20IO(にぃまるあいおー) せくす


 「I」いつかという未来、「O」思い出という過去。

 
雨の続く日に書類の整理をした。
あまりにもたまりすぎて手をつけるのをためらっていたわけで、
すぐに見て捨てていればこんなにならないのだが、
それができれば、人生も変わったろう。(大袈裟?)

古い手紙がでてきた。
下手うまな文字というより、下手へたな文字が並ぶ。
ただ、艶めかしい内容と釣り合わない文字がやたらに妙な感覚を与える。

Kさんへ
『あなたとのせくす、わすれられないです』
『おたがいに空白をうめあうような、
  しまっていた欲望を、わすれていた欲求を
   むさぼるような、あの日のせくすを思い出します』
 ・・・・
『いつか、あなたといっしょにくらしたかった』
                  
母あての手紙は男名で結ばれていた。

ところどころ母から聴いていた言葉を繋げ合わせると、
少し理解できる内容なのだが、
これだけ見たら不快で誤解しそうな手紙だな。
そう、思った。

50歳で未亡人になった母だった。5年ほど入退院を繰り返していた父。
60歳でこの男の方と巡り合うまで計算上15年、「せくす」なしだったようだ。
たがいに看病生活という共通点で惹かれあったらしいとは聴いたことはある。
ただし、男の方の奥様はご存命。そう、不倫にあたる。

男の方、Tさんと呼ぼう。
2歳下のTさんは5年ほど奥さんの看病をしている。
たまたま会社の飲み会に出席した際に母に会った。飲み屋のバイトで仲居さん風
にしていた母に境遇を話したのがきっかけで、たまに飲み屋さんで会うようになった。

Tさんの奥さんはもともと体が弱く、詳しくはわからないが心臓の病気で
入退院を繰り返しているそうで、Tさんは仕事と家事で疲れていたらしい。

互いに魅かれ合った。逢うべくして逢った。
詳しく聴くこともなかったが、この手紙から伝わってくる「母」の「女」の
部分が「子」としては複雑な気持ちになる。

手紙をどうしようか。悩んだ末、儀式めいてはいるが白い皿にのせ火をつけた。
あっという間に大きく火が出て慌てたがすぐに黒い灰になった。

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