「東京物語」な風景

緩やかな坂道を登っていくと、二階建てのお宅も二階部分が目線の位置になる。
日々、暑い日が続くようになると、薄いレースのカーテンも開けて寛ぐ様子が
見るとも無しに、目に飛び込んでくる。
なんともいえない小津安二郎の映画の老夫婦のようなやさしい光景が見える。
夕餉時、テレビに向かうご夫婦。ご主人にビールをつぐ奥さん。
何かを語りながらもテレビからは目を離さない。
それを咎めるでもなく、首をかしげながら返事を返している。

主人はいわゆるクレープ地のステテコスタイルで
植木等、カトちゃん演じる王道の格好だが腹巻きはしていない。
蛍光灯なのだが、雰囲気は裸電球の暖かき色に見えてしまう。
こうあってほしいという願望が組み込まれている家庭内風景なのだ。
そう、現実を見つめながらも空想も加味された「白日夢」ならぬ
「夕暮夢」とでもいうものか。
しっかりと枯れた、お互いがともに自然な空気感に包まれている。

毎日、同じ時間に同じことを繰り返している歴史ある生活なのだろう。
リタイアされてもう何年も経っているようだ。
1階部分は雨戸を閉め、2階を居間兼食堂にしている。
不規則な帰宅時間なのでこの光景を毎日見ることはないが、
やさしげなこの光景に立合うことができた日には、
ふ~っと心が癒される一瞬がある。
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