 向き少しムリに笑っているような感じだったので、目の前の人はそれよりも
 穏やかに思えた。
 自信がないので、携帯を取り出し、電話をしようかと思った時に、顔が上を向き
 そして私に気づいたようだ。