【六車奈々、会心の一撃!  〜ウンコ、ウンコ、ウンコ!~】 


あなたは、自分のウンコを初めて見たときのことを覚えているだろうか?


娘は一歳半のとき、期せずして自分のウンコと対面することになった。

ちょうどお風呂に入っていた時、便意を催してしまった娘。急いでトイレに連れて行こうとしたが、二人が体を拭いてからトイレに向かう時間など、あるはずもない。かといって、ウンコを我慢できるような年齢でもない。


「せりちゃん、ここでしていいよ。頑張れー!」


人は教えられなくてもウンコの時にはウンコ座りをする。娘は口をへの字にしながら、ウンコを頑張った。


『するるるるんっ♬』


なんとまぁ!太陽の塔か?

ウンコが立派すぎて、そびえ立っているではないか!

私は人生で初めて、『立つウンコ』を見た。


「せりちゃん、すごいねーっ!いいウン、、、」

言いかけた途端、娘は泣いて風呂場を飛び出した。


「ふぁ、ふぁ、ふあーん!」


娘は怯えた様子で、ウンコを見つめながら号泣している。


あれ?そっか。

娘はウンコを見るの、初めてだっけ。

いつもウンコはオムツの中でするから、まず見ない。さらにオムツ交換の時も、オモチャで遊ばせながら手際良くやっていたので、見ていない。

そうだな。娘は自分のウンコを一度も見ていないな。


いやぁ知らなかった。

人は初めてウンコを見たとき、『コワイ』と思うのか。

でも、そうかもしれない。確かにあんなものがお腹から出てきたらビビるわ。


私は、娘を呼んだ。


「せりちゃん、おいで。せりちゃん見たことなかったよね。これはね、『ウンチ』っていってね、せりちゃんのお腹から出てきたものなんだよ。」


娘は、近寄ろうとしない。


「大丈夫だから見においで。オムツだから見えなかっただけで、せりちゃんがいつも『うーんっ!』って頑張ったあとは、このウンチが出てたんだよ。いつもと同じウンチ。」


『いつも出ていたのと同じ』と聞いて、少し警戒が解けた。


「これは『バナナウンチ』と言ってね、ちゃーんとご飯を食べた子しか出ない、とってもいいウンチなの。せりちゃん、ちゃんとご飯食べてエラかったもんね。だからこんないいウンチが出たんだよ。」


恐る恐る近づいてくる娘。


「しかも、見てごらん。立ってるでしょ!これはねぇ、本当にスゴイよ!お母さん、ウンチが立ってるのなんて初めて見たよ。スゴイねーっ!」


湯気と匂いが混ざってモワッとする浴室で、娘と二人、ウンコを見つめた。

たくさん褒められたことで、娘の顔は笑顔が戻っていた。嬉しそうだ。


「よし!じゃあ、ウンチを片付けようね。エラかったね。」

私はそびえ立つウンコをビニール袋に入れ、浴室を洗った。


よし。これからはウンコを見せよう。

私は娘がウンコをするたびに、見せるようになった。そしてウンコの解説をした。


「せりちゃん!見てごらん。いいバナナウンチが出たよ!ちゃんとご飯食べたからだね。エライね〜。」


「あれれ。今日はユルイね。見てごらん。冷たいものを食べ過ぎたかな?今日は、アイスはやめておこうね。」


「せりちゃん、コロコロウンチだね。硬くてコロコロだから、お尻も痛い。お野菜ちゃんと食べないと、コロコロカチカチになるからね。ちゃんとお野菜食べよう!」


てな具合で、必ず二人でウンコの観察をした。


時は流れ、もうすぐ4歳になる娘は今やトイレでウンコをする。終わったあとは、必ず自分でウンコチェック。


「ママ!バナナウンチだよ!浮いてるよ!」

と興奮した様子で報告をする。

私に褒められると嬉しすぎて、わざわざお父さんの部屋にまで報告にいく。

「お父さぁーん!バナナウンチが出たよーっ!」


最近では、『ウンコごっこ』もするようになった。食べ物がウンコになるまでを、一緒に遊びながら表現するのだ。


「せりちゃんが食べたモノが、胃の中に入りました!グッチャグッチャグッチャ!」


胃を揉んでやると、こそばくてケラケラ笑いながら、自分も同じようにやる。


「次はどこかなぁ。小腸だ!」


そう言いながら胃から小腸へこちょこちょすると、大爆笑。   


「小腸に到着!小腸で、栄養を吸い取りまーす。吸収吸収!」


ヘソの周りをモミモミすると、

「キャハハハハハ」

ヨダレを垂らしながら、笑い転げる。


「さぁ、余った分は肝臓へ寄り道して、、、」

ムギュっと肝臓辺りをつまみ、


「大腸へ行くぞー!さぁ、どんどんお水が吸い取られます!どんどんお水が吸い取られます!」


寝そべって笑い転げる娘の大腸をウンコの通り道に沿ってコチョコチョし、最後は

「ウンチが出たーっ!ぷりっ!」

と、お尻をパクパクする。


これが『ウンコごっこ』である。

娘は一緒にお腹を抑えながら、笑い転げている。アホみたいな遊びだ。

しかしこのアホみたいな遊びのおかげで、

ウンコが緩い時はおやつを我慢するし、

硬い時は野菜を意識的に食べるようになった。


いやぁ、ウンコの偉大さよ。

「野菜を食べろ」と言っても食べないが、

「野菜食べるとバナナウンチになるよ。」

というと、頑張って食べる。

食育をするには、同時にウンコ教育もすべきと思った母なのであった。


note:『六車奈々、会心の一撃!』

https://note.mu/nana_rokusha