20IO(にぃまるあいおー)エスカ                      イメージ 1
 
「I=いつか」という未来、
 
「O=思い出」という過去。
 
「I=いそがしい」は
 
「O=おそろしい」かな・・・
 
 
 
 
 

  やや遅めの帰宅となってしまった。駅の中央にあるエスカレーターには、今の
  電車から降りた人たちが並んでいるので、缶コーヒーを買いベンチで一休み
  しながら空くのを待っていた。
 
  人がまばらになったころ、一人の中年紳士がエスカレーター左寄りの乗り口で
  立ち往生しているのが見えた。
  後から来る人たちは邪魔そうに右側からエスカレーターに乗っていく。
  
  その人は、ひたすらエレベーターの出てくる部分を見つめていた。
  ぼーっとして見ているようでもなく、時折、右足を前に踏み出そうとしている
  様子だった。やや上がった足がすっと降ろされると、溜息が聞こえてくる感覚
  が伝わってくる。
 
  思わず見入ってしまい、缶コーヒーの中身ももうなくなっていた頃、反対車線
  の電車が着き人がエスカレーターに集中していく。
  その人はエスカレーターの乗り口を立ち去り、やや先にある階段方向に歩き
  出していた。
 
  私は空くのを待ち、エレベーターに向かった。
   「さっきの人、なんだったんだろう?」
  同じ位置に向かって見た。
   「ん? 右、左、あれ? いつもどっちの足からだっけ?」
  私も少し悩んでしまい、後ろの人が迷惑そうに脇を抜けていった。
 
   ギザギザとした金属が次々と送り出され、少しずつ階段を形成していく。
   無機質な金属の銀色と黒色、そしてやけに目立つ黄色い安全線が繰り返し
   繰り返し、上に昇っていく。
 
   自己暗示? ・・・? 神経症? ・・・? 
    「少し、疲れてるだけさ・・・ 」
   勇気を出して右足を一歩踏み出した。
   すーっと、登りゆく感じの中、いつもなら階段を上るのだがそのままに
   していた。見上げれば人は誰もいない。
   下りのエスカレーターとすれ違いざま、誰かに気付いた。
   振り返ると『中年紳士』。
    「ぇ、さっきの・・・・・?」

 20数年前になると思うが、仕事で神保町へ出かけた。
 帰社の際、切符をしまおうと出した定期入れからJRの定期券が落ちてしまい、
 エスカレーターの側面のあの僅かな隙間に滑りこんでしまった。
 すぐさま駅員さんに事情を説明したのだが「時間がかかるとのこと」
 こちらも急ぎの原稿を横浜に持ち帰らなければならず、職場の電話をメモし
 その場を去った。夕方に電話が入り「ありましたよ」、とのこと。
 退社時にまたも神保町へ出向き、交通費を無駄に出費したなぁと自分にぼやい
 た。しかし、現場はまさにエスカレーターの解体作業中。申し訳ない気持ちが
 いっぱいで、恐縮至極の声で「スミマセンデシタ・・・」というと、あなたは運がよかった。
 丁度、今日が定期検査の日だったんだよの説明、胸をなでおろした思いでがある。
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