水戸芸術館で開催される映画祭、行って参りました。
新旧邦画ばかり織り交ぜた中から見てきたのは3本。
「お早よう」
監督: 小津安二郎
製作:1959
夫のオススメで見た一本。
戦後の高度成長期、中流家庭がTVを買うまでの親子の攻防とでもいいますか。
「プゥー、どうだい?」
タイミング良くオナラするだけなんだけどね。不器用な子は「実」を出しちゃったりして(笑)
兄と弟、幼い兄弟が覚えたての英語を使う。
「オフコース!」「イエッス、マダーム!」などボキャブラリー豊富(?)な兄に対抗して弟はいつでも「アイラブユー!」か、可愛い・・・。
ご近所の他愛も無い会話や、子供の無邪気さ。
無駄話が多いと注意された子供のストライキ「もう口をきかない!」
「学校に給食費を持って行かなければならない」
これを伝えるためのジェスチャー。全然伝わらなくて、あまりに、ばかばかしい!(笑)
無駄と思えるものが、重要な潤滑油になってるって話。
確かに世の中、無駄な事多いよね。
でも案外、無駄だけじゃなかったりするのかもね。
「キャタピラー」
監督: 若松孝二
戦地から戻った夫は、四肢を失い、顔は焼けただれ、言葉を発することも出来ない。「生ける軍神」と崇められるが。
物語冒頭こそ不幸な妻「シゲ子」であるが、力関係が逆転してゆく。
かつて「子供も埋めない女」と、夫に虐げられ暴力を振るわれた立場が逆転するのだ。
封建制度で虐げられた女性の気持ちを代弁するかのようで、少々気持ち良かった。
映画のラストに反戦メッセージがあったが、映画の本筋が「人間の性」あるいは「人間の業」のようなものと感じたので、多少違和感有り。
体が動かない夫との性交シーンが何度と無くあるが、この役を引き受ける女優は寺島しのぶしか居ないだろう。
かなり重い映画でした。隣の席のおじさんが、何度も深いため息をついていたのが気になりました(笑)
「息もできない」
監督: ヤン・イクチュン
冷酷で粗暴な借金取りの男(サンフン)と、勝気で男勝りな女子高生(ヨニ)。
お互いに家庭内暴力で家庭崩壊した似た境遇の2人です。
暴力的な家庭で育った人間には、トラウマが残る。
サンフンとヨニは、それでもお互いの距離を縮め、分かり合おうとする。
私がこの映画で印象的だったのはヨニの弟のヨンジェ。
家庭内で、ヨニに対する、ひっぱたく程度の暴力はありましたが、実践(拳)になると覚えてしまうヨンジェ。
ヨンジェは「殴られること」「人を殴ること」に怯えていた訳じゃないと思う。
自分の中の、暴力の防波堤が結界するのが怖かったんだと思う。
自分の中で押さえられない「何か」を感じていたはずだから。
映画のラスト。
母親を殺したサンフン(一派)を暴力で一掃してるヨンジェを目撃したヨニ。
このシーンに、果てしない暴力の連鎖を感じました。