置物「月食み【つきはみ】」の件1。 | 根付・帯留 鹿角細工工房「鹿正洞」ブログ

置物「月食み【つきはみ】」の件1。

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ストラップ根付「月下牡丹」
のオーナー様より、
置物の御注文を頂いた。

御題は「獏」。
「『月下牡丹』と対を為す細工を」
…との御依頼。

「月下牡丹」は「安眠安息の御守り」
として拵えたもの。
「牡丹」から滴る雫は
獅子の身に巣食う虫を殺すと謂われ、
故に獅子は牡丹花下を安息の場所とする。

「獏」は、中国生まれの幻獣。
鼻は象。目は犀。
胴は熊。
四肢は虎。尻尾は牛の如し。
悪夢を喰らう、縁起物。
根付のモチーフとしても定番。


割合ファニーに表現されるケースが
多い「獏」なのだけれども。
本作にはオーナーさんの安眠を守る
のっぴきならぬ責務が有るし、
また相方の「月下牡丹」と釣り合わん
細工では対にも成らん。
ここは一つ、
バリバリ気合いの入った「獏」を彫らな。



...という訳で、こんなのが降りた。




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置物「月食み【つきはみ】」。

月。
月は只々美しいばかりではない。
一定周期で繰り返される月の運行は、
地上の潮流や気象を操り。
また人の心をも支配すると謂う。
時計の月齢表示「ムーンフェイズ」は、
中世欧州の権力者達が
民衆暴動の起き易い時期を把握する目的で
作らせたもの。
月が満ちれば、人心も荒む。
荒んだ心で良い夢が見られようか。

人の悪夢を喰らい、
喰らい尽くしても足らず。
人心不穏の根源たる、
月をも喰らう「獏」。
月が欠けるのは、「獏」が喰うから。


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長くくねる鼻。
貪欲さが滲む眼光。
大きな牙。
身体要所に巻房毛。
がっしり踏ん張る四肢。

寸法は「月下牡丹」に近く着地させたい。
素材は敢えて、黒水牛角。
相方の白牡丹に、本作の黒獏を当てる。

喰われた上弦の「三日月」は黄水牛角で。
漆黒の地に、明るい黄が映える筈。
目玉は象嵌。白牛角辺りで
生々しく拵えるのが良さそう。
牙は鹿角。
僅か覗く口中は、真っ赤に染めよう。
「獏」の食欲を暗示する要素。

専用の花台を拵えて
「月下牡丹」と並べれば、
一双の屏風になる。

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枕元の飾り棚にでも置いて
お休み頂ければ、
良い夢が見られよう。


そんな意匠。



依頼者さんの「GO」を賜り次第、
細工に入る。

続く。




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