いつもこの季節には

北の方から

雲を操る笛吹き男がやって来ます。

 

雨が降りそうでも降らない日が続いたり、

晴れた日にも、大きな風が吹いていたり

青い空が大きく揺れている季節でした。

 

遠くから、軽快な笛の音が響いて来ます。

ハーメルンの笛吹男は、

ちょうど彼の様だったのでしょう

動物たちが、躍り出しそうに

なんだかすごく、懐かしい音色です。

 

彼はいつも、

腰カバンに金色の粉を持っていて

これをひとつかみ笛に吹きかけると

土色のブーツで

タンタンッ タンタンッ と

カウントを取りながら

風の大地に響く様な

音楽を始めます。

 

すると、

青い空の低い所を流れていた雲が

笛の音色に合わせる様に

西から東に

雲の頭をかしげるのです。

 

まるで

笛の音に合わせて

行進でも始める様に

一斉に、同じ方向を向いて

雲が流れ始めるのです。

 

ところが、

彼の腰カバンに穴が開いて

金の粉が地面に落ちてしまいました。

 

カバンにはもう、

金の粉が残っていません。

 

ああ、どうしたら良いんだろう?

 

 

つづく・・・